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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第67話 配置という強さ

毎日20時投稿

霧の遺跡を出たとき、外の空気がやけに軽く感じられた。


エンは大きく息を吸う。


霧の中で張り詰めていた感覚が、ようやくほどけていく。


「……終わりましたね」


「うん。ちゃんと勝った」


カナは肩を回しながら答えた。


無理はしていない。


危ない場面もなかった。


だが確実に、今までで一番手応えのある戦闘だった。




ギルドに戻ると、いつもより少しだけ視線を感じた。


霧の遺跡はE級の中でも人気があるダンジョンだ。出入りする冒険者も多い。


「あれ、球のやつだよな」


「最近よく見るな」


小声の会話が聞こえる。


敵意はない。


むしろ、興味に近い。


エンは少しだけ苦笑した。


「……なんか見られてますね」


「まあね」


カナは気にした様子もなく言う。


「活躍して目立ってるんでしょ」




換金を終え、掲示板の前を通り過ぎたときだった。


「あ」


聞き覚えのある声がした。


振り向くと、同年代の冒険者たちが立っている。


以前、スキル授与のときにエンを笑っていた連中だ。


だが今の表情は違った。


「霧の遺跡、ボス倒したんだってな」


前に出てきたのは、大剣を背負った少年だった。


真っ直ぐな目をしている。


「……うん」


「見たやつが言ってた」


少しだけ笑う。


「何やってるか分かんなかったけど、気づいたら終わってたって」


エンは困ったように頭をかいた。


「自分でもそんな感じだよ」


嘘ではなかった。


全部を操作している感覚はない。


流れの中で、最後を選んだだけだ。


「でもさ」


大剣の少年が続ける。


「強いよな」


言葉に嫌味はなかった。


ただの事実として言っている。


「……ありがとう」


エンは少しだけ照れながら答えた。


少年は軽く手を振り、そのまま仲間の方へ戻っていく。


距離はある。


だが、もう見下した目ではなかった。




ギルドの奥。


カウンターの向こうで、ギルマスが静かにこちらを見ていた。


何も言わない。


ただ、確認するような視線だけを向ける。


エンは軽く会釈し、そのまま通り過ぎた。




外に出ると、夕方の光が街を染めていた。


エンは歩きながら、小さく息を吐く。


「……なんか、不思議ですね」


「なにが?」


「前より楽に勝ってるのに、強くなった感じがあまりしないです」


カナは少し考えてから言った。


「それでいいんじゃない?」


「え?」


「無理してないってことでしょ」


「つまり、ちゃんと強くなってる」


エンは少し考えてから笑った。


確かにそうだ。


前は勝つたびに疲れていた。


今は違う。


自然に終わる。


霧の遺跡で覚えたことは、特別な技ではない。


速くなったわけでも、力が増えたわけでもない。


ただ、位置を作り、流れを作り、崩れない形にする。


敵はその中に入ってくるだけだ。


「……配置、ですね」


エンがぽつりと呟く。


「うん」


カナが笑う。


「やっと分かってきた」


エンも笑った。


球を動かすのではない。


配置がすべてを決める。


E級の戦い方は、ここでようやく形になったのだった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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