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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第62話 配置戦闘

毎日20時投稿

霧の遺跡に入ってから、エンは最初にやることを決めていた。


敵を探さない。


まず球を動かす。


入口近くの広めの通路で、小球を二つ転がす。壁に当たり、戻り、また別の壁へ向かう。


すぐには触らない。


転がる音だけを聞く。


「……先に作るのね」


カナが言う。


「はい」


エンは頷いた。


「戦う前から、動いてる状態にしておきます」


小球が霧の中で交差する。


軽い金属音。


片方が方向を変え、もう片方も少しだけ押されて動き続ける。


完全ではない。


だが、止まらない。




魔物が現れる。


二体。


霧の向こうから突然飛び出してくる。


だがエンは慌てない。


小球はすでに動いている。


進路を横切るように流れ、魔物が踏み込みを迷う。


「今」


カナが一体を叩き伏せる。


もう一体が距離を取ろうとした瞬間、別方向から戻ってきた小球が足元を横切る。


体勢が崩れる。


エンはそこで初めて大球を動かした。


滑るように押し出す。


衝突音。


戦闘は一瞬で終わった。




「……楽ですね」


エンは正直に言った。


今までのように、敵が出てから考えていない。


すでに流れがある。


そこに敵が入ってきただけだった。


「うん」


カナも頷く。


「エン、ほとんど触ってない」


実際そうだった。


小球を触って動かしたのは、最初だけだ。


あとは必要なときに遠くから少し修正しただけ。




さらに奥へ進む。


霧の中で、小球が壁に当たる音が続いている。


一定の間隔で響く音。


まるで通路の中を巡回しているようだった。


「……これ」


エンは小さく呟く。


「止まらなければ、ずっと続きますね」


「うん」


「じゃあ、増やせます」


カナが少しだけ眉を上げた。


「増やす?」


「はい。流れを」


小球をもう一つ出す。


三つ目の球が、既に動いている軌道へ入る。


最初は不安定だった。


ぶつかり方が強すぎて止まりかける。


だが角度を少しだけ修正する。


三つの球が、互いに押し合うように動き続けた。




霧の奥から、三体の魔物が現れる。


だがすでに通路には動きがある。


球が横切る。


進路が自然に制限される。


魔物が動く場所が減る。


「……なるほど」


カナが小さく笑う。


「入った時点で不利なんだ」


エンは頷いた。


戦闘が始まる前に、形ができている。


あとは崩すだけだった。


戦闘が終わる。


三つの小球はまだ動いている。


止まらない。


エンはそれを見ずに、音だけを聞いていた。


どこにあるか分かる。


どこへ行くかも、なんとなく予測できる。


「……循環してますね」


「うん」


カナは腕を組む。


「やっとそれっぽい」


エンは少し笑った。


球を動かしている感覚は、もうほとんどない。


流れがあり、自分はそこに触れているだけだ。


霧の中で、金属音が規則的に響く。


止まらない音。


エンは理解していた。


これはまだ完成ではない。


だが確実に近づいている。


球が動き続ける戦場。


自分が触らなくても崩れない流れ。


E級の戦い方が、また一歩先へ進んでいた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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