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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第6話 置くという使い方

新連載です。

10話まで一挙に公開します。


毎日17:30投稿

大きくなった鉄球を持って転石の洞に入るのは、これが初めてだった。


エンは肩から下げた袋を少し持ち直す。


中には、いつもの鉄球と、新しく作った一回り大きな鉄球が入っている。


「……やっぱり重いですね」


「持ち運ぶのは私の仕事じゃないからね。ガンバレ」


カナはさらりと言った。


「鍛冶師は作るまで」


「ひどい」


軽口を交わしながらも、エンは少しだけ緊張していた。


大きい球は浮かせられる。だが、思い通りに動かすにはまだ慣れていない。


ダンジョンの中で使うのは、ほとんど試運転のようなものだ。


洞窟の中は、これまでと変わらない静けさだった。


発光石の淡い光。緩やかな傾斜。遠くで小さな魔物が動く気配。


「今日は無理しないでね」


「分かってます」


エンは頷き、小さい方の鉄球を浮かせた。まずはいつも通りに動くかを確認する。


球は滑らかに宙を巡り、問題なく操作できる。


少し奥へ進んだところで、岩陰が揺れた。


「……来る」


地面が盛り上がり、ロックモールが一体飛び出す。続けて、もう一体。


「二匹」


カナが短く言う。


ロックモールは一直線に突進してくる魔物だ。だが、二体同時となると話が変わる。


エンは小球を転がす。斜面を利用して一体の進路へ。


鈍い音。


体勢は崩れるが、止まらない。もう一体がその横をすり抜けて迫ってくる。


「……止まらない!」


「下がって!」


カナが声を上げる。


エンは反射的に後退しながら、袋から大きい鉄球を取り出した。


(どうする――)


動かすには重い。小球のように素早くは無理だ。


考えるより先に、エンはそれを地面へ置いた。


斜面の途中。


ほんのわずかに傾いた場所だった。


次の瞬間。


ロックモールが突進してくる。


大鉄球にぶつかった。


ズガンと鈍く、重い音が洞窟に響く。


突進の勢いが止まり、魔物の体がぐらりと揺れた。


「……止まった?」


大鉄球は少しだけ転がったが、すぐに動きを止めた。


重さがある分、簡単には弾かれない。


その間に、小球が斜面を回り込む。


横から足元に当たり、ロックモールが体勢を崩した。


もう一体も、大鉄球を避けようとして動きが鈍る。


「……あ」


エンは気づいた。


動かしていない。


置いただけだ。


「エン、そのまま!」


カナの声に、エンは小球の軌道だけを調整する。


逃げ場を失ったロックモールは方向転換が遅れる。


そこへ転がってきた小球が当たり、二体とも動きを止めた。


やがて静けさが戻る。


エンはしばらく、大鉄球を見つめていた。


「……今の」


「うん」


カナも同じものを見ていた。


「動かしてないのに、役に立った」


エンは近づき、鉄球に手を触れる。


重い。扱いづらい。だが――。


「これ、攻撃用じゃないんだ」


「最初からそうだったんじゃない?」


カナは肩をすくめる。


「通れなくしただけでしょ」


言われて、エンは小さく笑った。


確かにそうだ。


殴ったわけでも、強くぶつけたわけでもない。ただそこに置いただけ。


それだけで、魔物の動きが変わった。


「……壁みたいな使い方ですね」


「うん。重いから」


カナはあっさり言う。


「動かすより、置く方が向いてるのかも」


エンは小球を浮かせ、大鉄球の周りをゆっくり回す。


小さい球は自由に動く。


大きい球は、そこにあるだけで意味を持つ。


「……使い分け、か」


口に出してみると、ようやく実感が湧いた。


どちらが強いかじゃない。


役割が違う。


「なんか、分かってきました」


「よかった」


カナは短く笑う。


その表情は、鍛冶場で新しい形を見つけたときと同じだった。


洞窟の奥から、かすかに風が流れてくる。


まだ先はある。


だが、少なくとも――。


今までより、少しだけ戦い方が増えた気がした。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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