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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第55話 見えない違い

毎日20時投稿

地下水路の攻略が安定し始めてから、数日が経った。


以前のように立ち止まることはなくなった。球は常に動き続け、エンはその流れを少しずつ変えるだけでいい。


戦闘は短い。


そして、静かだった。


「……早いですね」


最後のゴブリンが倒れたあと、エンは小さく息を吐いた。


「うん。無駄がない」


カナが周囲を確認しながら答える。


球はまだゆっくりと転がっている。止めないまま、次の動きへ繋げる。


以前なら一度止めていたはずの流れが、そのまま続いている。


「前より、戦ってる感じがしません」


「いいこと」


カナは即答した。


「危ない時間が減ってる」


確かにそうだった。


敵に囲まれる前に位置がずれ、気づけば数が減っている。


派手さはない。


だが、確実に楽だった。




通路を抜けた先で、別のパーティとすれ違った。


同年代の三人組だ。


「あれ、球のやつだよな」


軽く声をかけられる。


「最近よく見るな」


「はい。地下水路、慣れてきました」


「へえ……」


前衛らしい剣士が、少し不思議そうな顔をする。


「なんかさ」


言いかけて、言葉を探すように首を傾げた。


「戦ってるとこ見たけど……よく分かんなかった」


悪意はない。


純粋な感想だった。


「気づいたら終わってるっていうか」


エンは苦笑する。


「自分でもそんな感じです」


短い会話を交わし、互いに別の通路へ進む。




しばらく歩いたあと、カナが言った。


「今の、たぶん褒めてる」


「そうなんですか?」


「うん。何してるか分からないのに勝ってるってことだから」


エンは少し考える。


確かに、以前の転進は分かりやすかった。


大球が走り、敵を吹き飛ばす。


今は違う。


球は静かに動き、気づいたときには位置が崩れている。


「……地味ですね」


「職人向き」


カナは笑った。




その日の探索は、ほとんど危なげなく終わった。


地下水路の出口近く。


エンは小球を流したまま立ち止まる。


球は自然に壁際を回り、また戻ってくる。


止めなくても、問題ない。


「……前と違いますね」


「なにが」


「球を動かしてる感じがしないです」


エンは正直に言った。


「勝手に動いてるのを、少し触ってるだけというか」


カナは少し考えてから頷く。


「それでいい」


「いいんですか?」


「うん。無理してないから」


その言葉に、エンは小さく笑った。


以前は、全部を動かそうとしていた。


今は違う。


流れが先にあって、自分はそこに触れているだけ。




ダンジョンを出たとき、夕方の光が差し込んでいた。


エンは軽く肩を回す。


疲れていない。


それが一番大きな変化だった。


「……強くなってますかね」


何気なく言う。


カナは少しだけ考えてから答えた。


「強くなったっていうより」


歩きながら続ける。


「崩れなくなった」


エンはその言葉を繰り返す。


崩れない。


確かに、そうだった。


地下水路という苦手だった場所でも、もう慌てることはない。


E級の戦い方が、少しずつ体に馴染んできていた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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