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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第54話 再挑戦

毎日20時投稿

地下水路の入口に立ったとき、前に来たときとは空気の感じ方が違っていた。


湿った空気も、水の流れる音も同じだ。


だが、エンの中の感覚が変わっている。


「……行けそうです」


「うん。顔が違う」


カナは軽く笑った。


前回ここを訪れたときは、どう戦えばいいか分からなかった。今回は違う。やることがはっきりしている。


止めない。


動いている前提で動かす。




ダンジョンに入る。


足元の水が靴の裏を滑らせる。わずかな傾斜で、小球が自然に前へ流れていく。


エンは止めない。


そのまま見送る。


「……大丈夫?」


「はい。今はこれでいいです」


小球はゆっくりと転がりながら、通路の中央を進む。


以前なら、ここで止めていた。


だが今回は違う。


曲がり角の先から、ゴブリンが二体現れる。


小球がそのまま足元を横切る。


ゴブリンが一瞬、足を止めた。


その瞬間、エンが軽く指を動かす。


小球の軌道が、わずかに曲がる。


進路を塞ぐ形になる。


「今」


カナが踏み込み、一体を叩き伏せる。


もう一体が横へ逃げようとする。


エンは大球を出さない。


小球の動きを維持したまま、もう一度触れる。


軌道が変わり、逃げ道が消える。


短い戦闘だった。




「……止めてないですね」


カナが言う。


「はい」


エンは小さく笑う。


「止めると遅れるので」


球はまだ転がり続けている。


だが、それでいい。


むしろ動いている方が次の動きに繋げやすい。




さらに奥へ進む。


水の流れが強くなる場所。


前回、苦戦した通路だ。


ゴブリンが三体、同時に現れる。


エンは小球を流す。


止めない。


ゴブリンが回り込もうとした瞬間、曲転進。


わずかに弧を描いた球が、進路の前に滑り込む。


「……!」


ゴブリンの動きが止まる。


大球を軽く押し出す。


今度は勢いを乗せすぎない。


流れに合わせて進ませる。


衝突音。


一体が壁に叩きつけられる。


残りをカナが仕留めた。




戦闘が終わる。


エンは息を整えながら、球の動きを見ていた。


止まらない。


だが、怖くない。


どこに行くか分かる。


「……できてますね」


「うん」


カナも頷く。


「前より自然」


以前は、球を動かして戦っていた。


今は違う。


球が動いている中に、自分たちがいる。


そんな感覚だった。




さらに奥へ進む。


前回撤退した地点。


水音が強く、通路が狭くなる場所。


エンは一度立ち止まった。


少しだけ、呼吸を整える。


「行きます」


「うん」


ゴブリンが二体、奥から現れる。


焦らない。


小球を流す。


曲転進で軌道を変える。


進路を制限する。


カナが前に出る。


短い衝突音。


終わる。


あっけないほど、簡単だった。




エンは小さく息を吐いた。


「……越えましたね」


「うん」


カナが笑う。


「もう苦手じゃない」


地下水路の奥からは、まだ水音が続いている。


だが、もう恐怖はなかった。


止められない場所でも戦える。


それが分かった。


E級の壁を、一つ越えた実感があった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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