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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第53話 曲転進

毎日20時投稿

修行を始めて三日目。


小球は何度か曲がるようになっていた。


だが――安定しない。


意識してやろうとすると失敗する。偶然に近い形でしか起きない。


「……もう少しなんですけど」


エンは額の汗を拭いながら言った。


転がした小球は、途中でわずかに軌道を変えたあと、すぐに失速して止まる。


「今の、惜しかった」


カナが言う。


「でも止まっちゃうね」


「はい……」


曲げようとして、余計な力が入ってしまう。


回転が死ぬ。


結果として、ただ方向を変えただけになる。


地下水路で使える動きではない。




「おー、なんかやってんな」


背後から聞き慣れた声がした。


振り返ると、レオが大剣を肩に担いで立っていた。


「レオ」


「最近見ねえと思ったら修行か」


軽く笑いながら近づいてくる。


転がっている小球を見て、首を傾げた。


「それ、真っ直ぐ飛ばすやつだろ?」


「今は違うんだ」


エンは苦笑する。


「曲げようとしてて」


「曲げる?」


レオは少し考え込む。


それから、地面に落ちていた小石を拾った。


「こういうことか?」


軽く投げる。


小石は真っ直ぐではなく、わずかに弧を描いて落ちた。


「……どうやったんですか?」


「いや、投げるときにちょっと横に擦るだけ」


レオは肩をすくめる。


「真っ直ぐ飛ばそうとすると真っ直ぐになるけど、回ってる方向変えれば勝手に曲がるだろ」


その言葉に、エンははっとする。


真っ直ぐ飛ばす。


今までずっと、それを前提にしていた。


「……真っ直ぐにしようとしてました」


「だろうな」


レオは笑う。


「お前、変なとこ真面目だから」


エンは小球を転がす。


今度は、曲げようとしない。


ただ、回転の向きだけを少しずらす。


ほんのわずかに触れる。


小球が、自然に弧を描いた。


「……あ」


止まらない。


回転が生きている。


そのまま滑らかに方向が変わる。


エンは思わず笑った。


「できた……」


「今のだね」


カナが頷く。


「力がちゃんと抜けてる」


もう一度。


転がす。


触れる。


曲がる。


今度は偶然ではない。


再現できている。


「……これなら」


地下水路でも使える。


止めずに軌道を変えられる。


エンは大きく息を吐いた。


「名前、付けます」


「早いな」


レオが笑う。


「転進の、曲がるやつだから」


少し考えてから言った。


「――曲転進」


口にした瞬間、しっくりきた。


転進の延長線上にある技。


新しいものではなく、理解が一歩進んだだけ。


「まあ、分かりやすいってのはいいことだ」


レオが頷く。




その後、三人で街へ戻る途中。


カナがふと思い出したように言った。


「そういえば、そろそろ防具変えた方がいい」


「防具、ですか?」


「うん。E級に入ってから、相手の攻撃をもらう回数が増えてる」


エンは少し苦笑する。


確かに、地下水路では何度か危ない場面があった。


「今のだと軽すぎるのよ」


カナは続ける。


「動きはそのままで、もう少し受けられるようにする」


鍛冶場に戻ってから、カナは新しい防具を並べた。


エン用は、動きを妨げない軽装の胸当てと腕当て。衝撃を逃がす構造になっている。


「重くないですね」


「動けなくなったら意味ないから」


カナは当然のように言う。


自分用には、肩と腕を少し強化した防具を選んでいた。前に出る回数が増えているからだ。


「代金は、キングの換金分で足りるわね」


「助かります」


「投資だから」


カナはさらっと言った。


「まだ強くなるでしょ」


エンは少し照れながら頷いた。




夕方。


新しい防具を身につけて、小球を転がす。


軽く触れる。


球が、滑らかに弧を描いた。


曲転進。


まだ威力はない。


だが確実に、戦い方が変わる。


エンは思わず笑った。


「……できましたね」


「うん」


カナも小さく笑う。


「次は地下水路」


E級の壁は、まだそこにある。


だが今度は、越えられる気がしていた。


いつもありがとうございます。


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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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