表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/107

第52話 回転の再定義

毎日20時投稿

修行は、ダンジョンではなく街の外れから始まった。


平らな地面。障害物の少ない場所。


いつもなら転進の練習をする場所だが、今日は違う。


エンは小球を一つ、ゆっくりと転がした。


止めない。


ただ、転がるままにさせる。


球は地面のわずかな傾きに従い、緩やかに方向を変えながら進んでいく。


「……止めないんですね」


カナが後ろから言う。


「はい」


エンは視線を球から外さない。


「今までは、止めてから動かしてました。でも地下水路だと、それができない」


球が止まる瞬間を作らない。


その状態で、どう扱うか。


それが今回の課題だった。




エンは軽く指を動かす。


転がっていた小球の軌道が、わずかに変わる。


大きくではない。


本当に、少しだけ。


「……難しいですね」


「力入れすぎ」


カナがすぐに言う。


「押してる」


エンは苦笑した。


確かにそうだった。


動かそうとすると、どうしても力を乗せてしまう。


すると球は加速する。


地下水路では、それが危険になる。


「回ってるものに、力足すと速くなるだけなんですね」


「うん」


カナは腕を組む。


「止めてから動かすのと違う」


エンは何度も小球を転がす。


触れる。


少しだけ軌道が変わる。


また触れる。


今度は変わりすぎる。


止まってしまう。


「……難しい」


思わず呟く。


今までできていたことが、急にできなくなったような感覚だった。




しばらく無言の時間が続いた。


球が転がる音だけが響く。


何度も繰り返すうちに、少しずつ分かってくる。


強く動かす必要はない。


ほんの少し触れるだけで、軌道は変わる。


止める必要もない。


「……あ」


小球が、緩やかな弧を描いた。


エンは思わず目を見開く。


「今の」


「うん」


カナが頷く。


「無理してない」


偶然だった。


だが、今までとは明らかに違う動きだった。


真っ直ぐではない。


自然に曲がった。




エンはもう一度試す。


転がして、触れる。


今度は曲がらない。


またやり直す。


何度も繰り返す。


額に汗が滲む。


「……転進って」


エンは息を整えながら言う。


「真っ直ぐ飛ばす技じゃなかったのかもしれません」


「どういうこと?」


「回転を強くした結果、真っ直ぐになってただけで」


言葉を探す。


「本当は、回転の向きを変えられるんじゃないかって」


カナは少しだけ目を細めた。


「曲げるってこと?」


「たぶん」


まだ確信はない。


だが、地下水路で感じた違和感と、今の感覚が繋がり始めている。




夕方になる頃には、エンの動きはかなり鈍くなっていた。


集中し続けたせいで、頭が重い。


それでも、小球は何度か自然に曲がった。


狙ったわけではない。


だが、確かに起きている。


「……今日はここまで」


カナが言う。


エンは小さく頷いた。


「はい」


球を拾い上げながら、空を見上げる。


まだ技にはなっていない。


だが、確実に何かが変わり始めている。


転進は、ただ速くするためのものではない。


回転そのものを理解すること。


それが、次に進むために必要なものだと、ようやく分かり始めていた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ