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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第46話 流れの切断

毎日20時投稿

ホブゴブリンを倒したあと、しばらくは敵の気配が途切れた。


だが静けさは安心できるものではなかった。


むしろ、奥へ進むほどに視線を感じる。


「視線が増えてる」


カナは思案しながら続ける。


「さっきので、こっちが強敵だって認識されたんだと思う」


ホブゴブリンを倒したことで、群れの警戒が上がったのだろう。無闇に近づいてこない。


それはつまり、次はもっとまとまって来る可能性が高いということだ。




通路を抜けた先は、これまでより広い空間だった。


中央が緩やかに開け、いくつもの横穴が繋がっている。


嫌な形だ、とエンは思う。


逃げ道が多いということは、敵の出入口も多い。


「さすがにここは、早く抜けたいですね」


「うん。でも走らないよ。体力は温存しよう」


カナの言葉に頷く。


焦った方が負ける。


それはもう分かっていた。


エンは小球を三つ展開する。前方と左右、少し離して配置する。


完全に塞ぐことはできない。


だが、どこから来ても動きは見える。


――その直後だった。


「ゴギャッ!」


低い声が響く。


横穴からゴブリンが現れ、続いて別の穴からも飛び出してくる。


五体。


さらに奥から二体。


合計七体。


そして最後に、通常のゴブリンより一回り大きい影。


ホブゴブリン。


「……やっぱり来ましたね」


「うん。さっきより多い」


カナが構え直す。


今回は最初から包囲する形だった。


正面だけではない。左右からも距離を詰めてくる。


エンはすぐに大球を動かさない。


まず小球を一つ、中央に置く。


進路を分ける。


ゴブリンの動きが、わずかにばらけた。


「右から来る」


「はい」


カナが一体を迎え撃つ。


その間に、エンは左側へ大球を流す。まとめて押し出し、数を減らす。


だが、すぐに別の個体が前に出てくる。


止まらない。


倒しても、流れが続いている。


「……リーダーが遠い」


エンは歯を食いしばる。


ホブゴブリンが後ろに下がり、常に距離を取っている。


簡単には狙えない。


「エン」


カナが短く呼ぶ。


「全部相手にしない」


その一言で、エンの視界が開けた。


そうだ。


倒し切る必要はない。


流れを止めればいい。


エンは小球を一つ、あえて大きく動かした。


逃げ道があるように見せる。


ゴブリンがそちらへ流れる。


ホブゴブリンの視線も動いた。


その瞬間。


大球を逆方向へ押し出す。


転進。


回転を乗せた鉄球が横から突き刺さる。


直撃したゴブリンが弾き飛び、通路に隙間が生まれた。


「そこ!」


カナが踏み込み、残りの一体を叩き倒す。


空間が開いた。


包囲が崩れる。


ホブゴブリンが声を上げるが、もう遅い。


エンは小球を前へ滑らせ、進路を塞ぐ。


敵の動きが止まる。


「……止まりました」


「うん。流れが切れたね」


カナの声が少しだけ軽くなる。


実際、ゴブリンたちの動きは明らかに鈍っていた。


指示が届かない。


連携が崩れている。


エンは大球をゆっくり前へ押し出す。


一体ずつ確実に距離を取り、数を減らしていく。


もう焦る必要はなかった。




最後のゴブリンが逃げていったあと、広間に静けさが戻る。


エンは深く息を吐いた。


「……分かってきました」


「なにが」


「倒す順番です」


カナは少し笑う。


「やっとね」


エンも笑い返した。


強い敵を先に倒すのではない。


戦いを続けさせているものを止める。


そうすれば、残りは自然に崩れる。


だが、エンは奥を見たまま動かなかった。


「……これ、まだ終わりじゃないですよね」


「うん」


カナも同じ方向を見る。


「たぶん、もっと奥にいる」


ホブゴブリンをまとめる存在。


まだ姿を見せていない中心。


E級ダンジョンの奥で、群れはまだ動いている。


エンは大球に手を置いた。


次に出てくる相手は、これまでより確実に厄介になる。


それでも、不思議と不安はなかった。


やるべきことが、少しずつ見えてきていたからだった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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