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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第44話 上位個体の影

毎日20時投稿

ホブゴブリンを倒したあと、二人はしばらくその場を動かなかった。


戦闘は終わっている。だが、緊張がすぐには抜けない。


さっきまでとは明らかに違う戦いだった。


「……今までのゴブリンと、別物でしたね」


エンが言う。


「うん。あれは群れの中心」


カナは倒れたホブゴブリンを見下ろしながら答える。


「他のゴブリンが動きやすいようにしてた」


確かにそうだった。


直接戦って強いというより、全体の動きが変わっていた。


囲まれそうになった理由も、今なら分かる。


「先にあれを止めないと、増えるほど面倒になりますね」


「そうだね」


カナは頷く。


「でも、無理に狙うと逆に崩れるから気を付けて」


エンは小さく息を吐いた。


F級までの戦いとは、考える順番が違う。


強い敵を倒すだけでは終わらない。




帰還途中、別のパーティとすれ違った。


「ああ、ちょうどよかった」


向こうの前衛が声をかけてくる。


「奥でホブゴブリン見なかったか?」


「いました。三体のゴブリンと一緒に」


「やっぱりか……」


男は眉をしかめる。


「最近増えてるんだよ。小隊みたいに動くやつ」


「小隊、ですか」


「ああ。声出して周りを動かすんだ。あれがいると一気に面倒になる」


情報を交換し、互いに注意を促して別れる。


エンは歩きながら考え込んでいた。


「……増えてるんですね」


「うん」


カナは短く答える。


「たぶん奥に、もっと大きいのがいる」


エンは顔を上げた。


「もっと大きい、って……」


「群れの中心」


カナは淡々と言う。


「さっきのは、その下」


言葉は静かだったが、意味は重かった。




ダンジョンを出たあと、二人はそのままギルドへ向かった。


素材の換金を終えたところで、ギルドマスターに呼び止められる。


「E級、潜ってるらしいな」


「はい」


エンが頷く。


「ホブゴブリンに遭遇しました」


「やっぱり出てきたか」


ギルドマスターは腕を組む。


「最近、奥の動きが変わってる。ゴブリンの群れがまとまり始めてる」


「原因は分かってるんですか?」


「断定はできんが……」


少し間を置く。


「上位個体がいる可能性が高い」


エンの背筋が伸びた。


「上位個体……」


「キング級まではいかんだろうがな。だが、群れをまとめるやつがいると厄介だ」


ギルドマスターは二人を見た。


「無理はするな。E級は逃げても評価は下がらんからな」


「はい」


カナが先に答える。


その声音はいつも通りだった。




ギルドを出たあと、夕暮れの街を歩きながらエンは言った。


「……いましたね」


「うん」


「たぶん、まだ先に」


カナは少しだけ笑った。


「でも、分かったでしょ」


「何がですか?」


「E級の戦い方」


エンは考える。


確かに、少し見えてきていた。


敵の数ではなく、流れを見ること。


倒す順番を間違えないこと。


全部を動かそうとしないこと。


「……はい」


ゆっくり頷く。


「前より、焦らなくなりました」


「それでいい」


カナは歩きながら続ける。


「焦らない方が、ああいう時こそ強いから」


ホブゴブリンの動きを思い出す。


こちらが崩れた瞬間を狙っていた。


つまり――。


崩れなければいい。


エンは小さく息を吐いた。


E級の奥には、まだ見えていない敵がいる。


だが、不思議と恐怖はなかった。


次にどう戦うかを、もう考え始めていたからだった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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