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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第43話 ホブゴブリン小隊

毎日20時投稿

E級ダンジョンの奥へ進むにつれて、ゴブリンの気配は明らかに増えていた。


数が多いわけではない。


むしろ逆だ。


「……いないですね」


エンが小さく言う。


通路は静かだった。敵と遭遇する間隔が、これまでより長い。


「いるよ」


カナが即座に返す。


「見えてないだけ」


その言葉の意味を理解する前に、小球が微かに揺れた。


前方の曲がり角。


何かが動いた。


エンは小球を止める。無理に進めない。


少し遅れて、ゴブリンが一体だけ姿を見せた。


こちらを見る。


そして、すぐに引いた。


「……呼びましたね」


「うん」


カナの声が低くなる。


「来るよ」


次の瞬間だった。


通路の奥から、複数の足音が重なる。


現れたのは三体のゴブリン。


だが、その後ろに――もう一体。


体格が一回り大きい。


粗末だが、金属の盾を持ち、片手には剣。


「ホブゴブリン……」


エンは思わず呟いた。


F級ではボス個体だったが、ここでは通常モブとして出てくるのか。


ゴブリンより背が高く、視線が明確にこちらを捉えている。


「下がらないで」


カナが言う。


「走ったら追われる」


ホブゴブリンが低く声を上げる。


「ゴギャッ」


それに反応するように、前のゴブリンが左右に散った。


挟む動き。


「……来ます!」


エンは小球を前に出し、通路中央に置く。正面の進路を制限する。


だが、ゴブリンは止まらない。


左右から同時に回り込んできた。


「速い……!」


大球を横へ流し、一体を弾く。だがその間にもう一体が距離を詰める。


カナが前に出てハンマーで受け止めた。


「エン、後ろ!」


声に反応して振り返る。


ホブゴブリンが、すでに間合いに入っていた。


判断が早い。


ゴブリンの動きで意識を散らし、その隙に前へ出ている。


エンは反射的に大球を引き戻す。


間に合わない。


――その瞬間、ホブゴブリンが止まった。


小球が、足元にあった。


無意識に置いていた球だ。


一瞬の躊躇。


その隙にカナが横からハンマーを振り抜く。


直撃はしない。


だが体勢が崩れる。


「今!」


エンは大球を押し出した。


転進。


回転を乗せた鉄球が一直線に走り、ホブゴブリンの盾に激突する。


鈍い衝撃音。


盾ごと後方へ押し込まれ、壁に叩きつけられた。


それでも倒れない。


「硬い……!」


「ゴブリンが先!」


カナの声で意識を戻す。


残っていたゴブリンが再び距離を詰めてきていた。


エンは小球を滑らせ、進路を塞ぐ。カナが一体を叩き、もう一体を大球で押し出す。


ようやく数が減る。


だが、呼吸を整える間もなく――


「ギャッ!」


ホブゴブリンが立ち上がった。


まだ戦える。


視線が、真っ直ぐエンへ向く。


「……狙われてますね」


「指示を出してる」


カナが短く言う。


「このゴブリン部隊の頭ってとこですね」


確かにそうだった。


さっきから、動きが変わる瞬間はいつもホブゴブリンの声のあとだ。


エンは息を整える。


正面から押し切るのは危険だ。


だが――。


「動かします」


「任せる」


短い返事。


エンは小球を一つ、通路の端へ滑らせた。


逃げ道を作るように見せる。


ホブゴブリンがそちらへ体を向ける。


その瞬間。


大球を逆方向から押し出す。


転進。


横からの衝撃に体勢が崩れる。


カナが踏み込み、ハンマーを振り下ろした。


鈍い音。


ホブゴブリンが膝をつく。


間髪入れず、エンがもう一度大球をぶつける。


今度こそ、動かなくなった。




しばらく、二人とも動かなかった。


静寂が戻る。


「……はぁ」


エンが大きく息を吐く。


「強かったですね」


「うん」


カナも息を整えながら頷く。


「でも、勝てない相手じゃない」


その言葉に、エンは少しだけ笑った。


確かにそうだった。


危なかったが、崩れてはいない。


「今後もこういうこと、増えますかね」


「たぶんね」


カナはホブゴブリンの装備を見下ろす。


「E級の奥は、こうなる」


ゴブリンが群れで動き、上位個体が指示を出す。


ただの数ではない戦い。


エンは大球に触れながら、小さく息を吐いた。


E級はまだ終わらない。


ここから先が、本番なのだと理解していた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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