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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第37話 積みすぎた力

毎日17:30投稿

E級ダンジョンに潜り始めてから、数日が経った。


探索は順調だった。


危険な場面はある。だが、崩れることはない。


敵の数が増えても、小球で進路を制限し、大球で流れを切る。それだけで戦闘は自然と整った。


エンは、自分でも分かるくらい調子が良かった。


「左から来ます」


通路の奥から現れたゴブリンに向けて、小球を滑らせる。


動きが止まったところへ大球を転がす。


鈍い音が響き、敵は壁際へ弾かれた。


間髪入れずにもう一体。


今度は転進を乗せる。


回転を帯びた鉄球が一直線に走り抜け、まとめて二体を吹き飛ばした。


「……今の、使わなくてもよかったんじゃない?」


後ろでカナが言う。


「え?」


「普通に倒せたでしょ」


「ああ……」


言われてみれば、そうだった。


だが、転進を使った方が早い。


それに――。


「なんか、気持ちいいんですよね」


エンは少し笑った。


回転が乗った瞬間の感覚。球が伸びていく手応え。狙った通りに敵が崩れる感覚。


成功体験が、まだ新しかった。


カナは何も言わなかったが、少しだけ視線を落とした。




探索は続く。


E級の敵はF級よりも粘る。数も多い。


だが、それ以上に、エンの動きが早くなっていた。


敵を見た瞬間に球を動かす。


考える前に体が動く。


戦闘が短く終わる。


だから、次も早く終わらせたくなる。


結果として――転進の回数が増えていった。




休憩のために広間の端へ腰を下ろしたときだった。


「……疲れてる?」


カナが言う。


「え?」


「呼吸が、速いよ」


言われて初めて気づく。


息が少し上がっていた。


「いや、まあ……ちょっと動いたからですかね」


「いつもより多いんだけど」


エンは曖昧に笑ってごまかした。


確かに少し疲れている。でも、戦闘に支障が出るほどではない。


それよりも。


「前より楽なんですよ」


「楽?」


「はい。前はもっと考えてましたけど、今は……勝手に動く感じで」


言葉にしてから、自分でも少し不思議に思った。


楽なのに、疲れている。


理由は分からない。


カナはしばらく黙っていたが、それ以上は何も言わなかった。




帰還途中。


別のパーティとすれ違う。


「あ、球の」


声をかけられ、エンは軽く会釈する。


「最近よく見るな。E級慣れた?」


「まだです」


「でも早いよな。戦闘終わるの」


軽い雑談だった。


以前のような珍しさではなく、普通の冒険者同士の会話。


それが少し嬉しい。


「ありがとうございます」


そう答えて別れる。


そのまま歩き出したとき、足がわずかに重く感じた。


ほんの一瞬。


気のせいだと思える程度だった。




ダンジョンを出た頃には、夕方になっていた。


外の空気を吸い込んで、エンは大きく伸びをする。


「……ちょっと疲れましたね」


「うん」


カナは短く答える。


「明日は、休む?」


「いや、大丈夫です」


即答だった。


E級に入ってからも、戦える実感がある。


止まりたくなかった。


「もう少し慣れたいですし」


カナは何も言わない。


ただ、エンの歩幅に合わせて歩く。


その横で、エンは気づかないまま、少しだけ足を引きずっていた。


転進の回転が、まだ体に残っているような感覚だった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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