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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
2章:戦い方のかたち

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第35話 転進

毎日17:30投稿

街の外れにある採石場跡は、人がほとんど来ない場所だった。


平らな地面と、緩やかな傾斜。転がり方を見るにはちょうどいい。


エンは大球の前に立ち、深く息を吐いた。


「……よし」


押す。


大球が転がる。


途中で減速し、止まる。


「違うな……」


三度目だった。


強く押しても伸びない。弱く押せば途中で止まる。


静床の遺跡で感じた、あの止まらない感覚が再現できない。


「休む?」


後ろからカナが声をかける。


「いや、もう少しやります」


エンは首を振った。


ここまで来て、偶然のままにしたくなかった。


何度も試す。


押し方を変える。


立ち位置を変える。


力の入れ方を変える。


だが結果は同じだった。


「……なんでだ」


大球を見つめる。


形は同じだ。重さも同じ。


違うのは、自分の動きだけ。


(強く押したわけじゃなかった)


あの時は、もっと自然だった。


押したというより――。


前に逃げていく感覚。


「……逃げてた?」


エンは小さく呟いた。


もう一度、大球の前に立つ。


今度は、押そうとしない。


転がそうとする。


中心ではなく、少し外側へ力をかける。


大球が動く。


回る。


音が変わる。


「……!」


伸びた。


今までよりも、明らかに長く。


減速が遅い。


狙った場所まで転がり、静かに止まった。


エンはしばらく動かなかった。


「……今の」


もう一度。


同じように。


押さない。転がす。


回転を先に作る。


大球が一直線に進む。


同じ場所で止まる。


再現できた。


「……できた」


思わず声が漏れる。


胸の奥が熱くなる。


偶然じゃない。


自分でやった。


何度も失敗して、やっと届いた。


「カナ!」


「うん、同じだった」


カナは距離を見ながら頷く。


「さっきと同じ止まり方」


その一言で、実感が一気に湧いた。


エンは思わず笑った。


「これ、名前つけません?」


「名前?」


「はい」


少し考えて、口に出す。


「……転進、とか」


自分でも少し子供っぽいと思った。


でも、今はそれが嬉しかった。


カナは少しだけ笑う。


「いいんじゃない?」


あっさりした返事だった。


それが逆に、現実になった気がした。


夕方まで、何度も繰り返した。


成功する回数が増える。


大球が思った通りに伸びる。


巨大球でも試す。


重い分、さらに止まりにくい。


「……強いですね、これ」


「うん。でも疲れるでしょ」


「まあ、ちょっと」


それでも、顔は笑っていた。


強くなった。


はっきりとそう思えた。


日が沈みかけたころ。


最後にもう一度、大球を転がす。


滑らかに進み、静かに止まる。


エンは満足そうに息を吐いた。


「……できましたね」


「うん」


二人で顔を見合わせて、少しだけ笑う。


誰も見ていない場所で。


誰にも知られていないまま。


新しい技が、一つ生まれた。

いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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