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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第34話 F級の終わり

毎日17:30投稿

緑層の樹界から戻った翌日。


ギルドの中は、いつもと同じだった。


依頼掲示板の前には人だかりができていて、受付前では報告待ちの冒険者が並んでいる。


特別なことは何もない。誰かが大きな成果を上げたような空気もない。


それが、少しだけ心地よかった。


「緑層の樹界、討伐確認しました」


受付の女性が書類をまとめる。


「これでF級ダンジョン三種達成ですね。おめでとうございます」


「あ、ありがとうございます」


エンは頭を下げた。


横でカナが小さく頷く。


拍手が起きるわけでもない。周囲の冒険者がちらりと見る程度だ。


「もう三つ終わったのか」


「球のやつだろ?」


そんな声が少しだけ聞こえる。


評価というほどではない。ただ、覚えられたという感じだった。


「E級ダンジョンへの挑戦資格も更新しておきますね」


受付が言う。


エンは一瞬だけ言葉を失った。


「……ああ、はい」


ついこの前までG級に潜っていたはずなのに。


少しだけ、遠くまで来た気がした。


ギルドの二階から、ギルドマスターがその様子を見ていた。


並べられた鉄球。


装飾のない、ただの球体。


だが動きを思い出す。


無駄なブレがない。


同じ軌道を、何度もなぞっていた。


(……均一すぎる)


普通の鍛冶では出ない精度だった。


だが、今はまだ言う必要はない。


ギルマスは静かに視線を外した。


「……もう少しだな」


誰にも聞こえない声だった。


ギルドを出たところで、後ろから声が飛んだ。


「おーい、エン」


振り返ると、レオが手を上げていた。


「聞いたぞ。もうF級終わりなんだって?」


「なんとか、だけどね」


「早いなあ」


レオは笑う。


いつも通りの調子だった。


「まあでも、お前ならそのうち来ると思ってたけどさ」


「そうか?」


「おう」


軽い会話だった。


だがレオは一瞬だけ、エンの腰のマジックバックに視線を落とした。


(……本当に追いついたな)


口には出さない。


「じゃ、今度E級でな」


「あぁ」


それだけ言って、レオは手を振って去っていった。


鍛冶場に戻ると、いつもの匂いがした。


鉄と煤の匂い。


エンはマジックバックから球を取り出し、作業台の上に並べる。


小球、大球、巨大球。


どれも表面は滑らかなままだが、よく見ると細かな擦れ跡が増えている。


「結構使いましたね」


「うん」


カナは大球を手に取り、表面を確かめる。


「回ったときだけ、削れる向きが違う」


「やっぱりそうなんですね」


エンも覗き込む。


言われてみれば、同じ方向に薄く跡が残っている。


「でも、まだ安定してない」


カナが言う。


「できる時と、できない時がある」


エンは少し黙った。


静床の遺跡での感触。緑層の樹界での成功。


確かに強かった。


でも、いつでもできるわけじゃない。


「……たまたま強い、じゃダメですよね」


ぽつりと口に出す。


カナは顔を上げた。


「うん」


短い返事だった。


否定も、励ましもない。


ただ事実だった。


エンは大球を軽く転がす。


床の上で静かに止まる。


「ちゃんとできるようにします」


そう言うと、少しだけ笑った。


F級は終わった。


でも、まだ終わっていない気がした。




夕方。


鍛冶場の外に出ると、空は赤く染まっていた。


「F級、終わりましたね」


「うん」


カナは短く答える。


少しだけ間があって、続けた。


「でも、まだ強くなれる」


エンは笑った。


「ですね」


次に進む準備は、もう始まっていた。

いつもありがとうございます。


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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


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現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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