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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第33話 緑層の主

毎日17:30投稿

緑層の樹界の奥は、いつもより静かだった。


獣の気配がない。風の音と、葉が擦れる音だけが残っている。


「……もう出てきますね」


エンが小さく言った。


「うん」


カナも頷く。


昨日は落としただけだった。まだ完全に仕留めたわけではない。


今日は、その続きだ。


段差の多い広場に出る。


すぐに気配が動いた。


高所から、影が跳ぶ。


速い。


だが、エンは小球を動かさなかった。


まず周囲を見る。


坂の位置。段差の高さ。逃げやすい場所。


(上に行かせない)


大球を先に置く。


上へ抜ける斜面の手前。


ボスが着地し、すぐに方向を変える。


だが、動きが一瞬だけ鈍る。


「……見てるね」


カナが言う。


「はい」


前回と同じ配置だと気づいている。


だから無理に動かない。


様子を見ている。


「じゃあ、変えよ」


カナが軽く言った。


エンは頷く。


小球を横に動かす。


当てない。


進路だけを切る。


ボスが跳ぶ。


だが、逃げた先は少し低い場所だった。


ほんのわずかな段差。


「そこ」


カナの声。


エンはすぐに巨大球を取り出す。


坂の上。


前回より少しだけ角度を変える。


押す。


巨大球が転がる。


ボスが跳ぶ。


だが、逃げ場が足りない。


着地した瞬間、足が滑る。


体勢が低くなる。


巨大球が追いつく。


鈍い音。


押し込まれる。


斜面を流れ、下へ。


止まらない。


エンは小球を動かす。


逃げようとした脚を払う。


巨体が崩れる。


大きな音とともに、動きが止まった。


静寂。




エンはしばらくその場に立ち尽くしていた。


「……終わりました?」


「うん」


カナが頷く。


「今度はちゃんと倒してる」


エンは息を吐き、少し笑った。


「今回は、焦らなかったですね」


「うん」


カナも笑う。


「やっと見てから動いてた」


最初は強さに頼っていた。


巨大球を使えば勝てると思っていた。


でも違った。


場所を作って、流れを決めてから使う。


それだけだった。




帰り道。


樹界の空気は、来たときよりも軽く感じられた。


「これで三つ目ですね」


「うん」


F級ダンジョン三種の攻略。


条件は揃った。


エンはマジックバックを軽く叩く。


「……なんか、やっとちゃんと冒険者になった感じがします」


「今までは?」


「試してばっかりでした」


カナは少し考えてから言った。


「今も試してると思うけど」


エンは苦笑する。


「それはそうですね」


でも、違う。


もう分かっている。


何をすればいいのか。


どう戦えばいいのか。


小球、大球、巨大球。


三つの役割が、ようやく一つに繋がった。


緑層の樹界の出口が見えてくる。


F級の戦いは、ここで終わる。


そして次は、もう一つ上の段階だった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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