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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第32話 落とす場所

毎日17:30投稿

緑層の樹界に入る前、エンはしばらく入口の前で立ち止まっていた。


「……今日は、追いません」


ぽつりと言う。


カナは横で頷いた。


「うん。追ったら負けるね」


前回の戦いははっきりしていた。速さでは勝てない。上に逃げられれば、球は届かない。


なら、やることは一つだった。


「下にいさせる」


「そう」


カナは少し笑う。


「やっと同じこと言った」


エンも苦笑した。


今までずっとやってきたことだ。ただ相手が変わっただけなのに、気づくのが遅れた。




樹界の奥へ進む。


段差の多い広場に出ると、すぐに気配が現れた。


影が動く。


速い。


だが、今回は慌てない。


エンは小球を動かさず、先に大球を置いた。


上へ逃げるための斜面の手前。


完全には塞がない。


ただ、通りにくくする。


ボスが現れる。


こちらを見て、すぐに横へ移動する。


だが、いつもの上への動きが少し遅れた。


「……今」


カナが小さく言う。


エンは小球を低く動かす。


当てない。


進路を切る。


ボスが方向を変える。


だが、その先にも段差がある。


上に行けない。


「下にいる」


エンが呟く。


「うん」


カナの声は落ち着いていた。


焦る必要はない。


速い相手ほど、安全な場所を探す。


なら、その場所を減らせばいい。




ボスが跳ぶ。


だが、高さが足りない。


着地が低くなる。


エンは大球を少しだけ動かす。


逃げ道が変わる。


ボスが方向を変える。


その先は、わずかな下り坂だった。


「エン」


「はい」


「そこ」


短い指示だった。


エンは頷く。


巨大球を取り出す。


置く位置は決まっていた。


坂の上。


転がれば、下まで止まらない場所。


深く息を吸う。


押す。


巨大球が動く。


重い音。


ボスが気づき、跳ぶ。


だが遅い。


逃げた先が、下り坂だった。


着地と同時に足が滑る。


体勢が崩れる。


「……今!」


巨大球が追いつく。


ぶつかる。


押し込む。


斜面を滑りながら、ボスの体が下へ流れる。


止まらない。


下まで落ちた瞬間、ボスが大きく体勢を崩した。


エンは小球を送る。


脚に当たる。


支えを失い、巨体が倒れた。


地面が揺れる。


静寂が戻る。




しばらく、誰も動かなかった。


エンはゆっくり息を吐く。


「……できましたね」


「うん」


カナは頷く。


「当ててないね」


エンは少し笑った。


確かにそうだった。


当てたのではない。


落としただけだ。


「……やっと分かりました」


「何が?」


「強くするんじゃなくて、場所を作るんですね」


カナは少し考えてから言う。


「エンの戦い方は、ずっとそうだよ」


最初から変わっていない。


ただ、相手が速くなっただけ。




帰り道。


巨大球は静かにマジックバックの中に収まっていた。


強い力だった。


だが今は、怖くなかった。


「次からは、ちゃんと使えそうです」


「うん」


カナは笑った。


「やっと三つとも、役割できたね」


小球、大球、巨大球。


それぞれの意味が、ようやく揃った。


緑層の樹界の出口が見えてくる。


F級ダンジョン三つ目の攻略は、もう目前だった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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