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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第27話 静床の主

毎日17:30投稿

静床の遺跡の奥は、これまでよりもさらに静かだった。


足音だけが響く。広い空間に出ると、音が遅れて返ってくる。


「……ここですね」


エンが小さく言った。


中央に、巨大な影が立っている。


石でできた巨像。人の形をしているが、倍以上の大きさがある。


腕も脚も太く、まるで建物の柱のようだった。


ゆっくりと頭が動く。


こちらを認識した。


「……大きいですね」


「うん」


カナも短く答える。


逃げる様子はない。ただ、そこに立っているだけで圧迫感があった。


エンは小球を浮かせる。


低く転がす。


鈍い音。


巨像は、まったく動かなかった。


「……やっぱり」


予想通りだった。


大球を出す。


重い音を立てて転がる。


ぶつかる。


だが、止まる。


巨像は一歩も下がらない。


「硬いですね」


「うん」


巨像が腕を振るう。遅いが重い。床に当たっただけで振動が伝わる。


危険ではない。避けられる速度だ。


だが、倒せる気がしない。


距離を取りながら、エンは考える。


小球は効かない。


大球も止められる。


押し切れない。


(……足りない)


自然と、マジックバックへ意識が向いた。


「……出します」


カナは止めなかった。


巨大球が床に現れる。


直径八十センチの、完全な球体。


遺跡の光を静かに映す。


巨像は動かない。ただ、こちらを見ている。


「……やっぱり大きいですね」


エンは少しだけ笑った。


そして押し出す。


重い音。


巨大球はゆっくりと転がる。


巨像に当たる。


――止まった。


「……あれ?」


押し返される。


重いが、遅い。


勢いがない。


巨像は動かない。


「……ダメか」


エンは小さく息を吐いた。


やはり重いだけでは足りない。


もう一度。


今度は少し強く押す。


巨大球が転がる。


当たる。


止まる。


同じだった。


エンは眉を寄せる。


強いはずなのに、届かない。


そのときだった。


「エン」


カナの声。


「この前みたいに」


エンは一瞬だけ考える。


この前――。


止まらなかったときの感覚。


押すというより、前に送る感覚。


ほんの少しだけ、力の向きを変える。


巨大球が動く。


転がる。


ぶつかる。


――止まらない。


「……!」


巨像の足がずれる。


一歩。


もう一歩。


石が擦れる音が響く。


巨大球は減速しない。


押し続ける。


「押せてる……!」


エンの声が漏れる。


「止めないで」


カナが言う。


エンは集中する。


巨大球はただ転がっているだけなのに、いつもより軽く感じた。


巨像が後退する。


壁際まで押し込まれる。


体勢が崩れる。


大きく傾いた。


「今!」


小球を送り出す。


脚に当たる。


支えを失い、巨像が倒れた。


地面が揺れる。


低く重い音が、遺跡に長く響いた。


そして静寂。


エンはその場に立ったまま、しばらく動けなかった。


「……倒しました?」


「うん」


カナが頷く。


「倒した」


エンは巨大球を見る。


ただの鉄の塊。


なのに、さっきは止まらなかった。


「……すごいですね」


思わず笑う。


「これ、強いです」


素直な感想だった。


カナは少しだけ巨大球を見てから言う。


「うん」


短い返事だった。


だが、その表情は少しだけ複雑だった。




帰り道。


エンの足取りは軽かった。


「やっぱり、あれですよね」


「うん?」


「回ってたんですよね」


「たぶん」


まだ確信はない。


だが、止まらなかった理由はそれしか思いつかない。


「……できるようになれば、もっといけそうです」


エンは楽しそうに言った。


カナは何も言わなかった。


巨大球は確かに強かった。


だが同時に、止める方法もまだ分かっていない。


静床の遺跡の出口が近づく。


F級ダンジョン二つ目は、攻略された。


そして――。


エンはまだ知らない。


その強さが、次の場所では危険になることを。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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