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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第26話 伸びる球

毎日17:30投稿

静床の遺跡に入ってすぐ、エンは大球を出した。


いつもなら小球から始める。だが今日は違った。


「……やってみます」


「うん」


カナは止めなかった。


石人が一体、ゆっくりと近づいてくる。変わらない速度。変わらない重さ。


エンは深く息を吸った。


昨日の感触を思い出す。


強く押したわけじゃない。ただ、前に出す意識を少しだけ強くした。


押す。


転がる。


重い音。


石人に当たる。


――止まらない。


「……!」


石人の足が滑る。


一歩、二歩と後ろへ押される。


いつもならここで止まるはずだった。


だが、大球は減速しない。


石人の体が壁に当たり、ようやく止まった。


静寂が落ちる。


「……今の」


エンが呟く。


「長かったです」


「うん」


カナは球を見ていた。


確かに違う。転がり方が違う。ただの押し出しではない。


床に触れている時間が短いように見えた。


「もう一回」


「はい」


エンは頷く。


同じようにやろうとする。


だが今度は、途中で止まった。


「あれ?」


石人は少しよろめいただけで、踏みとどまる。


さっきほど動かない。


「……できない」


エンは眉をひそめた。


同じつもりだった。だが結果が違う。




数回試したあと、二人は距離を取った。


石人は倒れていないが、危険でもない。無理に続ける必要はなかった。


「……さっき、何が違ったんですかね」


エンが言う。


「分からない」


カナも正直に答える。


ただ一つだけ確かなことがある。


強いときは、球が伸びている。


止まらない。


「回ってるんだと思う」


「でも、どうやって?」


エンは首を傾げる。


自分では何も変えていないつもりだった。


押しただけだ。


「たぶん、押し方」


カナは言った。


「まっすぐじゃないのかも」


エンは大球を見る。


滑らかな金属面が、静かに光を反射している。


見た目は何も変わらない。


だが、さっきの動きは明らかに違った。




帰り道。


エンは少し興奮していた。


「でも、強かったですよね」


「うん」


「今まで押せなかったのに、動きました」


石人を押し切った感触が、まだ手に残っている。


あれができれば、戦いは変わる。


「……できるようになりたいです」


素直な言葉だった。


カナは少しだけ横目でエンを見る。


「うん。でも」


「でも?」


「止まらなくなるかも」


エンは一瞬だけ黙った。


それでも、すぐに笑う。


「それ、強いってことじゃないですか?」


カナは答えなかった。


強いことと、安全なことは違う。


だが今は、まだそこまで言う必要はないと思った。




鍛冶場に戻ったあと。


エンは小球を浮かせながら、何度も動きを試していた。


強く押す。


弱く押す。


だが、さっきの感覚は再現できない。


「……難しいですね」


独り言のように呟く。


それでも、表情は明るかった。


今までできなかったことが、少しだけできた。


理由は分からない。


でも確かに、前に進んでいる。


大球は作業台の上で静かに光っていた。


まだ完全には扱えない力が、そこにあった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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