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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第25話 回ってる?

毎日17:30投稿

鍛冶場の朝は早い。


炉に火が入る前の静かな時間、カナは一人で大球の前に立っていた。


作業台の上に置かれた鉄球は、いつも通り滑らかだった。


歪みも傷もない。均形鍛冶としては、これ以上ない出来だ。


――なのに。


カナはしゃがみ込み、表面をじっと見つめる。


光の反射の中に、わずかな擦れ跡があった。


完全な傷ではない。使えば自然につく程度のものだ。


だが、向きが揃っている。


「……おかしい」


本来なら、当たり方はばらけるはずだった。均一な球体なら、接触面も均一になる。


なのに、同じ方向へ流れている。


何かが加わっている。


エンが鍛冶場に入ってきたのは、そのときだった。


「おはようございます」


「おはよう」


カナは視線を球から外さないまま答えた。


「ちょっといい?」


「はい?」


「これ、どうやって動かしてる?」


エンは少し困った顔をする。


「どうって……普通に押してるだけですけど」


「押すとき、ひねってない?」


「ひねる?」


エンは首を傾げた。


そんな意識はない。


「分からないです。たぶん、してないと思います」


「……そっか」


カナは立ち上がった。


まだ確信はない。だが、違和感は消えなかった。




その日も静床の遺跡へ向かった。


石の床は相変わらず平坦で、音がよく響く。


石人が一体、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。


「試してみて」


カナが言った。


「さっきみたいに、強く」


「強く、ですか?」


「うん」


エンは頷き、大球を前に出す。


いつもより少しだけ意識して押し出す。


重い音。


球が転がる。


石人に当たる。


――押した。


いつもより長く。


石人の足がずれる。


壁際まで後退し、ようやく止まった。


「……まただ」


エンが呟く。


「今、強かったですよね」


「うん」


カナは球の動きを目で追っていた。


止まる直前、わずかに動きが変わった気がした。


ただ転がっているだけじゃない。


滑るように伸びていた。


「エン」


「はい?」


「これ、回ってるかも」


エンはきょとんとした顔をする。


「回ってる?」


「うん」


カナは地面を指差した。


「ただ転がってるんじゃなくて、もっと……回ってる」


うまく説明できない。


だが、均形鍛冶として分かることがある。


表面の摩耗が違う。


接触の仕方が違う。


「……よく分からないですけど」


エンは正直に言った。


ただ強く押しただけだ。特別なことはしていない。


「いいよ」


カナは頷く。


「たぶん、まだ偶然だから」


エンは首を傾げたままだった。


だが、さっきの感触だけは覚えている。


止まらなかった感覚。


押し続けた感触。


いつもより、重さが前に進んでいた。




帰り道。


エンは何度も手を開いたり閉じたりしていた。


「……回ってる、ですか」


「うん」


「でも球って、元から回ってますよね?」


「そうじゃなくて」


カナは少し考えてから言った。


「もっと、同じ方向に」


エンは完全には理解できなかった。


だが一つだけ、はっきりしていることがある。


さっきの一撃は、今までより強かった。


理由は分からない。


でも――。


「できるなら、もう一回やってみたいですね」


エンは少し楽しそうに言った。


カナは小さく頷く。


「うん」


まだ名前もない変化だった。


だが、確かに何かが始まっていた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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