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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第23話 静かな床

毎日17:30投稿

新しいF級ダンジョン――静床の遺跡は、街から少し南へ行ったところにあった。


入口は石造りで、崩れかけた柱が並んでいる。


洞窟というより、古い建物の跡のような雰囲気だった。


「……広そうですね」


エンが入口を見上げながら言う。


「うん」


カナは短く答えた。


「床が平らって聞いた」


それは少し意外だった。これまで潜ってきたダンジョンは、多少なりとも起伏や傾斜があったからだ。


エンはマジックバックを軽く叩く。


中には小球と大球。そして、昨日完成した巨大球が入っている。


まだ使うつもりはない。


ただ、持ってきただけだ。


「……とりあえず様子見ですね」


「うん」


二人は遺跡の中へ足を踏み入れた。




中は静かだった。


足音がやけに響く。床は石でできており、驚くほど平坦だ。段差も、傾斜もほとんどない。


「……転がらないですね」


エンは小球を軽く前に出してみる。


いつもなら、少しの勢いで伸びていくはずだった。だが、すぐに減速して止まる。


「止まるのが早い」


カナが言う。


エンはもう一度試す。少し強めに押し出す。


やはり同じだった。


進むが、伸びない。


「なんか……重い感じがします」


「床が滑らないのかも」


確かに、石の表面はわずかにざらついている。均一だが、摩擦が強い。


今までのように、勢いを利用できない。




奥へ進んだところで、物音がした。


石が擦れるような音。


壁際から、人型の影がゆっくりと現れる。


「……石人?」


エンが呟く。


人の形をした石の魔物だった。動きは遅いが、体は厚く、重そうに見える。


小球を転がす。


鈍い音。


当たったが、ほとんど動かない。


「硬いですね」


「うん」


石人は一歩だけ後ろに下がり、再び前に出てくる。


止まらない。


エンはもう一度、小球を当てる。だが結果は同じだった。


「……崩れない」


穿穴の洞のゴブリンとは違う。


避けないし、退かない。


ただ前に来る。


エンは大球を取り出した。


「これなら……」


低く転がす。


重い音が響き、石人が少しだけよろめいた。


だが、止まらない。


腕で押し返され、大球がゆっくりと止まった。


「……押し返された」


エンは思わず呟いた。


今まで、大球が止められることはほとんどなかった。


「重いけど、勢いがない」


カナが言う。


エンは頷いた。


確かにそうだった。


重さはある。だが、伸びない。すぐに止まる。


だから押し切れない。


石人はゆっくりと近づいてくる。


危険ではない。速度は遅い。


だが、決め手がない。


「……今日はここまでにしましょう」


「うん」


無理に戦う必要はない。


エンは球を戻し、距離を取った。




帰り道。


エンは何度も床を見下ろしていた。


「なんか、変ですね」


「うん」


「同じように動かしてるのに、結果が違う」


穿穴の洞では、球はもっと伸びていた。押せていた。流れを作れていた。


だがここでは、全部途中で止まる。


「……足りないんですかね」


エンが呟く。


「何が?」


「勢い、ですかね」


自分でもはっきりしない。


ただ、何かが足りない。


カナは少しだけ考えてから言った。


「たぶん」


それ以上は続けなかった。


まだ、答えは出ていない。


静床の遺跡の出口が見えてくる。


新しいダンジョンは、まだ何も教えてくれていなかった。


ただ一つだけ確かなのは――。


今までのやり方だけでは、通用しないということだった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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