表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/107

第22話 新しい荷物

毎日17:30投稿

穿穴の洞から戻った翌日。


ギルドの中はいつもと変わらない賑わいだった。


依頼掲示板の前で言い合う声、報告を終えた冒険者の笑い声。


何も特別なことは起きていない。


だが、エンにとっては少しだけ違う日だった。


「……こんなになるんですね」


受付のカウンターに置かれた革袋を見て、思わず声が漏れる。


ホブゴブリンの素材換金額は、これまでとは明らかに違っていた。


G級の頃とは比べものにならない。


「F級ボス素材ですからね」


受付の女性が事務的に答える。


「安定して持ち帰れるなら、次の装備を考えてもいい頃です」


「次の装備?」


エンが首を傾げると、受付はカウンターの横を軽く示した。


そこには、革製の袋が並んでいる。見た目は普通の荷袋だ。


「マジックバックです。容量拡張の簡易型ですけど、F級なら十分ですよ」


エンは少し驚いてカナを見る。


カナはすでに袋を見ていた。


「……あった方がいいかも」


「やっぱりですか?」


「素材が、増えるから」


確かに、ここ最近は持ち帰りに苦労することが増えていた。


鉄球も重いし、今後はもっと素材を持ち帰ることになる。


少しだけ迷ってから、エンは頷いた。


「じゃあ、これを」




ギルドを出たあと、エンは何度も新しい袋を触っていた。


「見た目、普通ですね」


「普通でいいんだよ」


カナが言う。


「目立たない方がいい」


袋自体は軽い。だが中に入れた荷物の重さは、ほとんど感じない。


まだ慣れない感覚だった。


「これで、だいぶ楽になりますね」


「うん」


カナは少しだけ考えてから言った。


「……これなら作れるね」


エンは足を止める。


「何がです?」


カナは少しだけ間を置いてから答えた。


「もっと大きいやつ」


「もっと……?」


「球」


エンは一瞬、言葉の意味が分からなかった。


「前から作ろうと思ってたんだよね」


さらりと言う。


「いつか、止められない相手が出るかもしれないと思ってたから」


エンは思わず笑った。


「もう十分大きいと思ってましたけど」


「今のは止めるための大きさ」


カナは歩きながら続ける。


「次は、止まらないための大きさ」


その言葉に、エンは少しだけ想像する。


今よりも大きい鉄球。


重い塊。


転がったら、きっと止まらない。


「……それ、使えますかね」


「分からない」


カナは正直に言った。


「でも、エンなら動かせるでしょ」


当然のような言い方だった。


エンは苦笑する。


自分でも、否定はできなかった。




鍛冶場に戻ると、カナはすぐに炉へ火を入れた。


いつもの作業だが、どこか空気が違う。


「どれくらいの大きさなんです?」


「これくらい」


カナが手を広げる。


エンは目を瞬かせた。


「……大きくないですか?」


「うん」


カナは頷く。


「だから今まで作らなかった」


マジックバックがなければ、持ち運びもできない。ダンジョンに持ち込むことも現実的ではない。


だが今は違う。


条件が揃った。


「完成しても、すぐ使えるか分からないよ」


「まあ、そうですよね」


エンは笑う。


それでも、少しだけ胸が高鳴っていた。


単純に、強そうだったからだ。




炉の火が強くなる。


溶けた鉄が静かに流れ、形を作っていく。


カナの均形鍛冶は派手ではない。ただ、無駄がない。歪みも、迷いもない。


時間をかけて、ゆっくりと形が整えられていく。


やがて。


作業台の上に、それは置かれた。


直径八十センチ。


継ぎ目のない、完全な球体。


表面は滑らかで、光を静かに反射している。


武器には見えない。


ただの金属の塊だった。


「……きれいですね」


エンが思わず言う。


カナは短く答えた。


「形はね」


その言葉の意味を、エンはまだ理解していなかった。


だが――。


これを動かしたらどうなるのか。


それを考えるだけで、少しだけ楽しみだった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ