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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第20話 統率の崩壊

毎日17:30投稿

穿穴の洞の奥は、相変わらず静かだった。


だがその静けさは、もう不気味には感じなかった。何が起きるかを、少しだけ理解しているからだ。


「……いますね」


エンが小さく言う。


開けた空間の向こう、気配が集まっている。


ゴブリンが三体。少し遅れて、もう二体。


そして奥に、あの大きな影。


ホブゴブリン。


低い声で何かを発すると、ゴブリンたちが位置を変えた。


前には出ない。


横へ散りすぎない。


隙を作らない動き。


(……でも)


エンは小さく息を吐く。


前回とは違う。


何をすればいいか、もう分かっている。


大球を取り出す。


通路の中央ではなく、分岐の手前に置いた。


完全には塞がない。


だが、群れが横に広がれない位置。


「ゴギャ」


ゴブリンが鳴く。


動きが止まる。


ホブゴブリンが一歩前に出るが、それ以上は進まない。


様子を見ている。


エンは小球を動かした。


速くはない。


ただ、距離を詰める。


一体が下がる。


もう一体も下がる。


逃げ道は一つだけ。


そこへ誘導する。


ゴブリンたちはまとまろうとするが、通路が狭い。


動きが重なる。


「今!」


小球が低く転がる。


一体が避けきれず倒れる。


残りが散る。


ホブゴブリンが短く声を上げた。


だが遅い。


分かれてしまった。




空間に残ったのは、ホブゴブリンと、少し離れた場所に一体だけ。


統率が崩れている。


エンは追わない。


先に大球の位置を少しだけ動かす。


逃げ道を変える。


残ったゴブリンが迷い、奥へ退いた。


そして――。


ホブゴブリンだけが、その場に残った。


盾を構え、低く唸る。


「……一体まで追い込めましたね」


「うん」


カナが頷く。


ここからは、今までと違う。


群れではない。


個体として強い相手。


エンは小球をゆっくり動かす。


ホブゴブリンが盾で受ける。


鈍い音。


崩れない。


やはり硬い。


(正面じゃ無理だ)


エンはすぐに理解した。


だが焦りはない。


今までやってきたことは同じだ。


危なくならない位置を作る。


それだけ。


ホブゴブリンが一歩踏み込む。


速い。


エンは距離を取り、小球を戻す。


追ってこない。


様子を見ている。


まだ主導権は完全にはこちらにない。


だが――。


「もう、さっきまでとは違いますね」


エンが言うと、カナが小さく頷いた。


「うん。もう、指示できてない」


周囲にゴブリンはいない。


統率する相手がいない。


残っているのは、ただ強い一体だけだった。


エンは小さく息を吐く。


ここから先は、慎重に崩すしかない。


小球を浮かせ直し、ホブゴブリンの動きを見据える。


穿穴の洞の奥で、戦いは静かに形を変えていた。


いつもありがとうございます。


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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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