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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第19話 分断

毎日17:30投稿

穿穴の洞の奥へ向かうのは、これで三度目だった。


前回、前々回はホブゴブリンと戦わなかった。ただ、何が足りないのかを確かめただけだ。


だから今日は、少しだけ違う。


「……追いかけません」


入口を抜けてすぐ、エンはそう言った。


「うん」


カナは頷く。


今回の目的は倒すことではない。動きを変えることだ。


浅い層を抜け、気配が濃くなる場所まで進む。やがて、あの開けた空間が見えてきた。


「来ます」


岩陰からゴブリンが現れる。三体。距離を保ったまま、様子を窺っている。


エンはすぐに小球を動かさなかった。


代わりに、大球を取り出す。


通路の分岐の手前。


完全に塞がない位置に置く。


「……ゴギャ」


ゴブリンが鳴いた。


動きが止まる。


今までと違う配置だった。


横へ回ろうとした個体が、進路を変える。


エンは小球をゆっくり前に出す。


追わない。


押さない。


ただ距離を詰める。


ゴブリンが下がる。


その先は、分岐の片側だけが開いた通路だった。


(……そうか)


エンはようやく理解した。


今まで、自分は敵を追っていた。


だが今は違う。


行ける場所を減らしている。


ゴブリンが一体、分岐の奥へ下がった。


残りの二体は別方向へ逃げる。


分かれた。


「今だ!」


小球を転がす。


一体が避ける。だが、もう一体が動けない。通路が狭い。


短い音が響き、一体が崩れた。


残りはすぐに撤退する。


追わない。


エンは小球を戻した。




「……分かれましたね」


「うん」


カナが頷く。


「さっきまで、固まってたのに」


エンは少しだけ笑った。


倒した数は多くない。だが、手応えが違う。


「全部相手にしなくていいんですね」


「うん」


カナは当然のように言う。


「一体ずつなら、危なくない」


その通りだった。


群れが怖いのは、同時に動くからだ。


なら、動けなくすればいい。




さらに奥へ進む。


今度は四体。


だがエンは慌てない。


大球を先に置く。


逃げ道を一つ減らす。


小球で距離を詰める。


ゴブリンたちは互いに鳴き声を交わしながら動くが、次第に位置がずれていく。


連携が合わない。


焦りが見える。


やがて一体が孤立した。


短い衝突音。


崩れる。


残りはすぐに奥へ退いた。


深追いはしない。




静かになった通路で、エンは息を吐いた。


「……できてますね」


「うん」


カナは少しだけ満足そうだった。


「これまでとは逆」


「はい」


過去の戦いは、自分たちが安全な場所に固定されていた。


今日は違う。


相手が、安全な場所へ逃げたつもりで、分かれていった。


流れが変わっている。


「……次は」


エンは奥を見る。


気配がある。


あの低い声の主がいる場所だ。


「たぶん、あいつですね」


「うん」


カナは短く答える。


まだ戦わない。


だが、もう分かっている。


群れは崩せる。


あとは――。


「一体になれば、同じですね」


エンは小球を静かに浮かせ直した。


穿穴の洞の奥は、もう遠く感じなかった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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