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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第18話 流れの逆転

毎日17:30投稿

穿穴の洞の奥へ向かう足取りは、これまでより慎重だった。


焦りはない。だが、前に進む理由ははっきりしている。


前回は、何もできなかった。


だから今回は、確かめに来た。


「今回も、無理だと思ったら、すぐ戻ります」


「うん」


カナの返事は変わらない。短く、迷いがない。


浅い層を抜けると、空気が少し変わる。鳴き声が減り、代わりに気配だけが残る。


見られている。


エンは小球を浮かせたまま歩いた。


やがて、前に見覚えのある空間が現れる。


開けた場所。


そして――。


「ゴギャ」


低い声。


岩陰からゴブリンが現れる。二体、三体。距離を保ち、すぐには動かない。


エンは大球を取り出した。


今度は先に置く。


背後へ回り込める通路を塞ぐ位置。


ゴブリンたちの動きが一瞬止まった。


(……ここまではいい)


小球をゆっくり動かす。


ゴブリンが下がる。


だが、それ以上は動かない。


逃げない。


誘われない。


そして奥から、あの影が現れた。


ホブゴブリン。


前回と同じ個体だ。剣と盾を持ち、ゆっくりと前へ出てくる。


低い声で何かを発すると、周囲のゴブリンが位置を変えた。


だが今回は、散らない。


一定の距離を保ったまま、止まる。


「……動かない」


エンは小さく呟いた。


小球を横から回す。


避けられる。


だが、追えない。


追おうとすると、別の個体が前に出る。


形が崩れる。


ホブゴブリンは前に出てこない。ただ、こちらの動きを見ている。


(……違う)


前回よりも分かる。


球を警戒しているわけじゃない。


安全な場所から動かない。


それだけだ。


エンは小球を止めた。


すると、ゴブリンたちも動かない。


睨み合いが続く。


時間だけが過ぎていく。


「……だめですね」


エンが小さく言った。


「うん」


カナもすぐに頷く。


戦えないわけではない。だが、このままでは崩れない。


主導権がこちらにない。


それがはっきり分かった。


エンは小球を戻し、大球を回収する。


背を向けても、追撃はない。


ただ視線だけがついてくる。




安全な距離まで戻ったところで、エンは大きく息を吐いた。


「……前より分かりました」


「何が?」


「俺たち、動かしてるつもりでしたけど」


言葉を探す。


「動かされてました」


カナは少しだけ考えてから頷いた。


「うん」


短い肯定だった。


「安全な場所にいさせられてた」


エンは思い返す。


球を動かすたびに、相手は危なくない位置へ下がっていた。


そしてその位置から、崩れなかった。


「……じゃあ」


エンは小さく笑う。


「次は逆ですね」


「うん」


カナもわずかに笑った。


「動く場所を、こっちが決める」


その言葉で、ようやく形が見えた気がした。


今までは、相手を追っていた。


これからは違う。


逃げる先を、先に決める。


穿穴の洞の出口が見えてくる。


まだ勝ててはいない。


だが、負けている感じもなかった。


次にここへ来るときは、きっと違う形になる。


エンはそう確信していた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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