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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第16話 違う戦い方

毎日17:30投稿

穿穴の洞の入口には、いつもより人が多かった。


F級に挑戦する冒険者は多いが、今日は妙に賑やかだ。


装備を整える音や、仲間同士の声が重なっている。


「……混んでますね」


エンが言うと、カナは軽く周囲を見渡した。


「時間がいいのかも」


そんな話をしていると、不意に聞き覚えのある声がした。


「エン?」


振り返ると、レオが立っていた。


以前と同じ剣を背負い、すでに準備を終えている様子だ。


「久しぶりだな。まだ穿穴の洞か?」


「あぁ。もう少し慣れようと思って」


「そうか」


レオは頷いたが、その視線は一瞬だけエンの鉄球に向いた。


「……無理してないならいいけどな」


心配するような口調は、以前と変わらない。


「大丈夫。危ない動きはしてないから」


そう答えると、レオは少しだけ笑った。


「それならいい。F級は焦ったやつから怪我するからな」


仲間に呼ばれ、レオは先にダンジョンへ入っていった。


エンはその背中を見送りながら、小さく息を吐く。


「ちゃんと冒険者って感じですね」


「うん」


カナは短く答えた。


「正面から戦う人」


その言葉に、エンは少し考える。


確かにそうだ。剣を振り、敵を倒して進む。それが普通の冒険者なのだろう。


自分たちは少し違う。




ダンジョンに入ってしばらく進んだ頃だった。


前方から、戦闘音が聞こえてきた。


金属がぶつかる音。短い叫び声。


「……誰か戦ってますね」


「うん。近い」


二人は足を止め、少し離れた位置から様子を窺った。


開けた場所で、別のパーティがゴブリンの群れと戦っている。


剣士が前に出て、盾役が攻撃を受け止め、後ろから魔法が飛ぶ。


正面から押し合う戦い。


「……すごいですね」


エンは素直に呟いた。


速い。強い。分かりやすい。


だが同時に、危うさも感じた。ゴブリンが横へ回るたびに、隊列が崩れかけている。


「危ないですね」


「うん」


カナは短く言った。


「数が増えたら押される」


そのとき、別方向からゴブリンが現れた。


パーティの一人が慌てて対応に向かう。


大きな問題にはならなかったが、動きが乱れる。


エンは無意識に考えていた。


(あそこに大球を置けば……)


進路が一つ減る。


横に回られない。


だが、それは自分たちの戦い方だ。


「……行きましょう」


エンは小さく言った。


「うん」


二人は戦闘に近づかず、その場を離れる。


少し奥で、ゴブリンが二体現れた。


エンはいつも通り、大球を先に置く。


背後の通路を制限する。


小球を動かす。


ゴブリンが避ける。


逃げる方向は、もう決まっている。


短い音が響き、一体が倒れる。


もう一体はすぐに撤退した。


戦闘はあっけなく終わった。


エンは球を戻しながら、さっきの戦闘を思い出す。


「……やっぱり、違いますね」


「何が?」


「戦い方」


エンは少し考えながら言った。


「俺たち、敵と戦ってる感じがあんまりしないです」


カナは少しだけ笑った。


「戦ってないわけじゃないんだけどね」


「はい。でも……」


言葉を探す。


「近づかれる前に終わってるというか」


剣で斬るわけでもない。力で押すわけでもない。


ただ、危なくならない形を作っている。


「俺のスキル、普通の戦いじゃないんですね」


ぽつりとこぼれた言葉だった。


カナは少しだけ考えてから頷く。


「そうよ。今更?」


否定しない。


特別だとも言わない。


ただ事実として。


エンは小さく笑った。


不遇スキルだと思っていた。


今でも強いとは思っていない。


でも。


「……これでいいのかもしれません」


球を浮かせながら、そう呟く。


穿穴の洞の奥は、まだ暗い。


けれど、自分たちの進み方は、もう迷っていなかった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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