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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第15話 流れを作る

毎日17:30投稿

ゴブリンを一体倒してから、数日が経っていた。


穿穴の洞に入る足取りは、以前よりも少しだけ軽い。


まだまだ慣れたわけではない。だが、何をすれば危なくならないかが分かってきた。


エンは小球を浮かせたまま、前方を見据える。


「……前より、近いですね」


「うん」


カナが頷く。


ゴブリンの距離の取り方が変わっていた。以前は遠巻きに様子を見ていたのに、今は一定の距離まで近づいてくる。


警戒はしているが、逃げきれると分かっている動きだ。


「試されてる感じですね」


「たぶん」


カナは周囲を見回した。


「数も増えてる」


岩陰の向こう、低い鳴き声が重なる。


今回は三体。


エンはすぐに小球を動かさなかった。


代わりに、大球を取り出す。


通路の中央より少し奥。完全には塞がない位置に置く。


ゴブリンたちが止まる。


進むか、下がるか、判断を迷っている。


(……ここまでは、いつも通り)


エンは小さく息を吐き、小球をゆっくり動かした。


一体が避ける。


もう一体が横へ回る。


だがその先には、大球がある。


進めない。


「ゴギャ」


短い鳴き声。位置を変えようとする。


エンは追わない。


ただ、小球を動かして距離を詰める。


ゴブリンが下がる。


さらに下がる。


「……あ」


エンは気づいた。


自分が追い込んでいるのではない。


相手が、安全だと思う方向に動いている。


そしてその先に、逃げ場がない。


小球をもう一度転がす。


ゴブリンが壁際へ寄る。


動きが止まった。


鈍い音が響く。


一体が崩れ落ちた。


残りの二体はすぐに距離を取り、奥へ逃げていく。


追わない。


エンは球を戻し、ゆっくりと息を吐いた。


---


「……今の戦い」


エンが言いかけると、カナが先に口を開いた。


「ちゃんと追い込んでたね」


「はい」


自分でも驚いていた。


当てようとしたわけではない。ただ、危なくない位置を保っていただけだ。


結果として、相手の動きが限られていった。


「倒すっていうより……」


「流れを作ってる」


カナの言葉に、エンは頷く。


まさにそれだった。


球を当てることが目的じゃない。


動きの流れを決めている。




帰り道、エンは考え込んでいた。


「俺のスキルって……」


言葉を探す。


「やっぱり、変ですよね」


「今さら?」


カナが少し笑う。


「最初から普通じゃないと思ってたけど」


「いや、そういう意味じゃなくて」


エンは頭をかいた。


「強いっていうより……戦い方が違うというか」


剣士のように斬るわけでもない。魔法のように撃ち抜くわけでもない。


敵を倒す前に、動きを変えている。


「珍しいのは分かってましたけど」


エンは小さく息を吐く。


「こういう使い方になるとは思ってなかったです」


カナは少しだけ考えてから言った。


「でも、合ってると思う」


「合ってますか?」


「うん」


迷いのない声だった。


「無理してないから」


その言葉に、エンは少しだけ肩の力が抜けた。


確かにそうだった。


力で勝とうとしているわけではない。できることを積み重ねているだけだ。


穿穴の洞の出口が見えてくる。


まだ奥には行っていない。


だが、焦る気持ちはなかった。


「……もう少し、このやり方で行ってみます」


「うん」


カナは頷いた。


二人の戦い方は、ようやく形になり始めていた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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