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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第14話 はじめての一体

毎日17:30投稿

穿穴の洞に入ると、空気の重さが少しだけ違って感じられた。


奥へ行くつもりはない。今日は浅い層で、今まで試してきた動きを確かめるだけだ。


「無理はしません」


「うん」


カナは短く答える。


言葉にしなくても、考えていることは同じだった。


戦うことより、形を崩さないこと。危なくならないこと。


それがF級で一番大事だと、もう分かっている。


少し進んだところで、岩陰から影が動いた。


「……来ます」


ケイブゴブリンが一体。


棍棒を持ち、こちらを警戒している。すぐには近づかない。距離を測るように、左右へ小さく動く。


エンは小球を浮かせた。


だが、すぐには動かさない。


相手も待っているからだ。


「もう一体、右」


カナが小さく言う。


視線だけを動かすと、確かに岩柱の影にもう一つ気配がある。


挟まれる位置ではない。


だが、放っておけば横に回られる。


エンは袋から大球を取り出し、通路の端に置いた。


それだけで、空間が変わる。


横へ抜ける道が一つ減る。


「……ゴギャ」


ゴブリンが鳴いた。


様子が変わる。前に出るか、下がるか、迷っている。


エンは小球をゆっくりと動かした。


転がすというより、押し出すように。


ゴブリンが一歩引く。


その瞬間、もう一体が横から出ようとする。


だが、大球の位置を見て止まった。


動きが揃わない。


「今」


カナの声。


エンは小球の速度を少しだけ上げた。


ゴブリンは避けようと横へ跳ぶ。


だが逃げた先は、通路の壁際だった。


足場が狭い。


もう一度、小球を戻して送り出す。


今度は避けきれなかった。


鈍い音が響く。


ゴブリンの体が崩れ、動きが止まった。


静寂。


エンはしばらく動けなかった。


「……倒した?」


「うん」


カナが静かに答える。


「倒してる」


残っていたもう一体は、短く鳴き声を上げて奥へ逃げていった。


追わない。


エンは小球をゆっくりと戻し、息を吐いた。


「……初めてですね」


「うん」


カナも頷く。


転石の洞では、倒すこと自体に迷いはなかった。だが今回は違う。


相手が避け、考え、逃げようとしていた。


それでも、形を作って倒した。


「……当てた、って感じじゃないです」


エンは地面を見ながら言う。


「逃げた場所に、いたというか」


「そうだね」


カナは少しだけ笑った。


「相手を動かしたんだと思う」


その言葉に、エンは頷いた。


力で押し切ったわけではない。


ただ、動ける場所を減らしただけだ。


それでも結果は同じだった。




帰り道。


エンは何度も、さっきの動きを思い返していた。


「……なんか、変な感じです」


「何が?」


「嬉しいんですけど」


少し言葉を探す。


「勝った、っていうより……上手くいった、って感じで」


カナは少し考えてから言った。


「それでいいんじゃない?」


エンは小さく笑った。


たぶん、そうなのだろう。


F級の戦いは、きっとこういうものだ。


球を浮かせながら、エンはもう一度だけ振り返る。


穿穴の洞の奥は、相変わらず暗いままだった。


だが、もう怖いとは思わなかった。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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