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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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第12話 安全な場所

毎日17:30投稿

穿穴の洞の中は、相変わらず静かだった。


足音が石の床に反響する。


転石の洞よりも平坦な通路は歩きやすいが、細かく分かれた通路は隠れる場所も多い。


「……いますね」


エンが小さく言う。


岩柱の向こう側、かすかに動く影が見えた。


「ゴギャ」


短い鳴き声。


すぐに別の場所からも返事がある。


「二体……いや、三体」


カナが数える。


エンは小球を浮かせた。


以前なら、そのまま転がしていたところだが、今回はすぐには動かさない。


様子を見る。


すると、ゴブリンたちも動かなかった。


距離を保ち、こちらの出方を待っている。


「……来ないですね」


「うん」


カナは周囲を見回していた。


「たぶん、横からも来る」


言われて気づく。


背後の通路は開けている。もし回り込まれたら、挟まれる位置だった。


エンは小さく息を吐き、袋から大球を取り出した。


「先に置きます」


「うん」


通路の端。背後へ回り込める余地が少ない場所に、大球を静かに置く。


それだけで、空間が変わった。


背後からは攻められない。


前を見るだけでよくなる。


「……あ」


自然と肩の力が抜ける。


小球を前に出す。


ゴブリンが動いた。だが、今度は一方向からしか来ない。


横に回ろうとした個体が、大球の位置を見て止まる。


「ゴギャ」


短く鳴き、位置を変える。


「……減った」


エンが呟く。


「考えることが?」


「はい」


カナは小さく頷いた。


「危ない場所が減ったから」


エンは小球を転がす。


正面に集中できる。


避けられても、無理に追う必要がない。


横に回れば、大球が進路を制限する。


ゴブリンは距離を取り直し、やがて奥へ下がっていった。


戦闘らしい戦闘にはならなかった。


だが、追い詰められる感覚もなかった。




少し進んだ先で、今度は四体の群れと遭遇した。


左右に分かれて動く。


「来ます」


エンはすぐに大球を通路の中央寄りに置いた。


完全に塞ぐわけではない。だが、横移動の幅が狭くなる。


ゴブリンたちは一度止まり、互いに鳴き声を交わした。


迷っている。


その隙に、小球を低く転がす。


一体が避ける。もう一体が後退する。


動きが揃わない。


「……ばらけた」


カナが言う。


エンは頷き、小球を戻す。無理に追わない。


危険な形にならなければ、それでいい。


しばらくして、ゴブリンたちは撤退した。


追撃はしない。




ダンジョンの出口へ向かう途中、エンはふと口を開いた。


「前より、楽です」


「うん」


「倒せているわけではないですけど」


不思議だった。


以前は、当てることばかり考えていた。今は、当てなくても危険が減っている。


カナは少し考えてから言った。


「安全な場所を作ってるからじゃない?」


「安全な場所……」


「全部に勝たなくていいでしょ」


当たり前のような言葉だった。


だが、エンには新鮮だった。


確かに、全部倒す必要はない。危なくなければ、それでいい。


今までの戦い方は、敵を止めることだった。


今は違う。


「……先に、安全を作る」


口に出してみる。


しっくりきた。


球を動かす前に、場所を決める。


そうすれば、戦いは難しくならない。


エンは小球をゆっくりと浮かせ直した。


「なんか、分かってきました」


「よかった」


カナはいつも通りの調子で言う。


特別なことではない、というように。


だがエンには、確かに一歩進んだ感覚があった。


穿穴の洞の出口が見えてくる。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

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もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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