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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
3章:流れを繋ぐ者たち

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第107話 出発準備

毎日20時投稿

C級昇格が決まってから、ギルドの見え方が少しだけ変わった。


特別扱いされるわけではない。


だが、すれ違う冒険者の視線が違う。


声をかけられることも増えた。


「もう出るんだって?」


「次の街か。気をつけろよ」


そんな言葉を何度か受ける。


エンはまだ少し慣れなかった。


「……なんか、不思議ですね」


ギルドを出ながら言う。


「何が?」


カナが振り向く。


「前まで、全然話しかけられなかったのに」


「そりゃC級だからね」


あっさりした返事だった。


「立場が変わったってこと」


ノアも静かに頷く。


「期待されています」




カナの作業場に戻ると、いつもの匂いがした。


鉄と油と、少し焦げた金属の匂い。


ここに集まるのが、いつの間にか当たり前になっていた。


「……ここも、片付けないとだね」


カナが周囲を見回す。


壁際には未使用の素材。


作業台の上には途中まで加工された金属。


この街で過ごした時間が、そのまま残っている。


「全部持っていくんですか?」


「持ってけるもんだけ」


カナは笑う。


「向こう行ったら、また揃えればいいし」


言い方は軽いが、少しだけ名残惜しそうだった。


エンは棚に置かれた球を見た。


小球、大球、そして巨大球。


最初にここで作ってもらった時のことを思い出す。


ただの鉄の球だった。


それが今では、戦いの中心になっている。


「……ここから始まったんですね」


「ん?」


「いえ。なんでもないです」


少し照れくさくなって、視線を逸らす。


ノアは槍を確認していた。


カナが作った予備の短槍が、壁際にまとめて置かれている。


「これ、全部持っていきます」


「もちろん」


カナが頷く。


「どうせすぐ折るんだから」


「……否定できません」


珍しくノアが少しだけ苦笑した。




夕方、買い出しの帰り道。


ギルドの前で、見覚えのある姿が手を上げた。


「よう」


ジンだった。


「準備、進んでるか?」


「まあね」


カナが答える。


「そっちもでしょ」


「ああ」


ジンは頷く。


「ラインエッジも、数日中には出る」


同じだった。


この街では、もう次に進めない。


「次の街でまた会うかもな」


ジンが言う。


「かもしれないね」


エンが答える。


競うような空気はない。


ただ、同じ方向へ進んでいく者同士の距離だった。


「じゃあな」


ジンはそれだけ言って去っていく。


背中を見送りながら、カナが小さく笑う。


「いいライバルできたじゃん」


「……そうですね」


エンも頷いた。




作業場に戻ると、日が沈みかけていた。


窓から入る光が、並べられた球を赤く照らしている。


ここでの時間は、もうすぐ終わる。


だが、不思議と寂しさはなかった。


流れは止まっていない。


ただ、次へ進むだけだ。


「明日で大体終わりかな」


カナが言う。


「はい」


「準備できてます」


ノアも答える。


三人はしばらく、何も言わずに作業場を眺めていた。


G級から始まった冒険。


F級、E級、D級。


気づけば、ここまで来ていた。


そして次は――C級。


新しい街、新しいダンジョン。


新しい流れが、もうすぐ始まる。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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