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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
3章:流れを繋ぐ者たち

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第104話 帰還報告

毎日20時投稿

ギルドへ戻ったとき、入口の空気がいつもと違っていた。


昼間だというのに人が多い。


受付前には何人もの冒険者が集まり、ざわざわと落ち着かない声が飛び交っている。


「……なんか、騒がしいですね」


エンが小さく言う。


「そりゃそうでしょ」


カナが肩をすくめた。


「今日は撤退したパーティも多いはずだし」


ノアも周囲を見渡す。


「報告が集中しています」


フロウラインが受付へ向かう途中で、何人かの冒険者がこちらを振り返った。


「あ……」


「あいつらだ」


小さな声が聞こえる。


だが敵意はない。


むしろ安堵に近い視線だった。




「お帰りなさい」


受付嬢がほっとした顔を見せる。


「無事で何よりです。奥の異常について、報告をお願いできますか?」


「はい」


エンが頷く。


横では、ほぼ同じタイミングでジンのパーティも戻ってきていた。


「……そっちも無事か」


ジンが軽く手を上げる。


「なんとか」


カナが答える。


互いに大きな怪我はない。


だが疲労は隠せなかった。




報告はすぐに奥の部屋で行われた。


フロウラインとジンのパーティ、そしてギルド職員数名。


テーブルの上に簡易地図が広げられる。


「寄生型……ですか」


職員が難しい顔をする。


「はい。核のようなものがありました」


エンが説明する。


「周囲のモンスターに魔力を流していました」


ジンも補足する。


「倒しても減らなかったのは、そのせいだと思います」


報告を聞いていた職員が、静かに息を吐いた。


「……D級では確認例がありません」


部屋の空気が少し重くなる。


「本来はC級以上のダンジョンで報告される存在です」


カナが眉を上げる。


「じゃあ、なんでここに?」


「分かりません」


職員は首を振った。


「ですが……今回、奥まで到達できたパーティはほぼいません」


多くが途中で撤退していた。


前線はすでに崩れかけていたのだ。


「つまり」


別の職員が静かに言う。


「あなた方が止めなければ、被害は拡大していた可能性が高い、ということです」


エンは少し困った顔をした。


「……たまたま、近くにいただけです」


「それでもです」


はっきりと言われる。




報告が終わり、部屋を出る。


外の空気が少し軽く感じた。


「なんか、大事になってきましたね」


エンが苦笑する。


「まあね」


カナはあっさり答えた。


「実際、大事だったんでしょ」


ノアも静かに頷く。


「撤退していた人、多かったです」


少し離れた場所で、ジンが仲間と話していた。


視線が合う。


「……助かった」


短く言う。


「こっちも」


カナが手を振る。


それ以上は言わない。


同じ前線にいた者同士の、簡単なやり取りだった。




ギルド二階。


窓際から、その様子を見下ろしている人物がいた。


ギルドマスターだった。


「……予想より被害が少なく済んだな」


静かに呟く。


机の上には、複数の報告書が並んでいる。


撤退したパーティの証言。


前線が維持された時間。


生還者の数。


どれも一致していた。


「戦闘を止めなかったパーティが二つ」


フロウライン。


そして、ジンのパーティ。


戦い方は違う。


だがどちらも、崩れなかった。


「D級の枠には、もう収まらんか」


ギルドマスターは小さく笑う。


昇格は、戦闘力だけで決めるものではない。


今回の件は明確だった。


状況を変えた者。


前線を支えた者。


それはすでに、中堅冒険者の仕事だった。


窓の外では、エンたちが何気ない会話をしながらギルドを出ていく。


まだ、自分たちがどんな評価を受け始めているのかも知らずに。


だが流れは、確実に変わっていた。


次に呼ばれる時。


それは、D級としてではない。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

★★★★★評価・ブックマークで応援していただけると嬉しいです。


本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の別作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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