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スキル【球術】の俺は、均形鍛冶の少女とダンジョンを攻略する  作者: 昼ライス
1章:球術のはじまり

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10/107

第10話 穿穴の洞

新連載です。

10話まで一挙に公開します。


毎日17:30投稿

F級ダンジョン――穿穴の洞は、転石の洞よりも街から少し離れた場所にあった。


入口の前には、すでに何組かの冒険者が集まっている。


装備の雰囲気も、G級とは少し違って見えた。


盾や防具がしっかりしていて、準備に時間をかけているのが分かる。


「……人、多いですね」


エンが小声で言うと、カナは周囲を見渡した。


「F級は新人の壁だからね。ここで慣れる人が多い。辞めていく人もね」


そう言っている間にも、別のパーティがダンジョンへ入っていく。


少しだけ、空気が違う。


転石の洞にあった気楽さが、ここにはない。


「エン?」


後ろから声がした。


振り返ると、見覚えのある顔が立っていた。


「……レオ?」


幼い頃からの知り合い。少し日焼けした顔に、見慣れた剣を背負っている。


「やっぱりエンか。こんなところで何してるんだよ」


「何してるって……冒険者だけど」


「いや、それは分かるけど」


レオの視線が、エンの手元に向く。袋から覗く鉄球を見て、少しだけ眉を上げた。


「……それ、本当に武器なのか?」


「まあ、そんな感じです」


曖昧に答えると、レオは小さく息を吐いた。


「確かエンのスキルって球術、だったよな。無理してないか?」


責める口調ではない。ただ純粋に心配している声だった。


「大丈夫だよ。G級は一通り回ったんだし」


「……そうか」


少し意外そうな顔をする。


そのとき、レオの後ろから仲間らしい冒険者が声をかけた。


「レオ、そろそろ行くぞ」


「ああ、今行く」


レオは一度エンを見てから言う。


「F級は、G級と違う。無理だと思ったらすぐ戻れよ」


「うん」


「帰還石、ケチるなよ。怪我するやつは大体それだから」


経験者の言葉だった。


それだけ言うと、レオは仲間の方へ戻っていった。


エンはその背中を少しだけ見送る。


「……一歩先って感じね」


カナが静かに言った。


「はい」


「ちゃんと生き残ってる佇まいをしてたわ」


エンは頷き、穿穴の洞の入口へ目を向ける。


「じゃあ、俺たちも行きましょうか」


「うん。最初は様子見」


確認し合い、二人はダンジョンへ足を踏み入れた。




中に入った瞬間、違いはすぐに分かった。


通路は似ている。岩の壁、薄暗い光。


だが、床は平坦な場所が多く、転石の洞のような自然な傾斜が少ない。


「……転がりにくい」


「うん」


カナも同意する。


「掘られてる感じね。自然洞じゃない」


確かに、壁には削られたような跡が残っている。


誰かが作ったような、不自然な通路だった。


少し進んだところで、物音がした。


低い声。


「……ゴギャ」


岩陰から、小柄な人影が現れた。


背丈はエンの腰ほど。七十センチほどしかない、小柄な亜人。


緑色の皮膚に、粗末な布を巻きつけ、短い棍棒を握っている。


子どもほどの大きさだが、その目だけは獣のように鋭かった。


「ゴブリン……」


エンが小さく呟く。


相手はすぐに突っ込んではこなかった。


距離を取り、こちらを観察している。


もう一体、後ろから現れる。


何かを伝えるように鳴き声を上げた。


「……見てる」


カナが言う。


エンは小球を浮かせた。いつも通り、転がす。


だが。


ゴブリンは一歩横に動き、あっさり避けた。


「え?」


球はそのまま壁に当たる。


戻そうとした瞬間、別の個体が横から近づいてくる。


「右!」


カナの声。


エンは慌てて球の軌道を変える。


ゴブリンはすぐに距離を取り、再び岩陰へ隠れた。


追ってこない。


ただ、様子を見ている。


「……今までと違いますね」


「うん。考えてる」


カナは冷静だった。


「突っ込んでこない」


エンは小さく息を吐いた。


球を当てるだけではだめだ。


相手は、それを待っている。


しばらく睨み合いが続いたあと、ゴブリンたちは鳴き声を上げながら奥へ引いていった。


深追いはしない。


エンも球を戻した。


「……なんか、勝った感じしないですね」


「たぶん、それでいい」


カナが言う。


「F級は、そういう場所なんだと思う」


倒せるかどうかではなく、どう動くか。


その意味を、エンは少しだけ理解した気がした。




ダンジョンから戻ったあと。


ギルドの受付で採取した薬草の換金を終え、二人が立ち去るのを、少し離れた場所から見ている人物がいた。


「……あの球使い」


低く呟く。


ギルドマスターだった。


受付が首を傾げる。


「何か問題でも?」


「いや」


ギルドマスターは腕を組み、入口へ向かうエンの背中を見る。


「問題はない」


しばらく黙ったあと、小さく続けた。


「むしろ、逆だな」


その言葉の意味を、受付は理解しなかった。


だがギルドマスターの視線だけが、静かに二人を追っていた。


いつもありがとうございます。


面白いと思っていただけたら、

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本作は毎日更新中です。

明日もお待ちしています。


作者の新作です。

現代日本×ヒーローSF

 「魂融合機兵ヴェスパー《HIVE-01》」

蜂型の機兵が侵略者と戦う物語です。

もしよろしければこちらも読んでいただけると嬉しいです。

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