表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第4章 世界大戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
412/415

第412話 リリスの部屋にて7

「さて、ムビ様。貴族になるにあたり、大切なことを決めなければなりません」


「大切なこと?」


「はい。家としての事業です」


「事業、かぁ……」


 貴族といえば立派な屋敷、執事やメイド、場合によっては私兵まで抱える。

 当然、それらを維持するには収入源が必要となる。


「俺、『Mtube』の収益と『四星の絆』のプロデューサーとしての収入、それから冒険者活動の報酬があるんだけど、それじゃあダメかな?」


「ダメではありませんが、貴族の事業は公共性がある方が好まれます。家の事業が、どう国の発展に寄与しているか、がポイントになります。それに、代々子孫に継承できるかどうかも重要です」


 ムビは腕を組んで悩む。


 娯楽産業は公共性が薄い。

 冒険者活動は公共性がなくもないが、個人の資質に依存するし、家業として継げるかと言われれば微妙だ。


「そこで、私からの提案です。アクアミスリルの油田事業は、ムビ様の私営といたしませんか?」


「えっ、いいの!?」


 今回の海洋資源調査の中でも目玉となる最大の発見。

 世界でも類を見ない、魔油の五倍のエネルギー効率を持つ超希少資源。

 こんなものを所有してしまえば……。


「で、でもさ……さすがに悪いよ。だって、埋蔵量も凄いんだよ? 取り尽くすには何百年もかかるような巨大油田なのに……」


「だから良いのではありませんか。公共性、持続性、収益性、希少性……全てにおいて完璧です。ムビ様のスピード出世は間違いないでしょう」


「いや、俺別に、貴族の出世とか興味ないし……」


 手を振るムビに、リリスが笑顔で迫る。


「ムビ様? 貴族の爵位は上から順に、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵です。爵位の審査は非常に厳格です。ムビ様は男爵から始まりますが、通常爵位を一つ上げるのに三代かかると言われています。こうでもしなければ、スピード出世は難しいのですよ?」


「いや、だから俺、出世に興味は……」


「ムビ様?」


 リリスの笑顔には、なぜか有無を言わさぬ圧があった。


「これは私の計画の一部なのです。受け取ってください。否———受け取らないと許しません」


「えっ、そんなに!?」


 リリスのことだ。

 自分には思い至らぬ深淵謀略があるのだろうと、ムビは判断した。


「ありがとう……なら、申し訳ないけどいただくね?」


「ふふふ。気にする必要はありません。元々、ムビ様が発見したものですから」




 ◆ ◆ ◆




 ムビが帰ったあと、部屋にはリリスとリンだけが残った。


「よろしいのですか、リリス様?」


 テーブルの茶器を片付けながら、リンが話しかけた。


「もちろんです。ムビ様にはぜひ、私の婿候補になっていただかなければ。公爵が基本ラインですが、侯爵でもギリギリ———」


「そのことではありません」


 リンは語気を強め、憂う瞳を向けた。


「第三王子の件です。ムビさんに相談しなくてもよろしいのですか?」


 リリスはカップを持ち、紅茶に視線を落とした。


「相談して……どうしろと?」


「彼ならば、何か解決策を見出してくれるかもしれません! リリス様を救ってくださる可能性が———」


 しかし、リリスは紅茶を飲み干し、平然と言い放った。


「そのような些事、わざわざムビ様のお耳に入れる必要はありません」


「ですが、このままでは……!」


 リンは食い下がるが、リリスは聞き入れようとしない。


「少々豚に懐かれている、ただそれだけの話です。さて、そろそろ仕事に戻らなければ———」


 立ち上がろうとした瞬間、リリスはふらりと体のバランスを崩した。


「リリス様!」


 リンが駆け寄り、倒れかけたリリスを抱きとめる。


「……あぁ、ありがとう、リン。ふふ、少々寝不足のようですね……」


「もう一週間もお眠りになっていないのでは!? 今日はもう休みましょう! このままでは、お体を壊してしまいます!」


 リリスはリンに寄りかかりながらも、一笑に付した。


「大丈夫。今は大事な時期ですから。ここで頑張っておけば、継承争いが優位に———」


「ならばせめて、今夜は別の部屋で寝ましょう! そうすればゆっくり休めるはずです!」


「何を言っているのですか、リン。そんな見え透いた逃げ方をすれば、お兄様の怒りを買うだけです」


 肩を借りながら自力で立ち上がったリリスは、リンに微笑んだ。


「なぁに、タダで抱かれて差し上げるものですか。増税をいくつか先送りにしてみせます。……私のことよりも、リン。変な気を起こしてはいけませんよ? お兄様がいる間は、決して部屋に近寄ってはなりません。あなたまで狙われてはたまりませんから」


 そう言い残し、リリスは部屋を出て行った。


 静まり返った室内で、リンはただ立ち尽くした。

 自分の無力さを噛み締めることしかできなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ