表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第4章 世界大戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
408/414

第408話 リリスの部屋にて3

 項垂れるムビを、『四星の絆』とリリスがテーブルを囲んで見守っていた。

 王女やアイドルたちも一緒になって、ムビの悩みに頭を抱えている。


「うーん……どうしたものでしょうねぇ」


 海底の魔物が強すぎて、鉄製のパイプでは噛み砕かれてしまう。

 レベル数百の魔物の攻撃に耐えるには、オリハルコンやアダマンタイト級の鉱物が必要だ。しかし、そんな希少金属を千メートル超えのパイプに使えるはずもない。


 重い空気の中、サヨがぽつりと呟いた。


「ムビさん。要は海底から地上へ魔油を運べれば良いのですよね? でしたら……転移魔法はどうでしょうか?」


 ムビは勢いよく顔を上げ、目を見開いた。


「転移魔法……その手があったか!」


 ルリがおろおろと二人の顔を見比べる。


「え、えっと……どういうこと?」


「つまり、こういうことですわ」


 サヨはシャンパンのボトルを手に取りながら説明した。


「この中身を魔油だと考えてください。栓を抜けば自噴しますよね? その注ぎ口全体を転移魔法陣で覆い、転移先の魔法陣を地上に設置するのです。すると、シャンパン……いえ、魔油がそのまま転移されるはずですわ」


 ルリは膝を打った。


「なるほど! それならパイプなんて作らなくていいじゃん! サヨちゃん天才!」


「でも問題は魔法陣ですよ。触れた物すべてを転移させる魔法陣なんて、高度すぎて俺でも使えない……」


 顎に手を当てるムビに、サヨが微笑む。


「大丈夫ですわ。術式なら、私が教えて差し上げます」


 全員が驚いた。


「えっ、サヨさん術式知ってるんですか!?」


「はい。私の魔力では術式の展開は不可能ですが、ムビさんならば可能だと思います」


 ムビは一瞬笑顔になったが、しかしすぐに眉を寄せた。


「でも、永続的に魔法陣を展開させ続けなければなりません。さすがに俺の魔力でも一日はもたない気が……」


「確かにそうですわね。ならば、直接触れる魔油から、魔法陣展開に必要な魔力を吸収する術式も組み込みましょう」


 ムビは目を見開き、そしてゆっくりと笑みを浮かべた。


「さすがサヨさん! お願いします、ぜひ教えてください!」


「はい。明日、早速お教えしますわ」


 そのやり取りを見ていたリリスが、くすりと笑う。


「どうやら問題は解決したようですね。転移先は魔油貯蔵用の地下タンクが良いでしょう。位置情報はムビ様に送っておきます」


「ねぇねぇムビ君、私たちにも何かできることない?」


 ユリが身を乗り出す。


「そうですね……海底はものすごく危険な場所なので、俺一人で行きます。しばらくは海底の調査が続くと思うので、皆さんはアイドル活動を復帰してください」


「えぇっ!? そんな、悪いよ!」


「そうですよ! ムビさんにだけ仕事をやらせるわけには……!」


 ユリとシノが慌てるが、ムビは笑って首を振る。


「いえいえ、ファンを長く待たせてしまっていますし、そろそろ再開しないと。S級冒険者就任直後ですし、復帰すればきっと大歓迎ですよ。これはプロデューサーとしてのお願いです」


『四星の絆』メンバーはしばらく腕を組んで考える。


「……分かりました。ムビさんには悪いですが、お言葉に甘えます」


「いえ、何も悪くないですよ? 俺も皆さんの復帰をすごく待ち望んでいたんですから。あっ、プロデューサーのタスクはちゃんとやっておきますからね?……それでいいよね、リリス?」


 ムビが視線を向けると、リリスは優雅に頷いた。


「もちろんです。元々、そういう契約ですしね。アイドル活動は、自由になさってください」


「……だそうです! ほら、『四星の絆』、復活ですよ! 皆で乾杯しましょう♪」


 ムビの音頭に、ユリは手をわなわな震わせた。


「……ありがとう、ムビ君! よっしゃー、『四星の絆』復活だぁー!」


 ユリの叫びが響き、そのまま6人は長らく談笑した。




 ◆ ◆ ◆




「いやぁー、楽しかったぁ!」


「いよいよ始まるって感じですね!」


 時刻は午後11時。


 ムビと『四星の絆』は笑いながら夜の庭園を歩いていた。


「ねぇねぇ皆! ところでさ、このまま三次会行かない?」


「おぉ、いいねぇ! 久々に全員集まったことだしね♪」


「よっしゃー、朝まで飲むぞー♪」


 楽しげに去っていく五人を、リリスは自室の窓から静かに見つめていた。


「リリス様。今日は珍しく遅くまで客人がいらっしゃいましたね」


 メイドのリンが片付けを終えて声をかける。

 リリスは庭園を眺めながら微笑んだ。


「リン。いいものですね……何でも話せる仲というのは」


 リンは驚いたように目を丸くする。

 いつもより、主の纏う空気が柔らかい。


「左様でございますか」


「えぇ。今まで誰にも打ち明けられなかった悩みを共有できて、胸が軽くなりました。友達とは、こういうものなのでしょうね。あの方々とは、主従ではなく……友達になりたいものです」


 リンはスカートの裾をキュッと握り、静かに頭を下げた。


「では、明日の朝食の際にお呼びします。おやすみなさいませ、リリス様」


「ええ。おやすみなさい、リン」


 リンが部屋を出ていく。

 リリスは椅子に身を預け、天井を見上げた。


 今日は本当に素晴らしい一日だった。

 これからが楽しみで仕方ない。

 久々に、ぐっすり眠れそうだ。


 ———コンコン。


 そのとき、ドアがノックされた。

 リリスはふと、ドアを眺める。


 こんな時間に誰だろう?

 リンが忘れ物でもしたのだろうか。


 そう思いながらドアを開ける。


「はいはい。どうしまし———」


「リリたーん、こんばんはー♪」


 ドアの隙間から、第三王子チャゴラスのニヤついた顔が覗いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ