第407話 リリスの部屋にて2
リリスの説明は続く。
「だから父上は、兄上の愚行のすべてに目を瞑っています。もし悪評でも立てば、言いふらした者は即刻死刑でしょうね。だから誰も兄上には逆らえないのです」
王族内部の腐敗を聞き、ムビと『四星の絆』は息を呑んだ。
「そして、次が重要です。王位は先代王が崩御した時点で、最も“実績”を残した王族が継ぎます。その実績は、担当省庁での成果によって決まります」
リリスはスマホを操作し、王族の担当省庁一覧を表示した。
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第一王子:陸軍省(S)、空軍省(S)
第二王子:海軍省(S)、経済産業省(A)
第三王子:財務省(S)、公安省(A)
第四王子:外務省(A)、総務省(B)、厚生労働省(B)
第五王子:国土交通省(C)、文部科学省(C)、農林水産省(C)
第六王女:法務省(D)、環境省(D)
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「このSとかAって何ですか?」
「各省庁の重要度です。S、A、B、C、Dの順です。より上位の担当程、国への貢献度が高いとみなされます」
Sランクの担当は、第一王子~第三王子で占められている。
一方、第六王女であるリリスはまだDランクの担当のみ。
「戦時中は陸海空軍が圧倒的に強く、Sランク。そしてそれに匹敵するのが、国家予算の決定権を持つ財務省です。私は、少しでも上位の担当を奪わなければなりません」
「今リリス様は、Dランクが二つか……滅茶苦茶不利ですね……」
表を見ながら、ユリがリリスに質問する。
「ってことは、Sランクを複数担当している、第一王子が最有力なんですか?」
「いえ、そうとも言えません。何故なら、帝国との戦争は連戦連敗。せっかく影響度の高い担当とはいえ、これでは評価はいまひとつです。一方、第三王子チャゴラスの財務省担当としての評価はピカイチです」
「えっ!? そんな、なんでですか!? だって、チャゴラス様って全然仕事してないんでしょう!?」
リリスはため息をつく。
「その通り。あの豚は無能そのもので、部下に仕事を丸投げ、事務次官の名前すらろくに覚えていません。私欲のために税率を上げるくらいで、むしろ国にとっては害悪そのものです。ですが、財務省ではそれが高評価に繋がるのです」
「どういうことですか?」
ユリが首を傾げる。
「例えば去年、インボイス制度が導入されました。売上1000万円以下の弱小事業者からも消費税を徴収する制度です。得られる税収はたった2500億円。雀の涙ほどの税収のために経済にダメージを与える愚策ですが、財務省では高評価。なぜなら“国民の首を絞めるほど評価が上がる”という、『両面宿儺』が作った狂った基準があるからです」
「えぇっ!? そんなの、皆困っちゃうだけじゃないですか!?」
「その通り。かつて世界一だったクローディア王国が衰退した原因はここにあります。だから私が財務省をチャゴラス兄様から奪い、評価基準を変えなければならないのです」
リリスの瞳が静かに燃えていた。
「社会保障の充実を謳いながら、消費税が上がる度に法人税が下がる地獄。インボイスの税収2500億円も、すべてお兄様の酒池肉林に消えました」
「えぇーっ!? そうなんですか!?」
普段聞かされない国の闇を知って、ユリは驚いた。
「ええ。国民の血税で飲む酒は、さぞ美味かったことでしょうね」
「任せてください! 私たちが必ず、リリス様を偉くしてみせます! で、これからどうするんですか!?」
ユリのまっすぐな眼差しに、リリスは微笑む。
「まずは現在ムビ様にお願いしている、海底資源の発掘を完遂します。油田を実用化できれば、輸入に100%依存している我が国のエネルギー事情に革命が起こります。もし輸入分を賄えれば、経済規模にしておよそ15兆円。これだけでGDP数%分の改善です。この功績があれば、第二王子から経済産業省の担当を奪えるでしょう」
「経済産業省、か……Aランクの省庁は大きいですね!」
声を弾ませるユリ。
しかし、リリスは首を振る。
「いいえ。魔油の採掘に成功すれば、その予算規模からSランク相当の評価を得るでしょう。さらに、輸出による外貨獲得まで発展すれば……SSランク、国の最重要省庁の評価を得る可能性もあります」
サヨが椅子に深くもたれ掛かりながらワインのグラスを回した。
「なるほど……。そうなれば、国の歳出と歳入に大きく貢献できる。すなわち、財務省にも大きな貸しを作れる。その実績をもって、財務省の担当も狙おうという腹ですか」
リリスがサヨに微笑む。
「その通りです。そうなれば、私の担当はSSランクとSランク。どうです? 王位継承するのは私でしょう?」
「ふあーっ、すごい! 夢のある話だーっ♪」
目を輝かせる女性陣に対し、ムビは項垂れていた。
「責任重大だ……」
ユリがムビの背中をバシバシと叩く。
「大丈夫♪ ムビくんがやるなら成功したも同然だって! あーっ、楽しみだなぁーっ♪」
「そんな簡単じゃないんですよ……。パイプが魔物に食いちぎられちゃうし、海上まで魔油を運ぶ方法がなかなか確立しなくて……」




