第404話 S級冒険者就任パーティ
1ヶ月後。
王城のパーティ会場は多くの要人で賑わっていた。
『四星の絆』の全員が退院し、S級冒険者入りの祝賀会が開催されていた。
「『四星の絆』の皆さん、お初にお目にかかります。私、メガバンク頭取の———」
「あはは、どうも」
退院したばかりのユリ、シノ、ルリ、サヨは最前列の主賓席に座り、貴族や社長らに囲まれていた。
料理に手を付ける暇もない。
「おぉ、さすがは『四星の絆』。画面越しで見る以上の美貌ですな。いかがでしょう? 我が息子が縁談の相手を探しておりまして———」
「あはは、ごめんなさい。まだそういう話を受けるつもりはなくて……」
縁談もひっきりなしに舞い込む。
音楽の催しが始まり、一旦着席を促され、4人はようやく椅子に座った。
「はぁー! ようやくご飯が食べれるー!」
ユリが椅子にもたれながらため息をついた。
「手のひら返しがすごいですね。あんなに嫌われてたのに」
「これがS級冒険者になるってことかな?」
「私たちにかけられていた容疑も晴れたみたいですしね」
2ヶ月間入院していた4人にとって、久方ぶりの御馳走。
音楽の演奏などには目もくれず、目の前の前菜に集中した。
「それにしても、ムビ君はまだかなー?」
4人の視線が、自然とテーブルの空席にうつる。
本来ムビが座っているはずなのだが。
「S級クエストに行くと言ったっきり、1ヶ月ぶりだもんね」
「それにしても、こんな日に遅刻だなんて」
急いで向かっているとのメッセージが1時間前に来ていた。
そろそろ着く頃だが。
「……あっ! 来たっ!」
扉が開かれ、ムビがちょうど入ってくるところだった。
「皆さん、お待たせしました!」
ペコペコ謝りながらムビが席に座る。
「ムビくーん、遅いよーっ!」
「ごめんなさい! 採掘作業に集中しちゃってて……! 海面に出たらちょうどパーティ開始時刻で……」
頬を膨らませていた4人が目を見開く。
「えっ!? ムビ君、さっきまで海にいたの!?」
「はい。1000キロぐらい飛んできて、シャワー浴びて、すぐに来ました」
「それもう音速出てんじゃん……」
ルリが呆れてため息をついた。
「まぁでも、久しぶりムビ君! S級クエスト、どんな感じ!?」
「いやぁ……それが大変で……」
ムビが話し始めようとしたそのとき、テーブルに近付く影があった。
「私も、ぜひ伺いたいです」
漆黒のドレスを身に纏ったリリスだった。
途端にサヨが冷笑し、テーブルの空気がピリつく。
「あら? 私たちを病院送りにした張本人が、何の用ですか?」
「ふふ、そんなに警戒されなくて大丈夫ですよ?」
笑顔で火花を散らす2人を見て、シノがなだめる。
「まぁまぁ。リリス様も何度もお見舞いに来てくださいましたし、いいじゃないですかサヨ。それに、ムビさんの呪いを解くためだったわけですし……」
「私はまだ許してはいませんよ? ミラが来なければ、全員殺されていましたからね」
殺気立つサヨにリリスは目を細める。
「そうおっしゃると思いました。あっ、そうだ。私、現在法務省を担当しておりまして。最初の仕事に、サヨ様のお父様を釈放しましたよ?」
「……えっ」
サヨは目を見開いた。
「冤罪をかけられていたんでしょう? まぁ、正確には現在手続き中ですが、あと数日もすれば牢獄から出られます。あなたには大きな借りがありますからね。これで許してくれとは言いませんが、もう敵意はないと伝われば嬉しいです」
ニコリと微笑むリリスは、テーブルの料理に目を向ける。
「さぁさ、演奏ももうすぐ終わりますよ? 今のうちに食べないと。ムビ様も、まだ何も食べられていないでしょう?」
「あっ、そうですね……!」
ムビと『四星の絆』の4人は、急いで料理を食べ始めた。
「食べながらでいいです。ムビ様、依頼の方はどうですか?」
リリスは前菜を頬張るムビに尋ねる。
「うん。実は、魔油の方は掘り出すところまでは成功してて……」
「えっ!? ムビ君、もう掘っちゃったの!?」
ユリが感心しながら前菜を食べ終わり、パンとスープに手を伸ばす。
「はい。普通に掘ると崩れて埋もれちゃうから、地属性魔法で補強しながら。で、自噴してくれるようになったので、パイプを通したんですけど……」
「パイプって……どこから持ってきたの?」
「あはは、自分で作りました。鉄製で、1000メートルぐらいの」
「ひえー、相変わらず無茶苦茶だね……」
ルリは既に3品目の魚料理に手を付けている。
「ただ、問題はそこからで。一旦海上まで汲み上げたんですけど、次の日には止まってて。調べたら、パイプが魔物に齧られて穴が開いてたんですよ」
「ひえー!? 鉄製なのに!?」
サヨがワインのグラスを傾けながら静かに呟く。
「魔油は高濃度の魔力を帯びているので、魔物に狙われても不思議じゃありませんわね」
「そうなんだ。あの辺の魔物、滅茶苦茶強くて鉄ぐらいじゃ全然ダメみたいで。色々試してるんだけど、まだいい素材が見つからないんだよねぇ」
「オリハルコンかアダマンタイト級の硬度が必要でしょうか? しかし、そんな希少素材で長大なパイプが作れるわけありませんし……」
6人がS級クエストについてあれこれ話していると、音楽の演奏が終わった。
「あっ! まだ食べ終わってないのに!」
拍手が鳴りやむと同時に人々は席を立ち、移動を始める。
「くそーっ! ギリギリまでかき込んで……!」
そのとき、『四星の絆』のテーブルに近付く小男がいた。
「おぉーっ! 本物の『四星の絆』じゃんっ♪」
その姿に、『四星の絆』全員が驚く。
「チャ……チャゴラス様!?」
息を呑む4人を見て、ムビが隣のシノにこっそり尋ねる。
「えっと……誰でしょうか? 偉い人?」
シノは信じられないという顔をして急いで耳打ちする。
「ム、ムビさん、知らないんですか? 第三王子、チャゴラス様ですよ!」
「えぇっ!? 第三王子様!?」




