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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第4章 世界大戦

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403/414

第403話 報告会

 翌日の昼下がり、ムビは調査の報告をするため、リリスの部屋のテーブルに座っていた。

 リリスは仕事で少々遅れるとのこと。


 部屋にはリリスの専属メイドのリンが、直立不動で立っていた。


「あ……リンさん、お久しぶりです。元気でしたか……?」


 リンとの会話は剣の手合わせをして以来。

 あのときは自信満々のリンに、ムビが瞬殺で勝利した。


 なんとなく嫌われている気がして、ムビは苦笑しながら挨拶をした。

 声をかけられたリンは、不機嫌そうにムビを睨んだ。


「なんですか? 一昨日姫様とお話ししたばかりでしょう? こんな頻繁に何の用ですか?」


 ゴミを見るような視線。怒気を込めた声色。

 やはり、あまり好かれていないようだ。


「リリス様はあなたと違い、大変お忙しいご身分です。細かいことでいちいち、リリス様の時間を奪わないでください。専属のS級冒険者になったからって、少し調子に乗ってるんじゃないですか?」


 リンの説教が始まり、ムビは冷や汗をかいた。


「そもそもS級冒険者とは、王族の従者なのです。ならば従者としての、最低限の振る舞いがあります。それなのに、あなたときたら……なんですか、その服装は? 友達の家じゃないんですよ? それに、そのへらへらした態度。もう少しシャキッとしたらどうなんですか?」


 詰め寄られ、あまりの圧にムビは思わず後ずさりする。


「いいですか? あなたはまだ何の役にも立たないド新人なんですよ? ならばせめて、態度だけでも正すのが従者としての務めでしょう? それから言うまでもありませんが———私はあなたの大・先・輩です。これまでは客人扱いでしたが、これからは姫様の従者として、厳しく指導しますからね? 覚悟してください」


 そのとき、リリスが部屋に入ってきた。


「お待たせしました、ムビ様。仕事が立て込んでて……ごめんなさい」


「あっ、ううん! 全然大丈夫だよ、リリス———」


 リリスに背を向けながら、リンが般若のような顔でムビを睨みつけていた。


「———様。本日はお忙しい中、私のような使いっ走りの新人のために、貴重なお時間をいただき申し訳ありません」


 平服するムビに、リリスは首を傾げる。


「どうしたのですか、ムビ様?」


「いえ、従者としてあるべき振る舞いをと思いまして……」


 リリスは一瞬リンを見て、呆れたように鼻を鳴らす。


「ムビ様? 私とムビ様の仲ではありませんか。そんなに畏まられたら、かえって寂しいですわ。それに、私にとってムビ様への依頼は最優先事項。どんな些細なことでも、遠慮なくお話しください」


 ムビはゆっくりと視線を上げた。

 右側には、女神のように微笑むリリス。

 左側には、親でも殺されたような顔のリン。


 かなり悩んだ末、主の言に従うことにした。


「……ありがとう。それじゃあ早速なんだけど、例の依頼について話したいことがあって……」


「ええ、伺いますわ」


 リリスは席に座る。

 と同時にリンが動き、テーブルには一瞬で紅茶とお菓子が並べられた。


(はやっ……!?)


 誇らしい表情のリンと目が合う。

 従者とはかくありき、とでも言いたげな顔だった。


 リリスは紅茶を口に含んで一息つく。


「それで、お話というのは?」


「ああ、うん。こんなことで呼んで申し訳ないんだけど……魔油の在り処を特定したから、一応連絡をと思って……ははは、まだ掘り出してもいないのに、時間取らせてごめんね……?」


 ムビは申し訳なくて顔を伏せて話したが、リリスからの返答がない。


(あれ……? もしかして下らな過ぎて、怒っちゃったかな……?)


 恐る恐る顔を上げると、リリスとリンは目を見開いて固まっていた。


「……ムビ様? その……依頼を出したのは一昨日ですが……もう魔油の在り処を……?」


 リリスの右腕はカップを持ったまま宙に浮いていた。


「うん。ここなんだけど……」


 ムビがハンドカメラを開くとホログラムが現れ、詳細な海域と油層までの断面図が描かれた。


「じゅ、10キロの地下に……? ムビ様、よく探知が届きましたね……?」


「うん。頑張れば、100キロぐらいは探知できるから。それから、もう一つ気になることがあって……」


 ムビが動画を再生すると、海底調査中のムビの視覚が早送りで再現された。

 しばらくすると、リンが息を呑んだ。


「こ、この魔物は……!?」


「んー、よく分からないですけど、多分クラーケンかな? だいぶ手強かったですよ」


 ホログラムでは、ちょうどムビがクラーケンにトドメを刺すところだった。


「……私も文献でしか見たことがありませんが、クラーケンっぽいですね。まさか、実在したとは……。ムビ様、よく勝てましたね?」


 息を呑むリリス。


「いやぁ、リリスに剣を教えてもらったんだから、これくらいできて当然だよ、ははは———」


 ムビの笑いが途切れた。

 クラーケン以上の殺気が、リンから放たれていた。


(あれ……? なんかまずいこと言ったかな……?)


 ムビは慌てて話を続けた。


「で、なんか地面から湧いてる液体を見つけたから、持って来たんだ。これなんだけど……」


 ムビはボール状の岩をテーブルに置いた。

 上部を割ると、中には輝く液体が入っていた。


「こ、これは……まさか、ミスリル……!?」


「うん、そうみたい。深海8000メートルで自噴してたんだけど……」


 リリスは岩のボールを手に取り、まじまじと液体を見つめる。

 ボールを持つ手が、微かに震えていた。


「ムビ様……これは、大発見ですよ。ミスリルのエネルギー効率は、魔油の数倍です……。こんなものが流通したら、市場がひっくり返ります……」


「えっ? そうなの……?」


 ムビはようやく、自分がとんでもない発見をした事実に気付き始めた。


「ムビ様、この液体をいただいても? 詳しく調査させます」


「あぁ、うん。もちろんだよ」


「ありがとうございます。リン、これを後で運んで」


 ボールを手渡されたリンは、液体を見ながら顔面蒼白でカタカタ震えていた。


「ムビ様……本当に、あなたが私の専属冒険者で良かったです。これは、クローディアの国家予算を全て費やしても、到底なし得ない偉業です」


 ムビは笑った。


「またまたー、そんなことないって」


 リンが睨むのでなんとかお茶を濁したいムビだったが、かえって圧が高まる。


「いえ、絶対に無理です。あぁそうでした、依頼の報酬を……。油層を2ヶ所見つけていただいたので、借金を200億円引いておきますね」


「ほんとー!? ありがとう!」


 ムビの顔が輝いた。

 これで借金は、残り2200億円。


「今後は、一旦この2ヶ所の油層の実用化を優先してください。よろしくお願いしますね?」


「うん、分かった! 進展があったら、また報告するね!」


 喜ぶムビを見て、リンは肩を震わせ、恨めしそうな顔をしていた。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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