表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第4章 世界大戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
398/416

第398話 リリスの問答2

「え……そんな理由で?」


「はい。借金を返そうなんて国は、世界で唯一、我がクローディア王国のみです」


 ムビは苦笑した。


「いやいや、そんなわけないでしょう? さすがに返さなくていい借金なんてあるわけ……」


 リリスはおもむろに立ち上がり、本棚に手を伸ばした。


「ムビ様、この資料は見たことありますか?」


 開かれたページには、国の歳出予算が円グラフで書かれていた。


「もちろん知ってるよ? 借金返済に、予算の25%が使われているんでしょ? これさえなければと、どれだけ思ったことか……」


「ふふ。確かにこの分を他の予算に回せたら、多くの問題が解決するでしょうね。さて、次の表は、他国の歳出予算です」


 開かれたページには、他国の6つの円グラフが並んでいた。

 ムビは目を見開いた。


「あれ……!? 借金返済の予算が、どこにもない……!?」


 全ての予算が社会保障費、防衛費、交付金などに使われている。


「ね? 言ったでしょう。普通の国は、自国の借金なんて返そうとしないんです。ちなみに、借金の額自体は、どの国もクローディアより上ですよ?」


 リリスが開いたページには、他国の借金額。

 帝国が図抜けて多く、他の国もクローディアより借金額が多かった。


「でも、歳入予算にはしっかり赤字国債が入ってますよ?」


 次の見開きには歳入予算の円グラフ。

 どの国も、クローディアと変わらず借金を予算に組み込んでる。


「ズルい! なにこれ、インチキじゃん!?」


 リリスは笑った。


「インチキではなくて、これが普通なのです」


「クローディアもやめようよ!? 税金ゼロにできるんじゃない?」


 しかし、リリスは首を振った。


「残念ながら、我が国には60年償還ルールというものがあり、60年で必ず赤字国債を返済しなければなりません」


「なんでそんなルールが……!?」


「財政健全化を実現するためです。まぁ、財政健全化なんて普通は占領国ぐらいしか目標にしませんが」


 リリスは本を閉じ、座って紅茶を飲む。


「中にはGDP比の借金額を重視する者もいますが、全く無意味な指標です。仮に意味があったとして、財政健全化を進める前のクローディア国は、ただの一度も100%を超えていません。それが年々悪化し、現在では400%。まぁ、当たり前ですよね。GDPが一生上がらないのですから。財政健全化こそが指標悪化の原因だというのに」


 皮肉めいた笑みを浮かべながら、リリスはカップを眺めていた。


「ねぇ……リリスが教えてあげた方がいいんじゃない? こんなの、すぐに止めた方が……」


「もちろん、お父様には何度も進言しました。しかし、全く取り合っていただけません」


「ど、どうして?」


「お父様は財務省の言葉を鵜呑みにしています。まぁ、財務大臣は『両面宿儺』の手先なのですが」


 ムビは息を呑む。


「え……それ、本当!?」


「はい。恐らくは代々、財務省には相当数の『両面宿儺』の手先が送り込まれています。財政法も『財政健全化を目標にする』の一文が加えられ、省内での評価も、財政健全化を推し進めるほど上がる仕組みになっています。つまり、税金を上げるほど出世するわけです」


 リリスの視線がゆっくりとムビへ向く。


「ムビ様。人類史上、最も多くの人間を殺したものは何かご存知ですか?」


 ムビはしばし考える。


「やっぱり、魔王軍? それか、帝国軍とか……?」


 リリスはニッコリと笑う。


「残念。答えは『消費税』です」


「えっ……? 消費税って、あの……?」


「ええ。わが国で15%に設定されている、あれです。あれはどんな兵器よりも、どんな魔法よりも人を殺します」


 リリスからほんの僅かに殺気が漏れる。


「元々1億5000万人の人口を誇った我が国は、消費税が導入されて以降、数百年で人口1500万人にまで減少しました。失われた命、本来生まれるはずだった命は、一体何十億人になることやら……」


 口元は笑っているが、目は一切笑っていなかった。


「……どうにかできないのかな?」


「方法はあります。私が、王族内での発言力を強めれば良いのです」


 リリスは殺気を抑えるように、紅茶を飲み干し一息ついた。


「15歳を超えた王族は、専属のS級冒険者を持ち、国内の政治に参加できます。そしてその手腕が認められ、国に貢献する成果を挙げれば、より重要な省庁の担当に任命されます。……その成果には、もちろん専属のS級冒険者が挙げたものも含まれます」


 リリスの瞳に、ムビへの期待が込められていく。


「財務省は最も重要な省庁。現在、第三王子がその実権を握っています。この実権を奪うため、ムビ様には比類なき成果を挙げていただきたいのです」


「な、なるほど……。そういうわけか……」


 聞いたことがある。

 王族が持つS級冒険者は、権力争いの道具に使われると。


 王族の評価は、王族自身の資質が半分、そしてもう半分はS級冒険者の能力で決まる。

 最も成果を挙げ、家臣や民から信頼と評価を得た王族が、次代の王になるのだと。


「私はクローディアの王になります。そして、この国を滅びの運命から救います。まだ何の成果も挙げていない小娘ですが、数年以内に王位争いの筆頭に成り上がって見せます。……協力していただけますね?」


 差し出された手を、ムビは掴んだ。


「もちろんだよ。で、何をすればいいの?」


 リリスの口角が上がっていく。


「ふふふ……。では、最初の依頼をお伝えしますね?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ