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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第388話 ムビとリゼ7

 リゼは結局、夕方までムビの屋敷に居座り、夜はそのまま外食に連れ出された。


 最近不安定だったメンタルは完全に復活したようで、ムビは終始からかわれっぱなしだった。


「でさ、新しく作るパーティなんだけど」


 王都の夜景を見下ろす高層レストラン。

 ワインを揺らしながら、リゼが何気なく切り出した。


「今のところ、私とあんたとマリーが確定なんだけど。あと1人足りないのよねぇ」


「だから、俺は入らないって!」


 ムビは頬を膨らませて反発した。

 しかし、リゼはニヤニヤ笑う。


「なによ、あんたまだ照れてんの? いい加減素直になりなさいよね?」


「照れてない! それに俺はS級の依頼があるから、そっちにはあんまり顔出せないよ?」


「いいわよそれで。Aランクまではあんた抜きでも余裕だし。あんたはたまに来てくれればいいの♪」


 Aランクパーティの平均レベルは80~90。

 リゼとマリーはレベル600を超える。

 どんな依頼も、おつかい感覚で完遂するだろう。


「というかリゼ、冒険者をやる意味ってあるの? もう十分強いし、お金だってあるでしょう?」


 リゼはスープをくるくる回しながら、少しだけ視線を落とした。


「まぁそうなんだけど、あの暮らしを維持するためにも、まとまった収入が必要なのよ。『Mtube』の影響力もバカにならないしね。……それに元々、あんたとパーティ組みたかったし」


 ムビが首を傾げる。


「別に俺じゃなくても良くない?」


「何言ってるのよ? あんた以外に誰が『Mtube』の動画を編集するのよ?」


 ムビは目を細くした。


「……また全部俺に丸投げ?」


「あったりまえじゃない♪ いや、前と違って、ちゃんと報酬は出すわよ?『白銀の獅子』時代、あんたがどれだけ最高の仕事してたか、さすがに今なら分かるし。1本当たり、100万でどう?」


「ひゃ、100万円!?」


 ムビは思わず叫んだ。

 一般的な相場の数倍の額だ。

 ちなみに『白銀の獅子』時代は、動画1本当たり1000円だった。


「あんたの動画にはそれくらいの価値があるでしょ? それに、『白銀の獅子』時代にピンハネしてた分も込みでね」


 リゼはゆっくりとスープを飲んだ。


「いや、あれはゼルが決めた報酬だし、別にリゼが負担する必要ないよ?」


「なに言ってるのよ? 私だってパーティ会議で承認してたし、その額で十分って思ってたもの。責任の一端は間違いなくあるわ。とにかく、もうあんたに失礼は働きたくないの」


 ムビはちょっと感動した。

 散々バカにし続けてきたあのリゼが、ここまで言うなんて。


「ありがとうリゼ。そんな気持ちがあるなら、俺もっと安くていいよ。なんなら無料でも……」


 しかし、リゼは呆れ顔をした。


「あんたねぇ、そんなんだから悪い奴に騙されるのよ? それに、借金はどうするのよ? 背に腹は変えられないはずでしょ?」


 ムビはうっ、と息が詰まった。


「新しいパーティでは、毎日『Mtube』に動画を投稿するつもりよ。あんたがうちのパーティに入ってくれるなら、毎日動画編集の依頼を出すわ。毎日100万円だから、月収3000万円は保証する。どう、美味しくない?」


 正直、この提案はかなり美味しい。

 ムビなら10秒もあれば動画を制作できる。


 ムビの数千億の借金の原因、『四星の絆』のコンサート会場の維持費ぐらいなら賄える。


「……分かった。俺、パーティに加入するよ」


 ムビの返答に、リゼは満面の笑みを浮かべた。


「ふふ、よろしくね?」


 テーブル越しに、ムビとリゼは握手する。


「さて、話を戻すけど、前衛があと1人足りないのよね。あんた、誰か心当たりない?」


「前衛かぁ……」


 ムビはワインを口に含み、国内の冒険者たちの顔を思い浮かべる。


「ソロで有名なギュスタフとかどう? 臨界者になったって話だし」


 しかし、リゼは苦い顔をする。


「嫌よ。言っとくけど、男を入れるつもりはないわ。何されるか分かったもんじゃないし」


 確かに、血気盛んな冒険者の大半は、サキュバスであるリゼの色香に耐えられないだろう。

『剛腕巨人』のようなトラブルに発展しかねない。


(とはいえ、前衛なんて血気盛んな男ばっかりなんだよなぁ……)


 リゼやマリーの実力に釣り合う女性の前衛なんて、それこそ『四星の絆』か『エヴァンジェリン』くらいしか思いつかない。


「じゃあさ、うちのユリさんかシノさんは?」


「それも嫌。なんで敵を迎えなきゃいけないのよ?」


 リゼはガルルと唸る。

 最適解を提示したつもりだったムビは、何が不合格だったのか分からなかった。


「敵ってなに? 同じパーティに入れば味方じゃん?」


「うっさいわね! 敵は敵なの!」


 しばらく問答が続いたが、リゼの意志は鉄のように固かった。




 ◆ ◆ ◆




「じゃあまたね、ムビ♪ 分身体くん、エスコートよろしくね?」


 食事も終わり、リゼはムビの分身体の腕を抱きながら、鼻歌交じりに帰っていった。


 今度の分身体は、ムビのパラメータの1割を振っている。

 リゼに襲われる心配はもうないだろう。


 結局4人目のメンバーは決まらなかった。


「どこかに良い冒険者はいないかなぁ……」


 夜風に呟きながら、ムビは家路についた。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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