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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第385話 ムビとリゼ4

 空腹に耐えるリゼは、潤んだ瞳でムビを見つめていた。

 その表情は、まるで数日間食事を与えられなかった小動物が、飼い主に助けを求めるようだった。


「ねぇムビ、知ってる? サキュバスってさ、本当は禁忌指定級のポテンシャルを秘めた魔物なんだって。でも、野生下ではDランクの力しか有していない。なぜだか分かる?」


「えっと……栄養が足りない、とか……?」


 リゼはかすかに笑った。


「惜しい。ちょっとニュアンスが違うかな。サキュバスに必要な精液の摂取量は、自身の強さに比例するの。そして相手のレベルが高いほど、お腹が満たされる……」


「つまり……強すぎるサキュバスは、普通の人からじゃ必要量を補えないってこと?」


「その通り。野生のサキュバスはせいぜいレベル10程度。レベル1の一般人が相手でも、一晩あれば空腹を満たすことができる。でも、私のレベルは600。相手のレベルは最低でも60は欲しい。昨日みたいにレベル35の相手なら、複数人から一晩中摂取する必要があるの」


 ムビは眉を寄せた。


 レベル60といえば、冒険者ならBランク上位。

 だが先日のS級選抜大会で、Bランク以上の冒険者は多くが命を落とした。

 王都の冒険者でリゼの空腹を満たせるのは、せいぜい十数人といったところだろう。


 クローディア国軍の騎士ならば、レベル60以上の者はもっといるかもしれない。

 だが、それだけ有力な騎士ならば、恐らくは前線で戦っている可能性が高い。


 残るはレベルドーピングした、ろくな噂を聞かない王族や財閥のお偉いさん方。

 99%は変態のオッサンや老人だろう。


 つまり、リゼのレベルはサキュバスとして生きていく上では、あまりにも致命的というわけだ。


「ねぇ、ムビ。あんた、魔物を人間に戻す方法……知らないかな? あんたなら、もしかしてと思って」


 ムビはしばらく考える。

 だが、そんな方法は聞いたこともない。


「ごめん、リゼ。全然心当たりがなくて……」


「そっか……。あんたでもダメなら、人間に戻るのは無理そうね……」


 リゼの目が虚ろになっていく。

 リゼにとっては、恐らくムビが最後の希望だったのだろう。


「ねぇ、ムビ。あんたがこのまま帰ったら、私がこの後どうなるか……教えてあげるね?」


 微かに笑っているが、声が震えていた。


「私は多分正気を失って、その辺の男と誰彼構わず寝ると思う。次に意識が戻るのはいつになるか分からない。見ず知らずの変態に一晩中遊ばれた後なのか、それとも変な契約でも結ばされた後なのか……」


 嘘や誇張ではない。リゼの様子がそれを物語っていた。


「あんたには今まで、たくさん助けてもらった。だからこれ以上、あんたにお願いするのは気が引けるんだけど……。無理にとは言わないの。……本当に、あんたさえ良ければなんだけど……」


 リゼは潤んだ瞳でムビを見上げた。


「……あんたのせーし、私にくれないかな……?」


 一瞬の静寂の後、言葉を理解したムビは、顔を真っ赤にした。


「えっ……、えぇっ!? いやいや、無理だよそんなこと!?」


 ムビの返答を聞いた瞬間、リゼはポロポロと涙をこぼす。


「はは……そうだよね。ごめんね? 本当に、何言ってんだって話だよね?」


 ごしごしと、腕で涙を拭うリゼ。


「でもね……私が頼れるのは、あんたしかいないんだ。私を助けるつもりで、協力してくれないかな?」


 リゼがにじり寄り、ムビの手を握る。

 助けを求める人間の性なのか、獲物を逃がすまいとするサキュバスの性なのか、ムビには分からなかった。


「あんたのを摂取すれば、間違いなく満腹になると思うんだ。何日も正気でいられるし、暴走もしなくて済む。私のサキュバスとしての本能がそう告げてるの」


 確かに、ムビのレベルは桁が違う。

 供給すれば、リゼの飢えは確実に収まるだろう。


「で、でもさ、そんなことできないって……! きっと何か他に方法が……」


「ないよ。サキュバスは吸血鬼と同じで、専食だもん。飢えを満たす方法は、これしかないの」


 ———ぐぎゅるるるる。


 リゼのお腹の音が、静かな部屋に響いた。


「あぁ、ダメ……。なんか、涎出てきた」


 じゅるりと、リゼが涎を飲み込む。


「ムビ、あんた優しいから、私に気を遣ってるんでしょ? 私からのお願いなんだから、気を遣う必要なんてないんだよ?……ううん、違うわね。私、あんたになら……()()()()()()()()()()


 リゼの瞳が徐々に虚ろになっていく。

 言葉の端々に、色気っぽい吐息が混じる。


「だってさ。私、あんたに酷いこといっぱいしてきたじゃん? それなのに、あんたは仕返しするどころか、私を奴隷ギアスから解放してくれた」


「い、いや……それはたまたまで……」


 リゼはムビの襟を掴み、ぐっと顔を近づけた。


「私をめちゃくちゃにしていいのは、世界でただ一人……あんただけなんだよ? そのあんたから拒否られたらさぁ……私、馬鹿みたいじゃん?」


 リゼの瞳に大粒の涙が溜まる。


「むしろめちゃくちゃにしてよ? 私から受けたこれまで恨み、全部私に吐き出してよ? これからずっと、私に罪滅ぼしさせてよ……。それでやっと対等でしょ? あんたとは対等な関係でいたいの……。どんな形でもいいから、ずっと私の傍にいてよ……」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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