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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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375/429

第375話 リゼのその後

<side:リゼ>


『白銀の獅子』の内情を記者会見で暴露した翌日。

 私は、久しぶりに胸の奥まで空気が通るような、軽やかな気分で目を覚ました。


「あーっ! さいっこうー!!」


 ベッドの上で足をバタつかせる。

 こんなふうに、誰にも命令されず、好きなだけ寝て、好きなだけ伸びをする朝が戻ってくるなんて。

 ギアスに縛られていた日々を思えば、これだけで涙が出るほど幸せだ。


 キッチンに立つと、淹れたてのコーヒーの香りがふわりと広がる。

 鼻歌まじりにトーストを焼き、ベーコンと目玉焼きをフライパンでひっくり返す。

 ただの朝食なのに、自由の香りがする。


「……んんーーーっ♪ 美味しいーっ!」


 ベーコンを頬張った瞬間、肉の香ばしさが口いっぱいに広がり、幸福と共に噛み締める。


 空腹を満たしながら、コーヒーを片手にテレビを見る。

 昨日の私の暴露が相当な衝撃だったようで、どのチャンネルも話題はそれ一色だった。


 困り果てたゼルの顔が映るたび、私はニヤニヤが止まらない。


 ほんっとにざまぁ。

 ゼルのやつ、今頃どこで何をしてるのかしら?

 さっさと捕まってしまえばいいのに。


 この件に関しては、私は一方的な被害者。

 記者会見でもそれはしっかり説明したし、世間もそういう目で見てくれている。


 ただ、私にも一抹の不安があった。

 それは、"魔物に転生した事実"を伏せてしまったこと。


 魔物への転生は重罪。

 不可抗力とはいえ、明るみに出れば監視や拘束は免れない。

 だからマリーと相談し、黙っておくことにした。


 幸い、私が転生させられた魔物はサキュバス。

 羽が生えている以外、見た目は人間と何ら変わらない。

 羽も自分の意志で隠せるし、黙っておけばバレはしないだろう。


 ともかく、そんな一抹の不安はあるものの、これまでの不自由と比べれば遥かに幸せだ。

 私は食器を片付け、ソファに寝転びながら、今後の明るい未来を思ってため息をついた。


 これから何をしよう?

 ワクワクが止まらない。


 久しぶりにショッピングに行くか?

 それともスイーツ巡り?

 ネイルやオイルマッサージも捨てがたい。


 しかし、自由を手にした今———どうしてもやりたいことがある。


 プルル……


 気づけば、ムビに電話をかけていた。


 まずは、あいつにお礼しなくちゃね。

 私みたいにキュートでグラマラスな美少女からの直電なんて、あのもやしっ子には過ぎた幸運ね。

 まぁ、助けてもらったわけだし、ちょっとぐらいは喜ばせてやるか。


 しかし、どれだけ待ってもムビは電話に出なかった。


 ……あいつ、何やってんのよ?

 ひょっとして寝てんのかしら?


 何度かけ直してもムビは電話に出ない。


「はぁーっ、まったくしょうがないわね」


 私は外出の準備をする。

 メイクをバッチリ決めて、鏡を見る。


 ……やば、可愛すぎ。


 サキュバスになったせいだろうか?

 クマやシミも一切ないし、肌ツヤが増した気がする。

 思わず自分で見惚れてしまう。


 ふふ……これなら、サキュバスに転生したのも悪くないんじゃないかしら?


 私はルンルンでムビの家へ向かう。

 道行く人が、皆私に見惚れて振り返っている。


 きっと、今の私は宇宙で一番可愛いに違いない。

 そんな確信を抱きながら、ムビの家に到着する。


「ほーらムビ、起きなさーい! グッモーニン♪」


 元気よくドアをノックする。


 あいつは寝グセが酷いからな。

 あんまり酷かったら、特別に私が髪をとかしてやろうかしら?


 しかし、家の中からウンともスンとも返事はなかった。


 ……あいつ、留守なの?

 もしかして飲み歩いてるのかしら?


 まぁ、S級冒険者になったわけだ。

 あれだけの激闘を潜り抜けたわけだし、それくらい羽目を外しても仕方ない。


「はぁーっ。しょうがないわね。今日ぐらい許してやるか」


 私は踵を返し、家路についた。


 少し残念だったけど、結局その日はショッピングにオイルマッサージと、それはそれで最高の一日だった。




 ◆ ◆ ◆




 翌日。


 同じようにムビに電話するが、出ない。

 メッセージにも既読が付いていない。


 ……どうなってんのよ?

 あのスマホ中毒者が音信不通なんて、ありえないわ。


 家に向かうと———衝撃の光景が広がっていた。


「ちょっと……なによ、この人の数!?」


 マスコミとファンがムビの家を取り囲み、押し合いへし合いしている。

 どいつもこいつも、ムビを一目見ようと待ち構えている。


 ……さすがにこの中を突っ切って、ノックしには行けないわね。

 どうやらまだ不在みたいだし……。

 ったく、あいつほんとどこ行ったのよ?


「お、おい……! あれ、リゼじゃねぇか!?」


 群集が私に気付き始めた。

 さすがに、ここにいては面倒なことになりそうだ。


 私は取り囲まれる前に、足早にその場を去った。

 その後は高級ランチにスイーツ巡りにネイルと、やっぱり最高の一日だった。




 ◆ ◆ ◆




 翌日。


 温かいベッドの上で私は目覚める。

 今日もまた、自由な朝が私を迎える。


 朝日を浴びながら、背伸びした。


 さぁーて、今日は何をして———。


 ———うず。


 その日は、昨日までとは何かが違っていた。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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