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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第365話 決勝戦21

 ムビから与えられたパラメータがちょうど半分であることを確認したゼルは、競技開始線に向かって歩き出した。

 ムビもそれを見て、反対側の開始線に向かう。


 互いが開始線に立ち、視線がぶつかる。


「開始の合図は不要だな?———行くぞ、ムビ!」


 ゼルが地を蹴った瞬間、空気が裂けた。

 一瞬で距離を詰め、魔剣の一閃を叩き込む。


 ———バキイィィィッ!


 ムビが受け止めたその後方で、会場が真っ二つに割れた。


「ははは! 凄まじい力だ!」


 ゼルの連撃が続く。

 ムビが受け、躱すたびに剣圧が暴風のように吹き荒れ、観客席が崩壊していく。


「も、もうダメだ! 死んじまう!」


 会場に残っていた観客は全員、一目散に逃げだした。


「王よ! ここは危険です! お逃げください!」

「な……何をしておる! 早く余を運び出せ!」


 キィンッ!


 ゼルの剣圧が、来賓席に向かって飛んで来る。


「ひぃっ……!」


 全員が死を覚悟したそのとき。


「"零域結界(ゼロ・ドメイン)"!」


 聖女の結界が来賓席を包み込み、剣圧を弾き返した。


「で、でかした聖女よ! よくぞ余を守った!」

「流れ弾程度なら、私が皆さんをお守りします。王は、この試合を見届けてください」


 ゼルはなおも攻勢を続けていた。


「ははは! どうしたムビ! そんなものか!?」


 ゼルの斬り上げる一撃。

 ムビは受け止めるが、数十メートル上空へと吹き飛ばされる。


「もらった! "終焉の絶剣(ニルヴァーナ)"!」


 ゼルが跳躍し、空中でムビを叩き落とす。

 隕石のように落下したムビの衝撃で、石畳がすべて捲れ上がり粉砕された。


「くくく……! 見たか、ムビ。これが俺とお前の差だ!」


 着地したゼルが勝ち誇る。


「俺のスキルは『剣聖』。ステータスが五分なら、俺が負ける道理はない。お前とは生まれ持った才能が違うんだよ!」


 吠えるゼル。

 だが、ムビは瓦礫の中から平然と立ち上がる。


「なら、生まれてから得た力で、お前を倒すさ」


 ギィンッ!


 縮地で迫ったムビの一閃。

 ゼルは受け止めるが、その鋭さに目を見開く。


「なっ……!? てめぇ、どうやってそんな技を……!?」

「どうやってって、修行に決まってるじゃん」


 鍔迫り合い、互いにはじけ飛ぶ。

 壁まで吹き飛んだ両者が一瞬で接近し、フィールド中央で再び爆発が起きる。


 そのままわずか2秒の間に、数十の斬り合い。

 数万人を収容できる会場が、削り取られていく。


 2人の剣の腕は完全に互角だった。


「どういうことだ!? なぜ『剣聖』のスキルを持つ俺と渡り合える!?」


 鍔迫り合いながら、ゼルが叫んだ。


「俺の師匠は、鍛錬のみで上位剣スキル持ち以上の剣技を身に着けていた。弟子の俺でも、怠けきった『剣聖』くらいならなんとかなるさ」


 ゼルのプライドが傷つく。


「な……なめやがって! 殺してやる!」


 ゼルがムビを弾き飛ばし、距離が生まれる。


「"神聖なる灼熱(ディヴァイン・ノヴァ)"」


 後方に飛びながら、ムビが極大呪文を放つ。


「う、うおおおおっ!?」


 ゼルは炎に飲み込まれる。


「こっ……この野郎! "終焉の絶剣(ニルヴァーナ)"!」


 剣技で炎をかき消すが、決して軽くはないダメージが刻まれた。


「てめぇ……極大呪文まで……!?」

「何を驚いているんだ? 剣は俺の手数のほんの一部に過ぎない。本番はこれからだぞ?」


 ムビの周囲に無数の魔法陣が展開される。


「"星霜の氷鎖標識(アビス・エーテリアス)"。"星葬の光球(ヴァルグレイア)"。"風神の暴風(ゼファーロード)"」


 連発される魔法。

 会場は原型を保てず崩壊していく。


 矢継ぎ早に繰り出される呪文に、ゼルは徐々に削られていく。


(くそっ! 距離を取ったら一方的にやられる! 接近戦に持ち込むしか———!)


 ゼルは一気に距離を詰め、渾身の剣撃をムビに叩きこむ。


「"終焉の絶剣(ニルヴァーナ)"!」


 しかし、ムビにあっさりとパリィされる。


「なっ……!?」


 そのまま、完璧なムビのカウンター。


「ぐはぁっ!?」


 まともに喰らったゼルは、大ダメージを受け、膝をつく。


「バ、バカな!? 俺の本気の一撃を、こうも完璧に……!?」


 ムビの周囲には浮遊カメラが漂っていた。

 スローカメラによる1000分の1の体感速度。


 今のムビのパラメータをもってすれば、体への反動は全くない。

 神の反射速度を、何の対価もなく使い放題だった。


「遊びは終わりだ、ゼル。そろそろ本気で行くぞ」


 ムビが全ての手数を解放する。


「ぐああああああああっ!?」


 接近戦でも圧倒され、距離を取れば魔法の雨。

 ゼルは完全に追い詰められた。


(嘘だろ……!? この俺が……天才の俺が、手も足も出ない……だと……!?)


 集中力が切れた瞬間、魔剣を弾き飛ばされた。


「し、しまっ……!」


 ムビがガラ空きの懐へ飛び込む。


「"螺旋龍煌砲"!」


 ———ドゴオォォォオオオォォォンッ!!


 ムビの拳が腹部に直撃し、アバラが砕け散る。

 ゼルは口から血を噴き出し、壁まで吹き飛んだ。


「が……がはぁっ! く……くそ、まだだ……うっ!?……ゲホッ、ゲホッ!」


 剣を握る力すら残っていない。

 完全に勝負はついていた。


 ———ザアァァァ……。


 雨が降り始めた。

 ムビは雨に濡れながら、ゆっくりとゼルに歩み寄る。


「俺の勝ちだ、ゼル。どうだ、今の気分は?」


 ゼルは腹を押さえながら、呆然としていた。


「こ、こんなはずじゃ……」

「これが現実だ。お前の夢も、『白銀の獅子』も、もう終わりだ」


 数秒の静寂の後、ゼルが肩を震わせる。


「……ははは。俺が間違ってたっていうのかよ……」


 ゼルはムビを見上げる。

 その目に、濁りは一切なかった。


「お前、強かったんだな……」


 久しぶりに向けられたゼルの眼差しに、ムビは目を見開く。

『白銀の獅子』初期の頃の、ゼルの目。


「なぁ……答えは分かり切ってるんだが、今からでも戻らねぇか?『白銀の獅子』に……。今度こそ、最強のパーティを作りてぇんだ……」


 ゼルの瞳が徐々に虚ろになっていく。


「それはできない。俺が『白銀の獅子』に戻ることは、もう二度とない」


 ゼルが口から血を流しながら、うっすら笑う。


「はは……。俺としたことが、しくったぜ……。最高のパーティだったのに……」


 ゼルはそのまま前のめりに倒れ、ピクリとも動かなくなった。


 雨音だけが、響き続ける。


「審判。勝敗は?」


 唐突なムビの呼びかけに、来賓席で聖女の結界に守られていた審判がビクリと震えた。

 少し戸惑い、不安そうに王を見た。


「王よ……いかがなさいますか?」


 王はわなわな震えていたが、観念したように目を閉じた。


「……見ての通りじゃ。試合を終わらせろ」


 審判は息を呑み、既に原型を留めていないフィールドへ足を踏み入れた。


「決勝戦! 勝者、『四星の絆』! S級選抜大会、優勝は『四星の絆』です!!」


 音響が壊れた会場に、審判の肉声だけが響く。

 それだけ聞くと、ムビは背を向けて去って行った。


 誰もいない会場。

 拍手の代わりに、雨音だけが響き続けた。

お読みいただきありがとうございます!

これにて決勝戦終了です!


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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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面白いです! 更新無理しないでくださいね 頻度は自由に変えてもいいんですよ
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