第346話 決勝戦2
レベル100の俺が、推定レベル800のゴリ、リゼ、マリーの3人に向かって行く。
そんな状況に、観客席から笑いが起きた。
「おいおい、わざわざ3人の方に向かって行くぜwww」
「タイマンでも敵わないくせによ! 自殺行為だぜwww」
ゴリもニタニタ笑っている。
「ははは! なんだ、俺に殺されたいのか!? よーしよし♪ それなら、相手をしてやろうww」
リゼとマリーは同時に詠唱を開始した。
さすがに詠唱するか……。
仕方ない、一旦呪文の回避に専念だ。
ゴリが地面を砕きながら突進してくる。
本来スピード型ではないはずだが、レベル差が絶望的すぎて、ナズナさん並の速度が出ている。
俺はカメラでゴリを捉えながら身をひねる。
目の前数センチを、ゴリの拳が風を裂いて通過した。
「”灼熱の嵐”!」
「"聖光の五月雨"!」
リゼとマリーが呪文を放ってきた。
範囲魔法……!
回避できるか……!?
体の負担を度外視し、限界ギリギリまで速度を上げる。
全身の筋肉がねじ切れるかと思ったが、魔法の回避には成功した。
「ちっ! ちょこまか動きやがって!」
ゴリの追撃。
躱さなきゃ———と思った瞬間、足の筋肉を激痛が襲う。
い゛っ……!
回復が追いついてな———!
ゴリの拳が左腕をかすめ、俺の体は宙を舞った。
「うわああああっ!!」
地面に転がる俺を見て、ゴリがニヤリと笑う。
「へっへっへ、ようやく当たったぜ♪」
かすっただけで、左腕が折れた。
やはり戦力差は絶望的だった。
「楽しそうじゃねぇか、ゴリ♪ 俺も混ぜろよ」
背後からゼルが迫っていた。
俺は急いで立ち上がる。
と同時に、2人に挟み撃ちにされた。
前後から同時に連撃が襲ってくる。
だ、だめだ……
対処しきれな……
ドゴォッ!
ゼルの蹴りが腹部に突き刺さる。
「ぐはぁッ!!?」
地面に垂直に吹き飛び、壁へ叩きつけられた。
当たる直前に後ろに飛んで衝撃を逃がしたつもりだったが、それでもアバラが数本イカれた。
はは……、試合にすらなってない……。
観客は一方的な試合に大盛り上がりだった。
「いいぞー! そのままやってしまえーww」
視界の端で、王が手を叩いて笑っているのが見える。
立ち上がれない俺を見て、ゼルが鼻で笑う。
「へっ。軽く蹴っただけでそのザマかよ? まじで弱過ぎだろww」
「いや、俺たちが強くなり過ぎたんだじゃねぇのか、ゼル?」
ゼルとゴリは、勝ち誇ったようにニヤついている。
倒れた俺のすぐ目の前では、リゼが呪文を詠唱している。
———使うしかない、サヨさんの魔法を。
回復が半分も終わらないうちに、俺はリゼに向かって突進した。
リゼは俺の接近を見て、詠唱をやめる。
杖で殴りかかってくるが、それを躱してリゼの手首を掴んだ。
……頼む、効いてくれっ!!
バチィッ!
サヨさんの魔法を発動した。
リゼの体がビクリと跳ねる。
……お願いだ、これが効かなかったら……。
ドゴォッ!
リゼの蹴りをまともにくらい、俺は壁まで吹き飛ばされる。
リゼはダメージを受けた様子もなく、ピンピンしていた。
……はは。やっぱり、ダメだったか……。
俺は観念して、壁に背を預けた。
もう、俺にできることはない。
審判がダウンをカウントする様子はない。
ゼルが言った通り、俺を五体満足で帰すつもりはないのだろう。
きっと、このままリンチが始まる。
会場もその期待感からか、異様な熱気を帯び始める。
「はっはっは! もう動けないみたいだぞww」
「コ・ロ・セ♪ コ・ロ・セ♪」
リゼは俺に杖を向けながら呪文の詠唱を始める。
だが、その肩をゴリが掴んだ。
「へへへ、まぁ待てよ。ここからはお楽しみタイムだ♪ まずは、俺がじっくりいたぶってやるぜ♪」
ゴリはリゼを押しのけ、俺にゆっくり歩み寄る。
観客は狂ったように盛り上がった。
「げっへっへwwさぁて、お祈りの時間だぜムビ?」
ニヤつくゴリの顔を見ながら、俺は歯噛みした。
「お仲間のシノも、い~いリアクションだったぜ? あいつは気持ちよくしてやったが、お前はスペシャルフルコースだ♪ た~っぷり苦しめや??」
ゴリがパキパキと拳を鳴らす。
今すぐ飛び掛かりたい衝動に襲われるが、体が言うことを聞かない。
「死ねや、ムビ♪」
拳が振り下ろされ———
———ゴウッ!!
爆炎がゴリを包んだ。
「んぎゃああああああっ!!? あっ、あっちぃーーー!!?」
何が起きたのか理解できなかった。
目の前で、ゴリが業火に焼かれ悶え苦しんでいる。
そのままゴリは全身を黒焦げにしながら、パタリと倒れた。
その背後には、こちらに杖を向けたリゼが静かに立っていた。
杖から煙が出ている。
どうやら今の炎は、リゼの放った極大魔法だったようだ。
突然の出来事に、会場は水を打ったように静まり返っていた。
「はぁーっ。やっと、スッキリしたわ」
静寂の中、リゼのため息だけが響く。
「な、何やってんだリゼェ!? ちゃんと狙いを定めろボケがぁッ!!」
ゼルが目を剥いて怒鳴り散らし、リゼはゆっくり振り返る。
「……狙いですって? いいわ。お望み通り、定めてあげる」
ボッ!
リゼの杖から光弾が放たれる。
「うおおおっ!?」
ゼルは慌てて回避した。
後方で、壁が粉々に吹き飛んだ。
「どう? バッチリ正確でしょう?」
自信と怒りに満ちた、ゴミを見るようなリゼの冷たい瞳。
ゼルは様子がおかしくなったリゼを見ながら、肩を落として呟いた。
「な……何が起きているんだ……?」




