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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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345/347

第345話 決勝戦1

 ギィ———。


 重厚な扉が開き、広間に冷たい空気が流れ込んだ。


「お帰りなさいませ、ボス」


 ノームが跪き、恭しく頭を垂れる。


「ただいまー。いやぁ、今回は失敗しちゃったよ♪ まさかミラが来るとはねぇ。完全に誤算だったなぁ」

「そうでしたか……それは残念でした」


 ミナリィは軽い足取りで椅子に腰掛け、指先でリモコンを弾く。

 空中に巨大なスクリーンが展開し、魔導テレビの映像が鮮明に浮かび上がった。


「おぉー、やってるやってる♪ ちょうど試合が始まるとこみたいだね♪」


 画面を見つめるミナリィに、ノームが尋ねる。


「しかし、あの魔剣……。もしもムビが装備していたら、どうなっていたのですか?」

「ん? そうだねぇ。魂の一部が書き換わって、あの場で暴走してたと思う♪ 多分、会場にいた人間は皆殺しだったんじゃないかな?」


 ミナリィは菓子をつまみながら、まるで天気の話でもするように答えた。


「なるほど……恐ろしい魔剣ですね」

「でしょー? いやぁ、いい地獄絵図が撮れると思ったんだけどなぁ」


 スクリーンの中では観客たちが怒号を飛ばしている。


「あはは、見てよノーム。この罵詈雑言の嵐! ムビが私の誘惑に負けてたら、こいつら全員死んでたのにね♪ 命の恩人にこの仕打ちなんだから、無知な大衆って怖いよねー♪」


 ケラケラという無邪気な笑い声が、広間に響き渡った。




 ◆ ◆ ◆




 試合開始の合図と同時に、俺は剣を抜き、周囲にカメラを展開させた。


 推定レベル差は約8倍。

 まともにやり合えば勝ち目はない。

 だからこそ、最初からスーパースローカメラを起動する。


 しかし、『白銀の獅子』はその場から動かなかった。

 リゼとマリーも、詠唱すらしていない。

 まるで試合開始の余韻を味わっているようだった。


 ……やっぱり余裕かましてきたか。


 それもそのはず。

 はるか格下の俺1人に対し、4対1。

 油断ですらない。これは当然の態度だ。


「さぁて、どうしてやろうか」


 ゼルが舐めるような視線を向けてくる。


 俺に勝機があるとすれば———サヨさんから教わった、あの魔法。


 本当にうまくいくだろうか。

 ぶっつけ本番だが、今はこれに賭けるしかない。


「へへへ、行こうぜゼル♪」

「いや、ここは俺ひとりで十分だ」


 ゼルはゴリを制し、悠然と歩み寄ってくる。


 ……くそ、ゼルだけか。

 2人同時なら、狙える隙があったのに。


 俺はカメラでゼルを捉えつつ、じりじりと後退する。

 スローカメラを切った瞬間に動かれれば終わりだ。

 1秒たりとも気を抜けない。


「どうしたムビ? さっきまでの威勢はどこに行った?」


 ゼルは両手を広げ、挑発する。


「ほら、チャンスだぞ。俺に勝てたら、お前の勝ちにしてやってもいい」


 観客席から罵声が飛ぶ。


「ビビってんじゃねーぞムビー!」

「ゼル様ー! そんな奴やっちゃえー♪」


 ついに壁際まで追い詰められた。


 後方の3人は動かない。

 ……配置は悪いが、もう行くしかない。


 俺はゼルを迂回するように動いた。


「逃がすかよ!」


 ゼルが瞬時に目の前へ回り込む。


「ははは、鈍いなwwwまずは腕の一本でもいただこうか♪」


 ブンッ!


 ゼルの剣が閃く。

 俺は紙一重で躱した。


「なに……?」


 ゼルの目がわずかに見開かれる。

 動きを見切られるとは思っていなかったのだろう。


 スーパースローカメラと視野共有した俺の体感時間は、通常の1000倍。

 パラメータ差があっても、動きは見える。


「はは! お前のことだ、何かあるとは思ったが、やるじゃないか♪ さぁて、どこまでついて来れるかな!?」


 ゼルの連撃が襲いかかる。


 ———速い。だけど、動きは見える……!


 俺は全ての攻撃を見切り、回避する。


 ビキッ!


 筋肉が悲鳴を上げる。


 いっ……!

 か、回復魔法を……!


 俺はゼルの攻撃を回避しながら、呪文を詠唱する。


 キュルキュル、キュルキュル。


「……何だ、この音?」


 ゼルが眉をひそめる。


 1000倍の体感速度がなせる業。

 高速詠唱をも超える、超高速詠唱。


 0.1秒以内で完了する詠唱を、連続で使用する音だった。

 1秒間に数回、回復魔法を体に使用して、悲鳴を上げた筋肉を回復させる。


 これなら1000倍の体感速度を保ちながら、しばらく戦える。

 だが魔力消費が激しすぎる。

 魔力量に自信がある俺といえど、限界がある。


 しかも、ゼルはまだ本気を出していない。

 明らかに余裕がある。


 本気で動かれたら、体への負担も、回復魔法の使用量もさらに増すだろう。


 その前に———サヨさんの魔法を発動させる。


 俺は魔力回路を爆発させた。


 キュルキュルキュルキュル———!


 直後、ゼルの周囲に無数の攻撃魔法が展開される。


「う、おお……!?」


 ドドドドドドドドドドド!!


 初級魔法、数十連撃。

 ダメージは期待できないが、目くらましには十分だ。


 ゼルが怯んだ、その一瞬。


 俺は後方の3人へ向かって駆け出した。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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