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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第338話 決勝前夜

 日が暮れ、病院食が運ばれてきた。


「ほらムビ、飯じゃぞ。さっきから全然手を付けておらんではないか」


 ミラが心配そうに背中をさする。

 けれど、まったく食欲が湧いてこない。


「お主、血が足りてないんじゃ。少しでも食べて、栄養をつけねば」


 ミラはおかゆをスプーンにすくい、俺の口元へ運んだ。

 仕方なく口に含む。味はするのに、何も感じない。


「うまいか、ムビ?」


 無理に作った笑顔。

「うん……」と返すのが精一杯だった。


 胸の奥を締めつけるのは、心配と後悔。

『四星の絆』のみんなのことで気が気じゃない。

 そして、申し訳なさで押しつぶされそうだった。


 俺のせいだ……。

 俺がリリスに騙されたせいで、皆こんな目に……。


 国中からエリクサーをかき集めてでも治したい。

 だが、リリスのスキルのせいで回復効果は一切受け付けない。


 もしも、皆が死んじゃったらどうしよう……。

 蘇生魔法なんて、俺にできるだろうか……。


「ムビ。ゆっくり休んで欲しいところじゃが……明日は、どうするんじゃ?」


 時刻は19時過ぎ。

 15時間後には決勝戦が始まる。


「無理だよ……俺一人じゃ……」


 今や、『四星の絆』の中では一番のお荷物。

 レベル100の俺がのこのこ行ったところで、どうしようもない。


『白銀の獅子』は、推定レベル800が4人。

 勝負にすらならない。

 いっそ棄権した方が……。


「あーっ! あいつ、ムビじゃねぇーか!?」


 廊下から声が響いた。

 ガラの悪い男が3人、こちらを指さして燥いでいた。


「明日はどんな醜態見せてくれるんだ!?」

「お前みたいな嘘つき弱虫野郎が、ゼルに勝てるわけねぇーだろ!?」

「準決勝は尻尾巻いて逃げやがって! 女子4人におんぶに抱っこの変態野郎がよ! 今度はどうやって守ってもらうつもりなんだ??」


 ミラが立ち上がり、3人を睨みつけた。


「お前ら! 文句があるならワシが相手になるぞ!」


 男たちはせせら笑いながら去って行った。


「ムビ、あんな馬鹿共の言うことなんか気にする必要はないぞ!……あっ、そうだ! テレビでも付けるか!」


 ミラは急いでテレビのリモコンを操作する。


「明日の決勝戦は、どうなると思いますか?」


 番組の司会者がゲストに話を振る。


「やはり『白銀の獅子』の圧勝でしょうな。強さの次元が違います」

「私もそう思います。やはりリリス様の専属冒険者となるならば、高潔さと人格が求められますからね」


 口々に『白銀の獅子』への賞賛が続く。


「『四星の絆』はいかがでしょうか?」

「確かに、これまで素晴らしい戦いをしていますが、やはり『白銀の獅子』には及ばない。特にあのムビという男は、完全に足を引っ張っています」

「そうそう! 女子4人は良いんだから、あいつさえいなければ応援してやってもいいのに!」

「準決勝なんか敵前逃亡でしょ? 信じられないよね。どれだけ臆病で自分勝手なんだか」


 ミラが「しまった」という顔をする。


「えーい! うるさい!」


 ミラは歯噛みしながらリモコンのボタンを連打するが、どのチャンネルも明日の決勝戦の話題で持ちきりで、最終的にテレビを消した。

 ミラは縮こまってシュンとする。


「すまん、ムビ……」

「ううん、全然平気」

「一応言っておくが、SNSも見ない方がいいと思うぞ……」

「うん、そうだね……」


 きっと、誹謗中傷の嵐が飛び交っているのだろう。


「一応さ、準決勝の試合の様子だけ、見てもいいかな?」

「おう、いいぞ」


 ミラにスマホを渡され、2日前に行われた『四星の絆』VS『エヴァンジェリン』の試合を視聴する。


「皆、すごいな……。こんなに強くなって……」


『エヴァンジェリン』は因縁の相手。

 きっと、死に物狂いで修行したんだろう。


 せっかく皆が掴み取ってくれた決勝を、俺が台無しにして……。


「そうじゃムビ! 明日の試合、ワシが出てやろうか!?」

「無理だよ。欠員が出たときの補充は認められてるけど、ミラはもう選手で出場しちゃってるもん」

「そ、そうか……。うーむ、残念じゃ。ワシが出れば一捻りなのに」


 ミラは苦虫を噛み潰したような顔をした。

 試合を見終わり、呟く。


「明日の決勝、俺一人で出るよ」

「えっ! 一人で!? 今からでも、補充要員を探した方が……!」


 ミラの提案に、首を横に振った。


「ううん。半端な人じゃ、何人集めても白銀の獅子には勝てない。俺一人じゃ勝てないのは分かってるけど……皆が繋いでくれた決勝戦、棄権はしたくない」


 腹は決まった。

 ボコボコにされる覚悟に過ぎないかもしれないが。


「そうか……。お主がそう言うなら、ワシも止めん。じゃが、決して無理はするなよ?『白銀の獅子』はお主を目の敵にしておる。きっと、観衆の前でお主をいたぶろうとするはずじゃ。危険だと判断したら、早目に降参するんじゃぞ?」


 心配そうなミラの言葉に、俺は首を縦に振らなかった。


 脳裏に、昔の記憶が蘇る。


『白銀の獅子』で冷遇された日々。

 パーティをクビになった日。

 決闘での因縁。

 幽影鉱道での因縁。


 そして、あの———ゴミを見るような目。


 相反する二つの想い。


 絶対に勝てるわけがない。

 でも、ゼルにだけは、死んでも負けたくなかった。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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