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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第337話 英雄たちの静かな眠り

 ミラは吹き荒れる気流の中心で立ち尽くしていた。

 外套が激しくはためき、床にはミラの魔法で穿たれた巨大な穴が口を開けている。

 岩盤を貫通したその穴は底が見えず、暗闇がどこまでも続いていた。


「さぁて、終わったかのう」


 ミラがくるりと振り返ると、壁にもたれかかっていたサヨが、荒い息を吐きながらこちらを見ていた。


「相変わらずの化物っぷりですわね」


 サヨの呟きに、ミラが恐る恐る尋ねる。


「実はお主が黒幕でした……ってオチはないじゃろな?」

「大丈夫です。私は味方ですよ。私が黒幕なら、既に背後からあなたを攻撃しています。それに、あの女狐が不意打ちしたとき、あなたに警告するはずがないでしょう?」


 ミラはその説明に、ようやく肩の力を抜いた。


「しかしお主、なんでそんなにボロボロなんじゃ? 本気を出せばあの程度の相手、瞬殺じゃろ?」


 サヨは虚ろな目で微笑む。


「ふふ……。あの姿になれば、こんな脆弱な体ではすぐに死んでしまいます」

「ふーん。お主、何者なんじゃ?『両面宿儺』の手先なのか?」


 ミラが眉をひそめてサヨを見つめる。


「人間に転生した元魔物、と言っておきましょう。大丈夫、少なくとも今は人間の味方です」

「ふむ。まぁ、一旦は信用しておくか。ところで聞きたいんじゃが……ワシとお主、本気を出したらどっちが強い?」


 興味津々のミラに、サヨはふっと笑った。


「それはもちろん、私です。あなたが本気で強さを求めるなら、話は別ですが」

「そうか、そんな気はしておったが。……ふふ、お主みたいな化物がいるなら、ワシも本気で修行してみるのも悪くないのう」


 ミラが屈託なく笑うと、サヨは少しだけ目を細めた。


「ええ。なにせ、本気のあなたは別次元ですからね。前世では、それはそれは強かったですよ」

「……なに? ワシの前世を知っておるのか?」


 ミラが目を見開く。


「ええ。まぁ、その話はおいおい。それより、申し訳ありませんが、皆を王都まで運んでいただけませんか? もう何も見えなくて……。そろそろ、意識も……」

「おう、そうじゃな! どれ、回復魔法をかけてやろう!」


 ミラはサヨに治癒魔法を施すが、傷は全く癒えない。

 ミラは首を傾げる。


「はて? どういうことじゃ?」

「あの女狐のスキルですね。与えたダメージが回復不能になるようです。自然回復に任せるしかありませんね」

「なにっ!? 厄介なスキルじゃな。あいわかった、あとはワシが引き受けよう♪」

「ふふ……ありがとうございます……。異界の外に、転移の魔法陣があります。それを使えば、王城に……」


 そう言うと、サヨはパタリと倒れ気を失った。


「まったく、こんなボロボロになるまで……大した奴じゃわい」


 ミラが指を振ると、サヨが空中に浮かんだ。

 そのままサヨを連れて他のメンバーの元へ向かう。


「皆ひどい傷じゃな。やっぱり、さっきの回復魔法が効いとらん」


 ユリ、シノ、ルリを浮かせ、最後にムビ。


「ムビ、無事で良かった……ん?」


 ミラはまじまじとムビを見つめる。

 外傷がどこにも見当たらなかった。


「なんじゃ? ひょっとして、ムビにだけは回復魔法が効いたのかのう?」


 リリスが直接ムビを痛めつけなかったせいなのかと、ミラは推測した。

 あの狂人が直接手を出さなかったのは、少し引っかかるが。


「さて、待っておれよ。病院に運んでやるからの」


 ミラは5人を浮かせ、転移魔法陣へと向かった。




 ◆ ◆ ◆




「ん……」


 なんだここ、温かい……。

 ……今まで何してたんだっけ?


 ……そうだ、確かリリスに酷い目に……。


「……ムビ、大丈夫か!?」


 甲高い声が聞こえ、目を開いた。

 目の前に、心配そうな顔をしたミラがいた。


「ミ、ミラ……? こ、ここはどこ……?」

「お主はリリスに捕まっておったんじゃ! 皆がお主を助けに行ってのう……」


 ミラはこれまでの経緯を丁寧に説明した。


「そ、そんな……皆は、大丈夫なの……?」

「うむ。なんとか一命を取り留めておるが、リリスのスキルで回復魔法が効かなくてな。皆、まだ意識を取り戻しとらん……」


 物憂げなミラの視線の先を見ると、『四星の絆』の全員がベッドに並んでいた。


「み、みんな……!」


 ベッドから降りようとするが、膝が抜けて倒れそうになる。


「無理するなムビ! お主も病み上がりなんじゃ!」

「だ、大丈夫だから……」


 ふらつく足取りで、4人の元へ駆け寄る。


 全員包帯で全身を巻かれ、顔色が悪い。

 その姿はあまりにも痛々しく、胸が締め付けられた。


「少なくとも1ヶ月は起き上がれんじゃろ。決勝は無理じゃな……」


 ミラの手が肩に置かれる。


「そ、そんな……決勝は、いつ……?」

「……明日じゃ。今日はもう、日が暮れる」


 窓の外では、夕日が沈みかけていた。

 赤い光が病室を染め、やがて闇がゆっくりと押し寄せてくる。


 まるで、希望そのものが夜に飲み込まれていくようだった。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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