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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第336話 ミラ VS リリス

 視界を染める、赤い色。

 鼻腔を刺す、鉄の匂い。


 私は仲間に回復魔法を施そうとしているミラの背へ、迷いなく剣を突き立てた。


「ミラ、危ないっ!」


 背後からサヨの叫びが聞こえた。


 もう遅い。

 この距離から外しはしない。


 狙うは心臓。

 きっといっぱい……いっぱい血が噴き出る。


 早く胴を裂き、心臓を掴み出さなければ———頭がどうにかなりそうだ。


 ———ずぶっ。


 剣がミラの胴を貫く。

 しかし———。


 この感触……手応えがない。


 剣はミラの服を貫いただけだった。

 引き抜こうとしたが、ビクともしない。

 恐らく、剣を掴まれている。


「……なんじゃ、お主がクロじゃったか」


 背を向けたままの、ミラの声。

 次の瞬間、視界が反転した。


 ———ブンッ!


 剣もろとも、投げ飛ばされた。

 私は舌打ちをし、空中で身を翻す。


 壁に激突するが、足で受け身を取る。

 壁がヒビ割れるが、私は難なく着地した。


「残念じゃったな。ワシが不意打ちを許すのは、世界で唯一人、ムビだけじゃ。……さぁて、覚悟はよいかのう?」


 ポキリポキリと、ミラが拳を鳴らす。

 私は顔を上げ、目の前の小柄な少女に目を向ける。


 ……ミラ・エヴァンジェリン。

 トップインフルエンサーにして、最強の冒険者。

 私が唯一警戒していた人間。


 だが、不意打ちが失敗したというのに、胸の奥から湧き上がる本能は歓喜していた。


 こいつの血が見たい。

 こいつの泣き顔が見たい。

 最強から噴き出す血はどんな味がするのか———想像しただけで、魂が震える。


「そういえば、お主にはでかい借りがあったのう。ムビにワシを襲わせたのは、お主なんじゃろ?」


 ミラがにっこりと笑う。

 しかし、ピシリと壁がひび割れる。


「本当にいい度胸じゃ。ワシを1回殺したんじゃ。ワシに殺されても———文句はあるまいな?」


 針で刺されるような殺気。

 暴力的なまでの魔力が、第2フロアに巻き起こる。

 大部屋が壊れてしまいそうだ。


 嬉しい、嬉しい。


 血が見られる。

 はやくコロしたい。


「あなたこそ、あのまま死んでおけば良かったと、後悔しても知りませんよ?」


 私はあえて緩慢な速度でミラに斬りかかる。


 ミラは私の力を知らない。

 サヨのほうを警戒しているくらいだ。


 今はユリと同程度……レベル600程度の速力。

 間合いに入った瞬間、全力で動く。


 私の本当のレベルは1500。

 反応することすらできず、ミラの首が飛ぶだろう。


「死ね」


 間合いに入った。

 私は全力でミラの首を刎ね飛ばそうとして———。


 パシッ。


 刀身をつままれ、止められる。


「なっ……!?」


 目を見開く私と対照的に、笑顔のミラ。


「おっ、すごい! これなら、どんな強者も一撃じゃな♪」


 バチィンッ!


 額を襲う衝撃。

 私は何が起きたのかも分からず、壁まで吹き飛ばされる。


 体勢を立て直しミラを見ると、私に向けて中指を突き出していた。


 デ……デコピン?

 まさか、今のはデコピンなのか……?


 額から血が流れる。

 禁忌指定級の魔物でも傷つけられない私が、ダメージを受けていた。


「ほぉ、思ったより頑丈じゃのう♪」


 遊ぶような口調に、私は歯噛みした。


 そんなバカなことがあってたまるか……!

 未だかつてどんな天才でも、私に並ぶどころか、足元にも及ばなかった。

 こんなに力の差があるわけが……!


「お前、強いのう♪ この前戦った遺跡の化物くらいはあるわい♪」


 ミラがグルグルと腕を回す。


「残念じゃのう、その頃のワシとならいい勝負になったかもしれんが……。ワシもこの短期間で、レベルを上げておるのじゃ♪ 今のワシを倒したければ、レベル5000はないと話にならんぞ?」


 私は開いた口が塞がらなかった。


 レ……レベル5000だと?

 ……本気で言っているのか?

 そんなの、神話の世界の……。


 私の様子を見て、ミラが首を傾げた。


「どうしたんじゃ?……あっ! お前もしかして、ワシに勝てるとか思ってた?」


 とぼけ顔のミラ。


 煽られている?

 この、私が……?


 血が沸騰し、気付けばミラに斬りかかっていた。


 バチィン!


 斬撃を、デコピンで弾き返される。


 ……そんなバカな!

 私の剣が、たかがデコピンごときに……!


 何度斬りかかっても、ことごとくデコピンで弾かれる。


「おぉ、すごい斬撃じゃ! お前、天才じゃのう♪」


 感心しながら、ミラが私の剣を完封していく。


「……おのれぇっ!」


 業を煮やした私は、奥の手を出す。

 全闘気・全魔力を魔剣に収束させた。


「"天断ノ太刀"!」


 ———キィィィン!!


 剣を振った瞬間、ダンジョンが真っ二つに割れた。

 フロアの一部が崩落していく。


「……いったいのぅー。指が切れたわい」


 ミラの中指から血が流れていた。


「……ぁハァ♪」


 私は切っ先についた血を指ですくい舐めた。

 全身に衝撃が走る。


 なんて———美味しい。


 本能が、こいつを殺せと叫ぶ。

 もっともっと血を流せと命じる。


「お前、きっしょいのー。そんなに血が欲しいのか?」


 ミラの呆れ顔。

 私は歓喜に身を震わせ、剣を構える。


「あなたのは特別……。もっともっと、血を———」


 頂戴。

 その一言を発することはできなかった。


 ———ガッ!


 ミラの姿が消えたと思った瞬間、首を掴まれていた。


「……がはっ!」


 信じられないほどの力。

 呼吸ができないどころか、首が折れそうだ。


「じゃあの。生きておったら、また会おう」


 その言葉を最後に、私の視界は光に包まれ———意識が、暗い底へと落ちていった。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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