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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第331話 血塗れの王女

「ひ、ひぃッ———!」


 ルリは声にならない悲鳴を漏らした。


 第2フロアへの階段を上った直後。

 出口まであと一息というところで、第6王女リリスに追いつかれた。


「邪魔が入ったとはいえ、こんなところまで辿り着くなんて。大したものです、褒めて差し上げます。私でなければ、上手く逃げ切れたかもしれませんね」


 満面の笑みを浮かべるリリス。

 憎悪。嫉妬。殺意。およそ人が持ちうる、ありとあらゆる負の感情が、その顔に表れていた。


「残念ですが、ムビ様を渡したとて、もう逃がしません。あなたたちの綺麗な顔を、鑑賞したくなりました。首だけにして、ムビ様の近くに置いて差し上げます。そうすれば、寂しくないでしょう?」


 肘を直角に曲げながら、おどろおどろしい構えを取るリリス。

 もはや人ではない何かだった。


「サヨ……ムビさんをお願い」


 シノはムビを地面に降ろし、魔装を取り出した。


「私が時間を稼ぐ。2人は、ムビさんとユリを抱えて逃げて」

「な、何言ってるの、シノ!?」


 ルリは目を見開いた。

 シノはふっと笑い、仲間の顔を順に見つめた。


「大会、優勝してね。それじゃあ……元気で」


 シノはリリスに向かって走り出した。


「シノォォォッ!!」


 ルリの絶叫が洞窟に響く。

 だがシノの瞳は、もうリリスしか映していなかった。


「はあぁぁぁっ!!」


 右手に闘気が集中する。

 渾身の"螺旋龍煌砲"。


 ———ぱしっ。


 しかし、リリスは片手で軽く受け止めた。


「ふふ。素敵。仲間のために命を投げ出すなんて。あなたの血の色は、さぞかし美しいんでしょうね」


 人ならざる笑みを向けられ、シノは戦慄する。

 心臓は死の警鐘を絶え間なく鳴らし続けていた。


 それでも———構わない。


「"螺旋龍煌砲"!」


 左手で、もう一発。

 しかし、決死の一撃が放たれるより早く、リリスの剣が振り下ろされた。


 ———ザンッ!


 肩から腰にかけて、袈裟懸けにされる。

 鮮血が舞い、シノの悲鳴が洞窟を震わせた。


「ふふ……やっぱり、綺麗な色してる」


 刃についた血を指でなぞり、リリスはうっとりと笑みを浮かべた。


 シノは足を震わせながらも、なお倒れない。


「う……ああぁぁぁぁっ!!」


 蹴りを放つが、あっさりと躱される。


 ドスッ。


 リリスの剣が、肩を貫く。


「うあぁぁぁッ!!」


 涙を浮かべながら、歯を食いしばって激痛に耐える。


「あぁ……そんな顔されると、いじめたくなっちゃう」


 ドゴォッ!


 シノの腹部にリリスの拳が打ち込まれた。


「ぐはぁッ!」


 シノはそのまま項垂れ、ダランと両手が落ちた。


「あら、力加減を間違えましたか。まぁ、いいです。このまま首を———」

「"聖なる矢(ホーリーアロー)"!」


 光の矢が顔めがけて飛来し、リリスは紙一重で躱す。

 垂れ下がった前髪の隙間から、矢の出どころをじぃっと見つめた。


 ルリが、涙を浮かべながら高速詠唱していた。

 その顔を見て、リリスの口角が吊り上がる。


「惜しかったですねぇ。あなたの血の色も、綺麗なんでしょう?」


 剣を引き抜き、シノが地面に崩れ落ちる。

 リリスは笑みを浮かべながらルリに歩み寄った。


「"神聖なる灼熱(ディヴァイン・ノヴァ)"! "風神の暴風(ゼファーロード)"! "星葬の光球(ヴァルグレイア)"!」


 ルリは極大呪文を次々に詠唱したが、リリスは軽く薙ぎ払う。


「手癖の悪い子ですね。躾てあげましょう」


 リリスの姿が消え、次の瞬間ルリの目の前に現れる。


「ひぃっ———!」


 悲鳴を上げると同時に、足払いで転倒させられる。

 地面に手をついた瞬間、手の甲を剣が貫いた。


「いやあぁぁぁッ!!」


 激痛にルリが叫ぶ。

 剣を掴むが、びくともしない。


「あら、やっぱり綺麗な色」


 リリスは剣をグリグリと捩じった。

 肉が抉れ、骨が砕け、鮮血が溢れる。


「痛いッ! 痛いッ! 痛いぃぃッ!」


 泣き叫ぶルリ。

 剣を掴む手からも血が滴り落ちる。

 リリスは興奮し、ルリの頭を掴んで地面に叩きつけた。


 ドゴオォォッ!


 岩盤が砕け、ルリの頭部が埋もれた。

 そのままピクリとも動かない。


「ああ、ダメ。また力加減を誤ってしまった」


 リリスは剣を振り上げ、首に狙いを定める。


「やめなさい」


 リリスの動きが止まる。

 ゆっくりと声の主、サヨの方へ首を向ける。


 サヨは壁にもたれ、息を荒げながら左目を押さえていた。

 既に立つこともままならない。


「あらあら。もう限界みたいですね。先に死にたいですか?」


 リリスの狂った笑み。

 絶体絶命の状況にも関わらず、サヨの声は冷静だった。


「欲に呑まれていますよ。しっかりなさい」

「ふふ、その通りです。今からあなたも———」

「16年間、抑え込んできたのでしょう? こんなところで台無しにしていいのですか?」


 リリスの笑みが崩れた。


「あなた……なぜそれを……?」


 サヨの右目が静かに見据える。


「本来なら国を滅ぼしかねない器に生まれながら、理性で己を律してきたのでしょう? 本来のあなたなら、こんな意味のない虐殺はしないはずです。目を覚ましなさい、今ならまだ間に合います」


 諭すようなサヨの口調。

 リリスの表情が徐々に和らいでいく。


「なるほど……魔眼は魂を見透かす、という噂は本当でしたか」

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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