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Aランクパーティをクビになった『動画編集者』がアイドルパーティに加入して無双  作者: 焼屋藻塩
第3章 S級冒険者選抜大会

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第330話 散華

 ムビと『四星の絆』を逃がすため、リリスの足止めを引き受けたエレノア。


 勝負を決めるため、エレノアは地を蹴った。


("認識阻害"!)


 エレノアはスキルを発動した。

 自身の幻影を作り出し、本体は透明になってリリスの背後に回り込む。


(手の内を隠していたのは、私も同じ。……この女は危険。容赦はしない、一撃で終わらせる!)


 リリスの首を狙い、鎌を振りかざし———。


 ドッ。


 自分の両腕が吹き飛んだ。


「え」


 リリスは幻影には目もくれず、見えないはずのエレノア本体に微笑んだ。


(わ……私のスキルが通じない……!? そんな———どれだけレベル差が……)


 ズバッ。


 2撃目。

 エレノアの胴が両断された。


「……がはぁっ!」


 上半身が地面に落ち、エレノアは激痛に悶える。


「……あら? まだ生きているのですか?さすが魔物、しぶといですね」


 背中を一刺し。

 肺に穴が開いた。


「ぐふぅっ!」


 肺から溢れた血液が食道を逆流し、口の中が血でいっぱいになる。


 エレノアの脳裏に、これまでの記憶が蘇る。


(な……なにこれ……!?)


 幸せだった幼少期。

 魔王軍に入ってからの日々。

 千年の退屈な時間。

 そして———ムビとの短い思い出。


(い、いやだ……!  死にたくない……!)


 エレノアは地面を掴み、這いずりながら逃げようとする。


 ドスッ。


 反対の肺を刺し貫かれた。


「———ぃぎぃっ!」


 エレノアの体がビクリと跳ねる。

 肺の血液が勢いよく逆流し、口から血を噴き出した。


「さて。蛆が湧きやすい体にしてあげましょう」


 グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!グサッ!


 血の海が広がっていく。


 コプ……。


 口から大量の血が流れ落ちる。

 エレノアはもう、声を出すこともできなかった。


 視界が滲み、暗くなっていく。

 涙なのか、酸素が脳に供給されていないのか、もう分からない。


 後悔と絶望に押しつぶされながら、1つの願望が頭をよぎった。


(……ムビともう1回、ケーキ食べたいなぁ……)


 ドスッ。


 鈍い音を立て、剣が脳天を刺し貫く。

 ビクリと体を震わせ、エレノアの視界が暗転する。


 それっきり、エレノアが動くことはなかった。


「まったく。汚物で剣が汚れてしまいました」


 リリスは眉をしかめながら、切っ先を払う。

 壁に血痕と肉片が付着した。


 ため息を1つ吐き、リリスは天井を見上げる。


「さて。ムビ様、今お迎えにあがります。少し、待っててくださいね」


 嗜虐的な笑みを浮かべ、リリスは『四星の絆』の後を追った。




 ◆ ◆ ◆




『四星の絆』はその頃、第6フロアを駆け抜けていた。


「はぁっ……はぁっ……!」


 サヨは瞳から血を流しながら走っていた。


「サヨッ! 大丈夫!?」


 ルリは心配でたまらなかった。

 悲痛な声を上げ、サヨを気遣う。


「だ、大丈夫……。異界を抜けるまでは、持たせますわ……」


 サヨは魔眼の力で魔力の痕跡を見ている。

 先程自分たちが通った、出口までの最短経路が光り輝いて見えていた。


 しかし、既に魔眼の反動がサヨを襲い、視界が霞んでいた。

 途中で力尽き、魔力の痕跡を見失ってしまえば、異界の迷路にはまる。

 そうなれば最早、リリスから逃れることはできないだろう。


「あった! 階段!」


 第5フロアへの螺旋階段を駆け上がる。

 フロアへの入り口に、魔物の群れが待ち構えていた。


「———っ! 失せなさい!」


 サヨの呪文が炸裂し、魔物の群れは一掃される。

 その途端、サヨの左目に激痛が走る。


「うぅっ!」


 思わずサヨは左目を押さえる。


(左目の視力が、失われましたか……)


 最早見えるのは右目のみ。

 体内の魔力回路も爆発しそうだった。


(これ以上の戦闘はもう……。お願い……。どうか、魔物と遭遇しないで……)


 唇を噛みながら、サヨは必死に右目を開いた。




 ◆ ◆ ◆




 サヨの願いが通じたのか。

 それとも、行きがけに魔物を丁寧に倒したのが功を奏したのか。


 そのまま第3フロアまで、一度も魔物と遭遇することはなかった。


「見てっ! 階段!」


 第2フロアへの階段。

 しかし、サヨの右目はもうほとんど見えてなかった。


「かいだん、ですか……? どこに……」


 最早階段すら見えない。

 暗闇の中、一筋の光を追っているだけである。


「あとちょっとだよ! 頑張ろう、サヨ!」


 シノの叫びが響き渡る。

 空気の振動がサヨの体内に伝わり、少しだけ力になる。


「……えぇ。私がしぶといのは、ここからですよ……」


 一行は階段を登りきり、第2フロアの大部屋に辿り着く。


「さぁ!あと少し———」


 ———コツ。


 背後の螺旋階段から、足音。


 その瞬間、3人の心臓が止まった。


「嘘でしょ……だって、何の気配も……」

「……き、きっと、さっきの人がリリス様を倒して追って来たんじゃ……」


 そう言いながらルリは歯を鳴らしていた。


「———あらあら。こんなところまで来ていましたか」


 冷たい声。


 3人の心に灯っていた淡い希望は、跡形もなく吹き消えた。

 ゆっくりと、後ろを振り返る。


「あの女は、蛆とお友達になりました。あなたたちも———いかがですか?」


 頬を血で染めたリリスが、満面の笑みを浮かべ、じぃっとこちらを見つめていた。

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2025年9月10日、注目度 - 連載中で2位にランクインされました!
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