第321話 紅眼の追跡者
『四星の絆』の4人は、行方不明のムビを探すため、ムビの家を訪れた。
「ムビくーん、いませんかー?」
ユリがドアをノックするが、返事はない。
「やっぱりいないみたいですね」
「とにかく中に入ってみましょう」
サヨがドアの鍵を破壊し、家の中に侵入する。
「なんだか、泥棒みたい……」
「言ってる場合じゃありませんわ」
「そ、そうですね……ムビさんが心配ですし……」
4人は家の中を捜索するが、ムビの姿はない。
「やっぱりいないね、ムビくん」
「どこ行っちゃったんだろう……」
全員が頭を抱える中、ふとサヨがテーブルの上に置かれた一通の手紙に目を留めた。
「これは……」
サヨは手紙を開き、素早く目を走らせる。
「その手紙が、どうかしたの?」
「王族の印が刻まれていたので、少し気になって……」
手紙を読み終えたサヨが、封筒に視線を移す。
「この封筒の消印……3日前、ですか。ムビさんが行方不明になる前日ですわ」
「えっ、どういうこと……?」
ルリは首を傾げ、サヨが続ける。
「通常、消印の翌日にポストに投函される。つまり、この手紙が届いたのは2日前。ムビさんが行方不明になった日と同じです。それがテーブルの上に開いた状態で置かれていたのであれば……」
シノがハッとした表情を浮かべる。
「少なくとも、ムビさんは行方不明になる直前に、この手紙を読んでいた。つまり、その手紙が原因でムビさんがいなくなった可能性があるってこと……?」
サヨが頷く。
「ええ。差出人はリリス王女。『至急、王城へ来られたし』と書かれています。かなり怪しいですわね……」
ユリは息を呑んだ。
「王城……? でも、リリス王女は味方のはずじゃ……?」
「道中、誰かに襲われたとか?」
「……それもありますが、或いは最悪の可能性もあります」
サヨが呪文を詠唱する。
サヨの眼が紅く光り輝いた。
「サヨっ!? それ、魔眼じゃ……!?」
「発動して大丈夫なの!?」
1回戦、魔眼の反動で1ヶ月入院していたサヨ。
今も完全には回復していない。
「大丈夫です。私の魔眼なら、魔力の痕跡を辿れます」
サヨは壊れたドアを開け放ち、外を眺めた。
「ムビさんの魔力の痕跡が、外に続いていますね。辿ってみましょう」
◆ ◆ ◆
サヨを先頭に、一行は夕暮れの街を歩いて行く。
辿り着いたのは、王城だった。
ユリが感心したように呟く。
「やっぱり、ムビくんは王城に来たんだね」
サヨは頷く。
「えぇ……そして、ビンゴですわ」
「ビンゴ?」
サヨの魔眼が煌々と城門を睨む。
「ムビさんの魔力の痕跡が一筋しかありません。つまり、ムビさんは城門をくぐったきり、一度も外へ出ていないということです」
「えぇっ!? そ、そんなまさか……!?」
3人は驚愕し、顔を見合わせた。
「とにかく、ムビさんは城の中。入ってみましょう」
サヨは魔眼を消し、ずんずんと城門の方へ進んでいく。
衛兵がサヨに気付いた。
「何用か?……あっ! お前たちは、『四星の絆』……!」
サヨは優雅に微笑む。
「ごきげんよう。決勝戦の前に、リリス様へご挨拶をと思いまして。お目通り叶いますか?」
衛兵は顔を見合わせる。
「少々待たれよ」
衛兵が中の従者に耳打ちし、しばし時間が過ぎる。
「サヨ、行動力あり過ぎでしょ……」
相談もなく進んでいくサヨに、後ろの3人が声を潜めた。
10分後、従者が現れ、衛兵に耳打ちした。
衛兵が咳ばらいする。
「あー、オホン。残念だが、リリス様への面会許可は下りなかった。わざわざご苦労」
「そうですか。では、またの機会に」
サヨは表情一つ崩さず、あっさりと踵を返した。
3人も慌てて後に続く。
「残念、中に入れなかったね。明日もう1回来てみる?」
ユリが声をかけると、サヨは首を横に振った。
「いえ、そんな時間はありません。今夜、城に忍び込みましょう」
3人が雷に打たれたような顔をした。
「し、ししし城に忍び込むの……!?」
ユリは慌てて周囲を見渡した。
幸い、『四星の絆』の他に誰もいない。
「ちょっと、何言ってるの……まるで盗賊じゃん!?」
「捕まったら、重罪だよ!?」
慌てふためく3人に、サヨは不思議そうに首を傾げる。
「何をおっしゃっているんですか? 今の私たちを、一体誰が捕らえられると?」
3人は固まった。
「衛兵の平均レベルは20と言われています。近衛兵の平均レベルが30で、騎士が40。栄誉騎士がいたとて、せいぜい70~80といったところ。忍び込むどころか、城内でマラソン大会したって楽勝でしょう?」
『四星の絆』の戦力は、シノがレベル150。
ルリが180。
ユリとサヨに至っては、戦力的にはレベル500を超えてもおかしくない。
「た、確かに……」
「でも、見つかって騒ぎになったら?」
不安そうなルリに、サヨは平然と言ってのけた。
「そのときはそのとき。いざとなれば、城の人間を皆殺しにしましょう」
3人は仰天した。
「ちょ……サ、サヨさん!? な、何言ってるのかな!?」
サヨは首を傾げる。
「……? ムビさんの命と引き換えなら、私はやりますよ?」
空気が凍り付く。
サヨの目は本気だった。
「皆さんが行かないなら、私1人でも……」
ユリが慌てて手を振る。
「わ、分かった! 行くから! 私たちも行くから! ね、2人とも!」
シノとルリも慌てて首を縦に振る。
「でも、殺しちゃダメだよサヨ? それだけは約束ね!」
「……仕方ありませんね。それで手を打ちましょう」
サヨは仕方ないといった様子でため息をついた。




