第320話 『白銀の獅子』VS『ドラゴンテール』3
既に魔力も体力も使い果たしたマルスへ、ゴリがゆっくりと歩み寄る。
圧倒的なパラメータを持つ3人相手に孤軍奮闘。
もはや詰みの状態……しかし、マルスの瞳は諦めていない。
「はあぁぁぁっ!」
立ち上がり、ゴリへと剣を振り下ろす。
パシッ。
力のない一振り。
あっさりと受け止められた。
「弱過ぎだろ? 攻撃ってのは、こうやるんだよ!」
ドゴォッ!
ゴリのボディブロー。
「ぐはぁっ!」
マルスは膝をつく。
(くそっ……アバラがいかれた……!)
「ぎゃはは! おいおい、立てよおらぁ!?」
蹴りで、マルスの右腕を折る。
「ぐああああっ!」
苦悶に歪むマルスの顔を覗き込み、ゴリはさらに口角を吊り上げる。
「あれ? あれれぇ~? どうしたんですかぁ~、『ドラゴンテール』のマルスさん? 確か、シノの仇を取るとか言って、息まいてましたよねぇ~? 圧倒的実力差を前に、心折れちゃった感じですかぁ~?」
とぼけた声で煽りながら、満面の笑みを浮かべるゴリ。
「ぐぅっ……!」
マルスは歯を食いしばって立ち上がる。
何もかも底をついたマルスを支えるのは、怒りのみだった。
「ぎゃはは、立っちゃったよ! すごいすごい! 愛しのシノちゃんも大喜びだ♪ しかし、勝てるわけねぇのに、なんで立つかねぇ? ひょっとしてめちゃくちゃ頭悪いんじゃねぇーのお前? ぎゃっはっは♪」
舐め切ったゴリのローキックで、マルスの左足があっさり折れる。
「うわあああっ!」
前のめりに崩れ落ち、ゴリが勝ち誇る。
「ほらほら、立てよ♪ 愛しのシノちゃんが待ってるぞ? マルスさんの~、カッコいいとこ見てみたい~♪」
手拍子を叩いてはやし立てる。
「あれ? 立たないなぁー? なら、手伝ってやろうか? ほれっ、闘魂注入♪」
右足を踏みつけ、小枝のようにたやすく折った。
「ぎゃああああっ!」
激痛のあまり、マルスの体が痙攣する。
「えぇっ!? これでも立たないの!? 嘘じゃーん、『ドラゴンテール』って最強のパーティじゃなかったの!?」
腹を抱えて笑うゴリに、ゼルがニヤニヤしながら話しかける。
「おいおいゴリ、全国民が見てるんだぞ? あまり痛めつけず、さっさと終わらせてやれ」
「しょうがねぇーなぁー♪ じゃあ最後に、全国民に感謝を込めて餅つき大会だ♪ お前もいっぱい感謝しろよ? いくぞ? ほーれ、ぺったんぺったん……」
◆ ◆ ◆
凄惨を極めた試合に、ついに審判が止めに入った。
「しょ、勝負あり……! 勝者、『白銀の獅子』!」
大歓声が『白銀の獅子』を包み込む。
「きゃー! ゼル様強ーい♪」
「やっぱり最強は『白銀の獅子』だぜー!」
王は大笑いした。
「はーっはっはっは! やりおった、やりおったぞ! やはり『白銀の獅子』、ワシの見込んだパーティじゃ! わーっはっはっはっは!」
実況席も興奮冷めやらぬまま叫ぶ。
「最強パーティ対決、ついに決着ー! あの無敵の『ドラゴンテール』が、ついに敗れ去りましたぁー!」
「いや、圧倒的ですな……。新たな最強パーティの誕生です」
実況のイナズマは、解説のオカダへ熱弁を振るう。
「しかしオカダさん……震えますね! あの伝説の戦い、覚えていますか!?『白銀の獅子』VS『四星の絆』……! まさかS級選抜大会の決勝で、再び実現しようとは!」
オカダも頷く。
「思えば『ドラゴンテール』、『ライオンハート』、『エヴァンジェリン』、それに『ミラと愉快な仲間たち』……。名だたる優勝候補たちが敗れ去る中、残ったのはこの2組。何やら、運命めいたものを感じますな」
「あの因縁の対決が、国中を巻き込んで決着を迎えるわけです! オカダさん、どちらが勝つと思いますか!?」
オカダは頭を抱える。
「正直、勝って欲しいのは『白銀の獅子』ですな。我が国が誇るリリス様の専属冒険者として、実力、人格ともに申し分ない。しかし、『四星の絆』もあのムビとかいう犯罪者を除けば、女子4人は非常にひたむきで輝くものがあります。どちらもすさまじい成長速度を見せていますが、現状はやはり『白銀の獅子』が圧倒的に優勢でしょうな。しかし、こういう試合で『四星の絆』が発揮する力は計り知れません。決勝は、我が国始まって以来の、最高の戦いとなるでしょう。非常に楽しみです」
「果たして、S級冒険者入りを果たすのはどちらのパーティなのか!? 明後日、その答えが明らかになります!」
会場もお茶の間も、大熱狂のまま放送が終わった。
しかし、観客席で試合を観戦していた『四星の絆』だけは重い空気に包まれていた。
「マルス……なんてひどい……」
シノは途中から顔を覆い、試合を直視できなかった。
「ほんと胸糞な試合……。なのに、デタラメに強いのがムカつく……」
「どうやってあんなに強くなったんだろう。あれ、魔装だよね……?」
「私たちのように、強力な後ろ盾があるのかもしれませんわ」
どう見ても、『白銀の獅子』全員がこちらの最大戦力、ユリを上回る強さを持っている。
シノとルリに至っては、数倍の戦力差があるだろう。
どうすれば勝てるのか、まるで想像がつかない。
「こんなとき、ムビくんなら……なんて言うかな……」
戦力的には、現状最もレベルの低いムビ。
しかし、4人は何よりもムビの力を必要としていた。
「本当に……どこに行っちゃったんだろう、ムビくん……」
しばらく沈黙が続いた後、サヨが口を開く。
「ムビさんの家に行ってみませんか? 多分もぬけの殻でしょうが、なりふり構わず探すしかありません」
ユリも頷く。
「そうだね。何か手掛かりがあるかもしれないし……」
こうして4人は、ムビの家に向かうことにした。




