第319話 『白銀の獅子』VS『ドラゴンテール』2
観客たちは『白銀の獅子』と『ドラゴンテール』の激突に息を呑んでいた。
実況席も興奮を隠せない。
「さ……さすがは優勝候補同士! かつてないハイレベルな争いです! しかし、無敗を誇る『ドラゴンテール』が追い詰められています!」
「意地を見せ、なんとか『白銀の獅子』の回復役、マリーを倒しましたが……残るは、リーダーのマルスのみ。3対1では、もはや勝負ありましたな」
「しかし、『白銀の獅子』がこれほど強いとは……! オカダさん! ひいき目なしに、もはや歴代最強と言えるのでは!?」
「私も同意見です。真の英雄が、現代に現れたのかもしれませんな……」
ゼルとゴリはニヤつきながらマルスを囲んだ。
その後方で、リゼが呪文を詠唱する。
「へへ……絶体絶命だな?」
マルスの頬を汗が伝う。
「すごいな。正直、ここまで強いとは思わなかった。さすがに、こちらの負けは動かないだろうね」
ゼルが鼻で笑う。
「当たり前だろ、俺たちは本物の天才なんだぞ? お前のような凡人と一緒にするな。初めから勝ち目なんかあるわけないだろうが?」
ゴリも笑みを浮かべながら拳を鳴らす。
「降参なんかするなよ? お前みたいなイケメン野郎をいたぶるのが大好きなんだ♪ 全国民大注目の、凄惨な殺戮ショーを見せてやるぜ♪ お前のだ~い好きなシノみてぇによ? ぎゃははは♪」
その言葉に、マルスの瞳が冷え切る。
「そうだな。せめて、お前だけでも持っていくことにするよ」
———ゴウッ!
マルスの身体から気が迸った。
「お? なんだ、思ったよりも強そうじゃねぇか」
ゴリが少し驚く。
マルスは剣を強く握った。
「じゃあ、精一杯あがかせてもらおうか」
キュンッ。
稲妻のような速度で、マルスがゼルへと迫る。
「おっ? 速さだけはなかなか……」
ガキィン!
剣で受けたゼルは、彼方に弾き飛ばされる。
「な、なんだと!?」
『白銀の獅子』が驚く間もなく、マルスはゴリに襲い掛かる。
「て、てめぇ! やんのか!?」
ギィン!
剣と鋼鉄の腕が激突し、火花が散る。
連撃が続き、観客席から悲鳴と歓声が入り混じる。
「す、すさまじい攻防! 目で全く追えませんッ!」
互角———いや、マルスが勢いで勝り、ゴリが後退する。
(くそっ!? なんだこいつ、どうなってやがる!?)
そこへゼルが駆け寄る。
「ゴリッ! そのまま引き付けろ! 俺がやる!」
その瞬間、マルスがゴリを弾き飛ばし、反転する。
今度はゼルと激しく剣を交える。
「”灼熱の嵐”!」
リゼの呪文が炸裂するが、マルスはゼルを振り切り、炎を紙一重で回避。
そのまま、リゼに向かって突進する。
「させるかっ!」
ゼルが前に立ち塞がり、マルスと鍔迫り合う。
(なんて力だ! くそっ……リゼを失うわけにはいかない!)
ゼルはリゼを守りながら、防戦一方に陥る。
観客は大熱狂し、実況者も叫んだ。
「すごいすごいーッ! マルス、3対1で渡り合っています!」
「これは……よもやがあるのか!?」
しかし、背後からゴリが突進する。
「死ね、てめぇーッ!」
ドガァッ!
背後からの一撃をまともに受け、マルスは壁まで吹き飛んだ。
「ダウン! ワン……ツー……!」
カウントが始まり、ゴリがほくそ笑む。
「へへ。レベル300台なら、死んだんじゃ……ん?」
瓦礫の中から、血まみれのマルスが立ち上がった。
観客席が揺れるほどの歓声が巻き起こる。
「てめぇ、まだ動けんのかよ!?」
「言ったはずだ……お前だけは持っていく、と!」
瞬間、マルスの姿が掻き消えた。
ガッ!
気付いたときには、ゴリはマルスに顔面を掴まれていた。
「うおおおっ!?」
「はあああああっ!」
一瞬でフィールドの端まで移動し、後頭部を壁に叩きつけられる。
「ぐはぁっ!?」
壁に埋もれたゴリの頭。
しかし、マルスの力は緩まない。
反対の手に、剣が握られる。
「"セイクリッド・インパクト"!」
———カッ!
聖剣の一撃が叩きこまれ、壁が完全に粉砕された。
「うわあああああっ!」
地響きが起こり観客が悲鳴を上げる。
壁が吹き飛んだあとにはむき出しのバリアと、転がるゴリだけが残った。
ゼルの顔に、この試合初めて焦りの色が浮かぶ。
(おいおい……3対1だぞ!? ゴリまでやられたのか!?)
マルスがゆっくりと振り返る。
「さぁ、これで残り2人……うっ!?」
突然、マルスは膝をついた。
呼吸が荒れ、苦悶の表情が浮かぶ。
(くそっ……! 力を使い果たしたか……!)
ゼルは一瞬あっけに取られるが、すぐに事態を把握し、ニヤリと笑みを浮かべる。
「はは……。なるほど、どうやら限界のようだな?」
———ガララッ。
後方の瓦礫が崩れ、中からゴリが立ち上がる。
「へへ……やってくれるじゃねぇか。今のはかなり効いたぜ?」
ゼルが安堵のため息をつき、軽口を叩く。
「なんだゴリ、生きてたのか」
「あたりめぇよ! 俺の鋼の体を舐めるんじゃねぇ!……まぁ、そこの雑魚は虫の息みてぇだがな?」
息も絶え絶えのマルスへ、ゴリがゆっくりと歩み寄る。
「へへへ……さぁて、どうしてやろうか?」




